第34話 結果発表

放課後になり、廊下の掲示板にテスト結果のTOP30の名前が張り出される。掲示板の周りには確認しようと、沢山の人が群がっている。上から確認していくと8位に『涼風紬』の名前が載っている。

欠点は無かったものの、ギリギリの教科もあった為ランキングに乗る事は万が一にもありえないが、一応最後まで確認する。しかし『波原湊』の名前は載っていない。


バイト終わりに、いつもの公園のいつものベンチに涼風と波原は腰を下ろした。


「私の勝ちだね」

「おめでとう。8位ってすごいね」

「まぁ、それなりに勉強したからね。さて、何してもらおうかな〜」

「うっ・・・」


ニヤニヤと波原を見ている。


「お手柔らかにお願いします」

「特に、難しい事は頼まないよ。とても簡単なお願いだよ」

「めっちゃ怖いよ」


腰を上げて少し距離を空ける波原だが、その距離をギュッと涼風が詰める。


「それじゃあ、今度波原の家行っていい?」


波原が思っていたより簡単なお願いだったので安堵した表情を見せる。


「それだけでいいの?」

「私的には中々大きくでたんだけどな〜」

「家で遊ぶのってよくする事じゃないん?」

「小学生ならまだいいけど、高校生になると異性の家には中々行かないかな〜」

「そうなんだ。ならなぜ俺の家行きたいの?」


聞くと涼風の目がキラキラ光る様に見える。


「PCでゲームやってみたいだよね〜」


涼風は銃持っている格好をする。


「こう、バンバンって敵の頭吹き飛ばしたいだよね」

「結構えぐい事言うね。まぁそれぐらい全然いいよ」

「ありがとう!それじゃあいつ行こうかな?」

「バイトない日なら基本的に大丈夫だよ」

「なら土曜日はどう?」

「昼からなら行けるよ」

「なら決まり!なら土曜日の13時に公園集合で」


そう言うと、手を振りながら駆け足で公園を後にして行く。波原も手を振り返した。


次の日になっていつも通りに教室の自分の席に座る。1時間目が始まるまで机に伏せて時間を潰す。周りではクラスメイトが集まって話している。その中で1つの話題がふと耳に入ってくる。


「涼風さんすごいね〜学年8位だって」

「可愛い上に天才って神様与えすぎ〜」


話の話題は『涼風紬』のようだ。『涼風紬』が話題に上がる事は少なくないがこの話題で上がるのは初めてだった。小テストは何回かあったが、その点数は公開されない。今回初めて大きなテストでランキングが公開されて、『涼風紬』が頭が良いと言う事がしっかりと認知された。


周りから見たら、可愛くて更に頭が良いが追加された。結果として更に注目度が高くなった。

しかし波原はそれが少し気に食わなかった。人気が上がる事は構わないが、涼風の努力を知らないで頭の良い事を『天才』の一言で片付けられてる。それが波原は気に食わない。


しかし波原はそれを言いに行くほどの勇気を持ち合わせていない。なので身勝手だが、何とかして労ってあげたいと考えた。


授業が始まり、何とか案を考える。しかし案は浮かばず少ない友達を頼る事にした。机の下でコソコソとメッセージを送信する。


(みなと)

 暇?


(ひより)

 ひま〜どした?


(みなと)

 お前授業中でしょ


(ひより)

 そうだよ〜てか、みなちゃんもでしょ


(みなと)

 あ、気にしないで


(ひより)

 あ、こっちも気にしないで〜

 それで何よう?


(みなと)

 友達に贈り物とかしたいんだけど、オススメ

 とかある?

 

(ひより)

 ⁉︎


(みなと)

 おい、微妙に失礼な反応


(ひより)

 ごめん、う〜ん何かあるかな〜


返信が止まる。数分後に返信が返ってくる。


(ひより)

 なんか思いつかないから今日の放課後一緒に

 見に行く?


(みなと)

 いいの?咲夜怒らない?


(ひより)

 みなちゃんなら大丈夫だってさ


(みなと)

 なんか釈然としない


(ひより)

 w w

 それじゃあ放課後そっち行くね


(みなと)

 おけ



放課後になり、一階で靴を履き替える。駐輪場で自転車を取って正門へ向かう。校門前では白い制服を身を包んだ朝宮が壁にもたれかかって待っていた。


モカブラウン色のミディアムヘアに綺麗な紫色の目。すれ違えば必ず二度見してしまう可愛さがある。勿論、咲夜の彼女なのでそう言う目で見る訳にはいかない。


「お、久しぶり〜。制服に着られている感すごいね〜」

「うるさい、背が伸びる予定で少し大きいの買ったんだよ」

「背、伸びるといいね」


校門前に他校の生徒がいるのは珍しくない光景だが、今回は少し周りに生徒が集まる。それも無理はなく、可愛い女子高校生が校門前で陰キャ男子高校生と待ち合わせしているからだ。

波原は今更集合場所を指定しなかった事を後悔した。


「目立つから早く場所変えようか」

「オッケ〜、それじゃあ後ろ乗せて」


学校指定と思われるカバンを自転車の前カゴに入れると、そのまま自転車の後ろのリアキャリアに座る。


「さぁ、行くぞ〜!」

「どう行くの?」

「勿論、地の果てまで!」

「とりあえず、ショッピングモール行くよ」

「それも良き!」


自転車を漕いでショッピングモールを目指した。波原は気づいていないがその時、校門の近くには涼風の姿もあった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


天音祈凛と下校しようとしていた涼風は正門前で足を止めた。


「どうしのつむぎん?忘れ物?」

「いや、正門前にいるのって波原くんじゃない」

「本当だ〜、あ!他校の女子生徒もいる」


しっかりとよく見えないが明らかに同じ高校の人ではない事が制服で分かる。


「もしかして彼女かな〜」


天音祈凛の一声を聞いて涼風はビクッと体を震わせる。


「友達かもしれないよ」

「でも、自転車の後ろ乗せてどっかいったよ」


涼風に追い込む様に天音祈凛は口を開く。勿論天音祈凛は涼風と波原の仲がいい事を知らない。意図せず口に出している。


「ふ〜ん」

「どうしたのそんなにむす〜ってして」

「いや、気のせいだよ」


涼風は少し早く足を動かして歩く。


「つぐみん!ちょっと待ってよ〜」


涼風は周りに聞こえない様に小さく声で口を開く。


「波原のばーか」

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