10話 ドッキドキ!悪魔三人衆&大妖精登場!
「げほっ」
古賀の口から血が流れる。
「古賀‼ 」
のっちぃはふよふよと古賀の元へ駆けつける。
ぼんやりとする視界の中で捉えたのは、リーベルを抱えた一人の男ブルームだ。
「お前が例の魔法少女か。よく、リーベルをここまで追い詰められたな。さすが、魔法少女ってわけだ。」
「あなた…は? 」
「俺の名はブルーム。こいつよりも強ぇ悪魔だ。まあ、名乗っても仕方ないな。お前は今ここで死ぬんだからな。」
ブルームは爪で古賀を殺そうとした。しかし、その爪は古賀に当たることはなかった。
「ブルーム。リーベルを救うことが優先事項だと言っただろう。」
虚ろ気な顔をした男だ。ブルーム、リーベルと同じように悪魔だろう。黒い角と黒い羽が生えている。
「フォレスト、すぐに終わんだろーがよ。」
「お前の攻撃が入る前に天使が現れる。我々だけでは分が悪い。」
「ちっ、魔法少女。覚えてろ。今度はこの俺がお前を地の底まで落としてやるよ。」
ブルームはリーベルを抱え、暗闇の中へと消えていった。
残ったフォレストも暗闇に身体を預ける。
「古賀といったな。我々はこの世界を壊すのが役割だ。邪魔をするなら只では置かない。」
それだけを残し、フォレストは去っていった。またしても敗北。やっと強敵を倒したかと思ったのに、さらなる強敵にのっちぃは涙目になった。古賀は瀕死状態だ。どうすればいい。
その時、天界から一筋の光が差し込んだ。天の光は地へと繋がり、そこから美しい妖精が降りてきた。
「エアリアル様…。」
妖精の名はエアリアル。大天使ルフスの遣いで、天界で最も強い妖精だと言われている。
「エアリアル様、どうしてここに? 」
「のっちぃ、今はそんなこと言ってられないでしょ? この少女を助けるの。」
エアリアルは美しい声で、歌を歌う。流れる歌は花を、木を、土を、癒していく。古賀の身体はみるみる回復に向かって行く。
パチリと目を覚ました古賀は当たりを見回す。エアリアルはそんな古賀を物珍しく見つめる。
「エアリアル様? 」
「ああ、ごめんなさい。僕、こんな美しい心の少女初めて見た。人間とは思えないほど。さすが、魔法少女なの。」
古賀は突然現れたエアリアルに頭を傾ける。
「魔法少女、どこも痛くないの? 」
「うん。古賀、痛くない。あなた誰? 」
「古賀! 失礼だよ。この人は偉大なるエアリアル様。大妖精だよ。」
「大妖精? そっか。初めまして、古賀です。」
古賀はにこりと笑って挨拶する。
「うん。宜しくなの。」
エアリアルはにこにこと微笑む。エアリアルは少し上機嫌だ。なぜなら、古賀の綺麗な心に癒されるから。
「そういえば、どうしてエアリアル様がここにいるの? 」
「あっ、そうだった。のっちぃを迎えに来たんだったの。」
「迎え? 」
「そうなの。ルフス様が帰っておいでって。」
「えええ? どうして急に…。」
「ルフス様はずっとのっちぃを心配していたの。僕も忙しかったけど、なんとか用事が済んだから、急遽のっちぃと役割を交代することになったの。」
「まさか、そんな…。せっかく古賀と相棒の仲も深まってきたのに。」
さっきだって二人で敵をやっつけたはず。いや待て。のっちぃは思い出す。
僕がしたこと、というかされたことって、投げ飛ばされただけじゃ…。
「僕帰る。どうせ僕なんて投げ飛ばされるだけの役立たずだよおおおおおおおおおおおおおおおお。」
「待って! のっちぃ‼ 」
「こ、古賀? 」
「帰ってきたら美味しい天界のスイーツお土産によろしくね~。」
「古賀の薄情者ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ。」
涙目になりながら、のっちぃは天界へと昇っていく。しかし、何か大きい手でその行く先を封じられた。
「ううう、離してよ。僕は僕は帰るんだぁぁぁ。」
「のっちぃ、待つの。」
「うっ、エアリアル様。」
「僕は感動したの。人間と妖精がここまで仲良くなれるなんて。」
「どうしてですか。今僕は帰れって言われたんですよ‼ 」
「でも、お土産お願いされたでしょ? つまり、魔法少女はのっちぃが戻ってくる前提で話をしているの。」
単純なのっちぃは感動して古賀を見つめる。
そうだよ。今まで、たった数ヶ月の仲だけど、確かに僕らの仲は深まったんだ。古賀と一緒に過ごした日々。たまには喧嘩して、たまには優しく声を掛け合った。そんな温かな日々。一緒にご飯も食べたし、一緒に勉強もした。昔の頃よりうんっと人間の心が分かってきたんだ。
「やっぱり帰らない。」
「え? のっちぃ帰らないの? 」
「うん。だって、古賀の面倒を見られるのは僕だけだからね。それに、古賀とエアリアル様が一緒になんて恐ろしくてたまらないよ。古賀が変なこというかもしれないし。」
にっこにこ。のっちぃは決めたからには一途だ。決して覆さないその決意の元、古賀とずっと一緒に戦っていくことを決心した。
「エアリアル様、そういうことで、宜しいでしょうか。」
「うんうん。いいと思う。ルフス様もきっとのっちぃが強くなったと喜んでくれるはずだよ。じゃあ、せっかく来たけど、僕はここでさよならするの。」
「エアリアル様、また今度お会いしましょう。」
「うん。勿論なの。」
エアリアルは天界へと羽ばたいていく。古賀とのっちぃも帰路につく。
すっかり影が薄れていたユメも忘れずに。
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