20話 ドキドキ!悪魔の正体?

天界 クレマチス


のっちぃは天界にて、大妖精エアリアルに謁見した。当初は、大天使ルフスにお会いする予定だったが、どうにも忙しいらしい。なんの成果もなく、人間界に戻る準備をしていると、エアリアルが偶然にも通りかかったのだ。


「へ~、そんな能力、聞いたこともないの。」

 

「え? 聞いたことないんですか? 」

 

「うん。僕は天界の中で最も天使様に近い存在だけど、まだまだ生まれて間もないの。それでも、妖精の中でも高い地位にいる。悪魔のことなら尚更、知っていておかしくないんだけど…。もしかしたら、何か情報操作されているのかもしれないの。」

 

最近、天界が騒がしい。妖精たちの仕事も格段と増えた。その原因は大魔王の復活のため。天界に侵入してくる悪魔退治をすることも多くなった。しかし、エアリアルは〝知性〟のある悪魔と戦ったことはほんの数回しかない。のっちぃの話を聴いたエアリアルは眉を寄せた。

 

「のっちぃ、僕にも分からないことだらけなの。天界も人間界の心配出来ないほど、騒がしい。だから今すぐとは言えないけど、何らかの形でのっちぃたちを援護出来るようにするの。」

 

「ありがとうございます。エアリアル様! 」

 

「ううん、大丈夫なの。それより、今は何もできなくて申し訳ないの。その代わりと言ってもなんだけど、さっき言っていた悪魔について考えたの。たぶん、その悪魔は幻覚を使っているの。」

 

「幻覚? 」

 

「予想でしかないけど。魔法少女がやってもいないことに怒りを表す人がいる。それで間違いないなら、誰かが魔法少女に化けて、あることないこと触れ回っているってこと。たぶんそれが悪魔。つまり、悪魔が人間に化けてるってことなの。ただ、能力に関しては僕もよく分からないの。正解なのか不正解なのか今のところ分からないの。」

 

「い、いいえ! なるほど、古賀に化けてる悪魔がいるってことですね。僕、古賀に伝えてくる! ありがとうございます。エアリアル様! 僕はこれで! 」

 

のっちぃの後ろ姿を見ながら、エアリアルは思う。

 

『なぜ、強い悪魔が魔法少女の近くにいるのか。』

 

エアリアルはそればかりをじっと考えていた。

 





のっちぃは急いで、古賀の元に戻る。人間界はお昼の時間だ。古賀は教室の中にいた。笑顔で近寄ろうとしたが、どうにも雰囲気が重たい。古賀の前には丹心川がいた。

 

「こ、古賀…? どうしたの? 」

 

そう声を掛けるのっちぃだが、古賀には届いていない。何があったのだろう。古賀は涙を堪えている。

 

「古賀はいつもそうだよね。私が一生懸命していたことを全部持っていくの。そういうところ、直したほうがいいと思うよ。」

 

「古賀はニシちゃんの為にと思ってやったのに…。」

 

古賀の涙は今にもこぼれそうだ。その姿を見て、また丹心川の怒りが増していく。

 

「泣けばいいと思ってるの? 」

 

「お、思ってないよ。古賀、古賀…。」

 

丹心川の怒りがヒートアップする。それに反し、古賀の目には涙が溜まっていく。息苦しい教室内。数分の沈黙が落ちる中、ようやく話に入ってきたのは、クラス委員長でもある齊藤だった。

 

「二人とも落ち着いて? 丹心川さんも…ね? 今回の件は、古賀さんも悪いところもあったと思うけど、そんなに怒らなくてもいいんじゃないかな? 」

 

「は? 何それ! 私も悪いの? そんなことってないよ! 」

 

「まあまあ、ほら、だって古賀さんも泣いてるし…。」

 

齊藤が丹心川を宥める。徐々にクラスメイトにも、喧嘩を終わらせたい気持ちがこみ上げてくる。そうなると、どっちが悪いか関係ない。ただ、ひたすらに怒ってばかりの丹心川に目線がいった。

 

「ねぇ、丹心川さん、ちょっと落ち着いたら?」

 

「本当だよ。古賀さんも、そこまで悪いと思わないし。」

 

徐々にクラスメイトは古賀の味方についていく。誰も、丹心川の味方になる人はいない。丹心川の顔が真っ赤になっていく。怒りがピークになり、丹心川はその場から立ち去った。


誰も追いかけない。

誰も呼びかけない。

それがまた、丹心川を孤独にさせた。

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