第43話 お揃いのキーホルダー

「買った買った〜」


大きな袋2つ分の衣服を購入した涼風はそれを全て波原に渡す。案外重いと思っていたが、それほどでもなかった。


「さて、次はどこに行こかな〜」


そのまま2人でショッピングモールを散策した。そして、いつの間にかとある店に引き寄せられていた。


日本特有の文化「ガチャガチャ」トイカプセルだ。最近は専門店も出来てきて、ここもそれに該当する。少し狭い店内に何段にも積み重ねられている。


「ここだけ、重力偏っている気がする」

「あれ、いつの間にか財布から1000円札が」

「それは早すぎない」


そのまま両替をして、お金をポケットに直す。

特に目当てのガチャガチャがある訳ではないのだが、流れでしてしまった。


2人で色々とガチャガチャで見ていると、一つ気になるのが目に止まった。


とあるアニメのマスコット的な可愛らしい兎のキーホルダーだった。世間的に流行ってる訳ではないが、知っている人は知っているいいアニメだ。


「あ、これはあのアニメの軍曹うさぎだ〜」

「全5種類にシークレットが1つか」


軍服っぽいのを着たうさぎの表情が違うものが5種類と黒く塗りつぶされているのが表紙に写っている。値段は一回400円。


「回さない?」

「1回だけと覚悟を決めて回しなさい」

「ラジャー」


100円玉を入れてレバーを捻る。ガラガラと中のカプセルが混ざられ取り出し口からカプセルが1つ落ちてくる。カプセルを開けると、口を開けて笑っている軍曹うさぎのキーホルダーが出てきた。


「笑ってる子だったよ。どう?波原も一回回しとく?」

「まぁ、こんな子供騙しのガチャガチャにお金を使うほど、僕はバカじゃないからね」


そう言いながら100玉がガチャガチャに吸い込まれていく。


「波原知ってる。それを行動と言動の不一致って言うんだよ」

「すみません。本当はとても回したいです」

「うむ、よろしい」


波原もレバーを回して取り出し口からカプセルトイを取り出す。出てきたのは涼風と同様笑っている軍曹うさぎのキーホルダーだった。シークレットを含めて合計6種類あるのに、連続で同じ種類のが出るとは思ってなかった。


「あれ、一緒だ」

「あれあれ波原?もしかして私とお揃いが良かったのかな〜」

「文句は全てはこのガチャガチャにお願いします」

「いやいや、文句なんてないよ!私は波原と一緒で嬉しいよ」


突然の発言に少し動揺する。波原は涼風の際どい言動にツッコミたいが、中々その勇気は出てこない。


「一緒だったとしても別に何もないでしょ」

「それはそうだとしても…そうだなぁ」


涼風は少し考えた後、口を開く。


「ならこうしよう!お互いこのキーホルダーを学校で使っているカバンに付けよう!」

「……はい?」


涼風の言っている事は誰も付き合っている事を知らない男女が同じ物をさらっと付けたり、同じ時間帯に同じ食べ物をSNSに投稿したりと言うところの『匂わせ』だ。


「そんな大胆な事をしていいのか?こんなのも気づく人は気づきそうだけど」

「そこがまたいいんだよ〜」

「涼風ってそんな危ない橋を渡る人だっけ?」

「偶にはアグレッシブに生きたい時もあるのよ」

「なるほど?」

「とにかく、学校にキーホルダーを付けてくる事!いいね!」

「わ、わかった」


少し強引だが、そう言う事で話がまとまった。

そして学校登校日、波原はリュックのジッパーにそのキーホルダーを付けていた。少々目立っているが普通にしとけば、目立つ事はない。


教室の扉に手を掛け、扉を開ける。


「あれ〜涼風のキーホルダー可愛いね」

「いや、これは可愛いよりカッコいいよりなのでは?」

「それ、どこで買ったの?」


見ればわかる質問攻めに合っていた。波原は危険を感じて、すぐにキーホルダーをリュックの中に隠したのだった。その後はキーホルダーを外に付けている事は無くなった。そしてその事が涼風にバレるまで時間は掛からなかった。










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