第37話 ゲーム

波原の自室に入る。入って右手にベッドと大きい本棚があり、漫画とライトノベルが敷き詰められている。正面にはL字型の大きな机があり、3枚のモニターと1面がガラス張りのPCが置いてある。


涼風は波原の部屋を見て驚愕する。


「もしかして裏稼業でハッカーしてる?」

「残念ながら、ハッカーする実力は兼ね備えてない。てか座る所ないな。椅子取ってくる」


部屋にはL字型のデスクの前にリクライニング付きのゲーミングチェアしかない。


「大丈夫、ベッドに座るよ」


そう言ってベットに腰掛ける。

波原はつい、数時間までそこで寝ていた。布団を一応干しておいて正解だった。波原はここで思った。簡単にそんな事しないで欲しいと。


「その、平気に座るんだね」

「え?寝ろって言われたら全然布団に潜って寝れるよ」

「そ、そうか」


少し赤い顔を隠すように波原はモニターと向き合う。FPSゲームを起動して、射撃訓練場に入る。


「とりあえず、やってみる?」

「まずは、波原がやってる所見たいかな〜」


涼風の言う通り、まず射撃訓練場でエイム練習する。目の前に1つの的が現れ、ライフルでそれを撃つ。するとまた別の場所に現れる。1秒おきに的の場所は変わるので、1秒以内に正確に的を撃たなければならない。それが30秒続くので最大スコアは30となる。


波原の結果は27で今日1発目にしては中々だった。


「なるほどそんな感じね〜。波原、次は私がやる」


涼風は立ち上がって波原が座っていたゲーミングチェアに座る。マウスを握り、キーボードに手を添え、ヘッドホンを装着する。


「一応的が2秒おきに出るイージーモードあるけど、そっちにする?」

「大丈夫、私に任せて」


始まって、的が出現する。一個目は正面に出てきてので壊す事に成功するが、その後右左と出てきたり、少し遠い場所に現れて的が小さくなったりした。結果は5だった。初めてなので5個壊せただけで上等だ。


「ううっ、難しい〜」

「いやいや、初めてで5個壊せるのは凄いよ。何より最後に壊した的はとても右にあったよ。僕でも正確に当てれるかどうか」

「案外難しいな〜。あ!波原も一緒に出来ないの?波原相手なら勝てる気がする」

「あのスコア見てよく言うね。けど残念ながら家庭用ゲーム機と違って1人でしか出来ない・・・・・・。涼風、ちょっと下がって貰っていい?」

「え?わかった・・・。」


そう言うと、デスクの上に置いてあるPCから一つのケーブルを引き抜く。そして波原は机の下に潜った。


「何何?スカートの中は見せないよ?」


涼風は見えるはずもないオシャレなロングスカートをおさえるフリをした。


「見るつもりはないよ!」


机の下に置いてあるもう一つのPCに先ほどのケーブルを差し込む。そして電源を入れると、1番左のモニターにスタートメニューが表示される。モニターの位置を動かし、昔使っていたキーボードとマウスを引っ張り出しBluetoothで接続する。


「前使ってたパソコンなんだけど、動くかな〜」

「え、動いてるくない?」

「PCは動くけど、問題はゲームの方。ある一定の以上のスペックを持っていないと動かないんだよ」


ストアでゲームをダウンロードして起動させる。違和感なく起動したのでスペックは大丈夫なようだ。波原は隣の部屋から椅子を持ってくる。


「今座っている椅子使っていいよ。フカフカで座り心地は抜群なはず」

「ありがとう、それじゃあ存分に使わして貰うよ」

「よし、ゲームは動くな。けどアカウント作らないと、アカウント作る?」

「私のって事?そうだな〜、とりあえず作っとこうかな。」


メールアドレスとパスワードを打ち込み、その後ディスプレイネームを打ち込んだ。フレンド登録して一緒に射撃訓練場に入る。


「名前が『tumugi』ってそのままだな」

「波原だって『NAHAMI』って名前じゃん!ネーミングセンスないね〜」

「おいおい、僕の頭文字を馬鹿にするな」


波原は自分の名前の頭文字、『波』の『な』、『原』の『は』、『湊』の『み』からとって『NAHAMI』にしている。


射撃訓練場の対戦スペースに移動する。射線を切る為の障害物が左右対象に置かれている円状のスタジアムだ。


「さぁ、戦争だー!!本気で来いや〜!」

「本気で行くけど、泣かないでね」


決着はすぐについた。視線と視線が合った瞬間

波原が、マウスを一回クリックして涼風の頭を撃ち抜いた。


「え・・・。私いつの間にか死んでる」

「だって倒したもん」

「え?」

「涼風が見えたから頭を撃ち抜いた」

「え〜〜!?あの見えた一瞬で?」

「うん」

「チートだ!チートだ!運営の人〜、この人チート使ってま〜す!」

「おい、実力だよ!」


椅子に座ったまま180度回転して、ポカポカと波原の事を手をグーにして叩くが結果は変わらない。


「涼風も練習したら出来るよ」

「・・・。いつか絶対勝ってみせる」

「いつでも受けるよ」


涼風は最後に少し強く波原を叩いて再びモニターに向き合った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る