第52話 交換
波原は涼風の言葉を思い出す。確か水瀬杏には昼休みに委員会の仕事があったはずだ。
「そういえば、今日委員会じゃないの?」
「誰に聞いたかは知らないけど、確かにあるね」
「大丈夫なの?」
「図書室を開けるだけの簡単な仕事。本当は図書室の中にいないといけないんだけど、人来ないからちょろっと抜け出してきた」
「そうなんだ」
「でも流石に戻ろうかな。でもその前に……」
水瀬杏はポケットからスマホを取り出した。
「連絡先交換しよう。これから関わる事も増えそうだし」
「いいけど、まさか水瀬さん自ら言ってくるとは思わなかった」
「私も滅多に言わないよ。今回は特例」
お互いQRコードを読み込み登録を済ませる
「ありがとう。それじゃあまたね」
そう言って水瀬杏は図書室の方へ向かっていった。
日差しは波原の真上に位置している。流石に日差しが暑くなってきたので、弁当を早めに食べ終えて教室に戻る事にした。
戻ってる最中に水瀬杏からメッセージが届く。
(杏)
私は毎週火曜日と木曜日が
委員会の当番なんだ。
それで提案なんだけど、
流石に外で食べるのが暑いだろうから
毎週火曜日と木曜日、図書室で
昼ごはん食べてもいいよ。
(みなと)
マジですか?とてもありがたい
(杏)
まぁ、条件もあるけど
① 食堂で私のサンドウィッチを買ってくる事
② 図書室の整理を手伝う事
(みなと)
なるほど、それぐらいならお安い御用
(杏)
なら決まり。サンドウィッチ代は後払いす るから安心して
(みなと)
なら、来週から行く事にする
(杏)
はーい
波原はスマホをポケットに直すとそのまま教室に戻った。
そして今日の学校は終わり、あっという間にバイトの時間がやってくる。
「学校ぶりだね〜波原」
バイトの制服に身を包んだ涼風が厨房にやってくる。
「涼風、今日は厨房なの?」
「そうそう。今日は沢山チャーハン作るよ!」
「作りすぎには注意しろよ」
「分かってるよー」
バイトが始まった。まだ時間帯も夕方なので人はほとんどいなかった。その為、必然的に余裕が生まれる。そして波原はふと今日の事を思い出す。
「なぁ、涼風」
「ん?どうしたの」
「水瀬さんにさ、僕たちが友達って事バレたかもしれない」
「…マジ?」
「どっかで見られてたのかもしれない。僕は言ってないから」
波原への質問で確信に至ったのかもしれないが答えてはないのでそう答える。
「そうなんだ。まぁずっと隠し続ける事は無理だったし。てか今日も一緒に帰ったけど何も聞いてこなかったね」
「そうなんだ。友達って隠していて言ってた約束が守れなくなりました」
「大丈夫だよ。それより杏が気になるね。私からも直接聞いてみるよ」
「なんか分かったら連絡して」
「私に任せなさい」
そして数日後の放課後、天音祈凛が用事で先帰ったので涼風と水瀬杏、2人で帰る機会がやってきた。
「ねぇ杏、この後暇?」
「暇だけどどうした?」
「今週までのカラオケ半額クーポンがあるんだけど行かない?ちょうど2枚持ってて」
「よし、行こう!」
「ほんと杏ってカラオケ好きだよね」
「歌うの好き、上手かは置いておいて」
カラオケに到着し部屋へ入った。早速タブレットで歌う曲を選んでいる水瀬杏に涼風が聞く。
「私と波原の事、いつ知ったの?」
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