21話 ドキドキ!丹心川のピンチ

のっちぃは古賀に何があったのか問いかける。古賀は体育座りをして、地面に手を付けた。さらさらの砂を触っては、逃がす。数秒それをして、口を開いた。


「古賀、ニシちゃんを怒らせちゃったみたい。」


「なんで? 」

 

「今度ね、古賀の学校で体育会があるでしょ? それのね、クラスの旗作ってたの。古賀の学校では、クラスに一つ旗作るのがお約束だから。でね、それぞれ役割分担してて、古賀は上半分の文字書く係だったの。それで、ニシちゃんは下半分書く係。でもね、ニシちゃんは今日体調が悪そうだったから、代わりに書いた方がいいのかなって思って、だから代わりに書いちゃったの。でもね、ニシちゃん、とっても書きたかったみたいなの。だから、怒っちゃったの…。」

 

勝手に書いた古賀が悪いのは明白だ。しかし、わざとではなく、寧ろ丹心川の為にした行いだった。あそこまで怒らなくてもいいだろうにとのっちぃも思う。

 

「仲直り…しなくちゃ。」

 

「そうだね。」

 

のっちぃは古賀の言葉に頷いた。古賀は砂がついた手を両手で払い、立ち上がった。善は急げだ。

 

しかし、古賀は丹心川を探したが、どこにも丹心川はいなかった。


 



嫌な予感がした。




いつものパターンでは、悪魔になる寸前になっていてもおかしくない。古賀は震えた。あんな小さな喧嘩で、丹心川を不幸にしてしまうかもしれないのだ。古賀は走りまわった。そして、河辺付近に丹心川らしい黒髪の少女を見つけた。


 

「ニシちゃん! 」

 

叫んで、丹心川の元に駆け寄る。異常がないか確認する。今のところ、黒いモヤは吹き出ていない。ホッと一息つく。

 

「ニシちゃん! あのね、古賀ね、謝りたいの。」

 

「謝りたいって? 」

 

「古賀、古賀ね、勝手にその…、文字書いちゃってごめんね。」

 

「なんだ、そんなことか。ううん、大丈夫だよ。」


丹心川の顔を見る。夕日が照らす彼女の笑顔は穏やかだった。古賀はホッと息をつく。思っていた以上に怒っていなかったらしい。

 

「ニシちゃん、本当にごめんね? 」

 

「ううん。気にしないで。私もごめんね。」


 

お互いに謝り、仲直りできた。

仲直りできたはずなのに、違和感がある。なぜかモヤモヤが止まらない。何か、見逃している気がする。


丹心川と別れてしまったが、本当に良かったのだろうか。この前みたいに古賀の知らないところで、古賀の印象を悪くする出来事が起こるのではないだろうか。いや、丹心川に限って、そう簡単に勘違いはしないだろう。なんたって丹心川は古賀の一番の友達で、古賀と過ごしてきた年月も他の人とは違うのだから。

 

「そういえば、のっちぃ、天界に行ったでしょ? 何か聞けた? 」

 

「あ、そうそう。なんかね、ルフス様には会えなかったけど、エアリアル様には会えたんだ~。」

 

「そうなんだ。」

 

「うん、エアリアル様はね、悪魔に力があるなんて聞いたことないって言ってた。だけどね、考えられるとしたら幻覚を見せる能力かもって。」

 

「幻覚? 」

 

「そう、だから、古賀に化けて嘘をつきまわってるのかも! 」

 

その可能性は十分あった。

だが、それにしては些か回りくどい気もする。古賀に化けられるなら、最初から化けて、人間関係を悪化させればいい。古賀の友人たちを初めから取り返しのつかない程に傷つければいい。それをしないのは、一体なぜか。

 

古賀はのっちぃが天界に行き、古賀の傍に離れている間、川北に声を掛けた。川北は、記憶はあまりないそうだが、古賀と喧嘩をしたことは覚えているそうだ。なぜ怒りが爆発したのか恐る恐る聞いた。そして、川北は古賀と齊藤が話している場面を見たと言った。

 

齊藤。

今回も、古賀と丹心川の言い合いに割って入ってきた…。


古賀は突然、何かに気が付いたようにピクリと反応した。

 

「のっちぃ! 」

 

「な、なに? 」

 

「変身だよ! 」

 

なんで? のっちぃが理解する前に、古賀は唱えた。

 

「閃け! 天使の踊り。輝け! 天空の舞。 放て! 白い翼。 魔法少女! 古賀‼️ へーんしんっ! 」

 

古賀は魔法少女へと変身した。古賀は慌てるのっちぃを他所に、後ろを振り返った。

 

「え、え、え? なに、どうしたの? 」

 

「ニシちゃんが危ない! 」

 

古賀は丹心川がいた河辺にもう一度戻った。






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