第31話 密会
一昨日のバイトで店長に頼み込み、今日のバイトは18時で上がれるようになった。その代わり、普段より早く来て開店の準備を手伝う事になった。これで黒咲先輩のライブに間に合うようになったのだが、1つ問題が生じた。今日、どうするか決まってない。集合時間から集合場所まで決まっていなくて、今学校にいる。そのまま休み時間突入する。
教室が騒がしくなり始める。どうしようかと思いつつ、波原は涼風の方を見る。しっかりと次の授業の教科書を出している。そして視線に気づいたのか、波原と目が合う。すると、手でこっちに招く動きをして、教室を後にした。
涼風の背中を追いかけていく。もちろん周りからは気づかれないように距離は離れている。
そして、周りを確認した後、空き教室へ入っていった。波原も周りを確認して空き教室へ入る。
中には昔使われていたであろう机の上にダンボールが置かれている。窓にはカーテンがあって、隙間から日光が刺しているだけなので教室は薄暗い。
「ジロジロ見てきて私に何か用かな?」
椅子に座っている涼風が言う。
「今日の予定を聞こうと思って」
「バイトの時に話せば良くない?」
「・・・・・・確かに」
正論が返ってきて言い返す言葉が見つからず、沈黙が訪れる。
「ちょっと待って・・・これだけ?」
「これだけ」
「密会終わり?」
「ちょっと待って、これは密会?」
「誰もいない空き教室で会うなんて密会以外の何があるの?」
確かに誰もいない教室に2人で会っているので、これは密会になるのだろう。
「折角集まったし、今日の予定はなす?」
「・・・お願いします」
波原も椅子に座り、向かい合って座る。そのまま今日の予定について話し合う。
「言ってもバイト終わりにそのまま行けば良くない?」
「・・・解散しよか」
話し合いにもならず、集まった理由がなくなってしまう。
「待って待って、もう少し話そうよ」
解散しようとした波原を涼風が止める。
「てかさ〜、こんな美少女と2人っきりでいるのに緊張しないの〜?」
「自分で美少女って言うなよ。けど最近は一緒にいることが多いし、なんか慣れてきた」
「ふ〜ん」
涼風は自分の容姿が整っていることを自覚している。その為この状況で何とも思わない波原を何とかしてドキドキさせたいと思った。
「そういえばここ暑いね〜」
涼風はわざとらしく手で仰ぐ。
「確かに、ここ窓空いてないからな」
「そうだね〜」
そう言いながら、涼風は立ち上がり、スカートを一回折り曲げる。スカートの長さが少し短くなる。波原の目線はついそっちへ向いてしまう。
「何やってるの?」
「暑いからスカート短くしようと思って。気にしなくていいよ」
この学校では校則では規定の長さにしないといけないが、スカートが短い生徒も多い。涼風はもちろん規定の長さに合わせている。
もう一回折り曲げて更に短くなる。
波原は視線を逸らす。
「暑いならここからでたらいいのでは?」
「今でたら廊下歩いている生徒にバレるかもしれないでしょ。出るならチャイムなる少し前でしょ」
またもや正論の為何も言い返せない。
涼風は更に折り曲げる。スカートは太ももの真ん中辺りになる。そのまま座る。先ほどと違い綺麗な太ももが見えて、ついドギマギしてしまう。
「これなら結構涼しいかな〜。あれ〜、どうしたの?顔赤くない?」
「暑いんだよ」
「へ〜」
涼風は波原の視線が下になっている事に気づく。
「なるほど、波原は太ももフェチと・・・」
「涼風さん?」
「だってずっと下見てたでしょ」
「だからって太ももフェチって決めつけるのは違うでしょ」
涼風は勝手に決めつけてるが実際のところ波原自身、自分が何フェチかわかっていない。
「てか、そろそろチャイムなるでしょ。そろそろ戻ろないと」
「次の授業ってなんだったっけ?」
「確か、日本史」
「日本史か〜。私あの授業嫌いなんだよね〜」
「涼風も嫌いな教科あるんだ」
「日本史は好きだよ。けど先生がね〜。永遠に喋り続けられるのしょうもないじゃん」
「確かに、眠たくなる」
「そう!私も眠くなる。これでも結構耐えてるからね」
学校では真面目な涼風が眠たくなる姿は想像しにくい。
「授業嫌だな〜。ねぇ波原・・・」
「ん?」
「ここで一緒に授業サボらない?」
「!?」
涼風からの爆弾発言に声の出ない驚きがでる。
「冗談でしょ」
「1時間ぐらい授業出なくても成績は変わらないよ」
「でも涼風の真面目キャラが崩れるよ」
「体調悪いって言うよ」
涼風は本気でサボりたいみたいだ。波原はとても悩む。涼風の提案に乗るか、授業へ行くか。
けど、答えはあっさりでた。
「やっぱ、授業行こう。サボりは良くないよ。授業中どうしても暇ならメッセージ送ってきて、話し相手ぐらいならするよ」
涼風はその返しを待っていたかのように微笑むと立ち上がって椅子を片付ける。
「やっぱ授業行こっか。後、授業中の相手も大丈夫。今ので結構元気貰った」
「なら、よかった」
扉の小さな窓から廊下の様子を伺う。周りには誰もいないようだ。
外へ出ようとする涼風を波原は止める。
「ちょっと待って。そのまま行くの?」
「え?何が」
「その、スカートの長さ・・・」
「あ!・・・」
少し恥ずかしそうにスカートの長さを戻す。
「危ない、波原以外に見られるところだった」
「僕にはいいのかよ」
「別にスカートの中まで見られてもいいよ・・・ちょっとなら」
自分から言い始めたが途中で恥ずかしくなり顔が赤くなる。
「自分で言って恥ずかしくなるのやめてもらえる?」
「ん〜〜!!今のなし!」
顔を赤くなるのを隠すように手で隠す。
スカートを戻し終わると、扉を開ける。
「それじゃあ教室戻ろう」
空き教室の扉を閉めたと同時にチャイムがなった。
「「あ・・・」」
ここから走ってもチャイムがなり終わるまでに教室には戻れるかは定かではない。
「やばくない?」
「諦めないで波原!!走るよ!」
涼風は先に走り出した。
「ちょ、待って・・・」
波原も走り出す。
教室に戻ると先生は教卓の前に立っていた。
「涼風さん。珍しいですね授業に遅刻なんて」
「すみません。トイレ行ってました。これからは無いように気をつけます」
そう言って自分の席に戻る。
「あら、波原くんも遅刻ですか」
「すみません」
同じ言い訳を使う訳にもいかず、高速で頭を回転させて、考える。
「ウォーターサーバーに水飲みに行ってました」
「これからは気をつけてくださいね」
「はい」
早歩きで波原は席に戻る。
スマホが震えてチラッと確認する。
(つぐみ)
遅刻乙〜w
(みなと)
お前もだろ!
(つぐみ)
そうだね。
いや〜、楽しかった!
波原は?
(みなと)
それは・・・楽しかったよ
涼風は小さく微笑んだ。
それをクラスメイトに見られたのか、今日の昼休みはクラスで日本史の授業中何故涼風は急に微笑んだのか論争が起きたらしい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます