第56話 日常
蝉の鳴き声が聞こえてくる。そのおかげか教室の中にいて冷房も効いているのに暑さが伝わってくる気がする。
1つの木に何匹の蝉がいるのだろうか。これを聴き慣れるにはまだ時間がかかりそうだ。
「〜であるからしてここは……」
波原はあくびを噛み殺しながらノートに黒板に書かれている事を写している。
すると机の中でマナーモードにしていたスマホが震えた。波原は先生に見つからないように太ももの上で内容を確認した。
(つむぎ)
こちら優等生の涼風紬
只今、とても眠たいです!
確認すると涼風からのメールだった。確かにこの授業はノートを書くぐらいの為周りも何人か寝ている人がいる。しかし波原は涼風が眠たいのは珍しいと思った。
(みなと)
眠たいなんて珍しいな
(つむぎ)
最近寝るのが遅いんだ〜
(みなと)
自称優等生が夜更かししてるんですか?
(つむぎ)
自称じゃなくて事実!
(みなと)
なら授業中にスマホ触ってる件について聞いていいかな?
周りの子に見られてもイメージダウンじゃない?
(つむぎ)
ふふん。大丈夫
ブレザーを使って横からの射線も遮ってます
(みなと)
段々とゲーマー脳になってきてるな
(つむぎ)
誰かさんの影響でね
(みなと)
勉強などに支障がない範囲にしなよ
(つむぎ)
誰かさんの影響で支障がでたら、責任を取ってもらいます
(みなと)
自己責任でお願いします
その後、たわいもない話をしているとあっという間にチャイムがなってしまう。
波原は前の黒板を確認した。全面にチョークで沢山の内容が書かれている。そして恐らく1回黒板を消してもう一度書いている。つまりノートに書く事ができない。
そんな事を考えていた波原だったが、諦めてノートを閉じた。その時だった。机の上に誰かがノートを置いた。席の隣を通った涼風だった。
ノートには付箋が入ってありそこにはメモが書いてあった。
『私とのさぞ楽しいであろうメールのやり取りに夢中になっていただろう波原くん。私のノートを見る権利をプレゼントします。私の美しく可愛い文字を目に焼き付けながらノートを写すがいい。わははははは
※追記 放課後までに返してね』
ちょっと暴走気味だか、涼風の優しさが伝わってくるメモに波原はつい笑みを浮かべ呟いた。
「ありがとう涼風」
波原は涼風のノートを開き無事ノートを埋める事ができた。
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