第30話 幼馴染

学校から帰り、家に着く。お昼ご飯は作る気にならずコンビニ買ったサンドウィッチを口にする。PCをつけゲームを開くと友達2人がオンラインだった為誘ってみる事にした。


通話アプリで通話を開始する。


「テスト終わったか〜?」

「終わったよ」

「みなちゃん久しぶり〜。元気してた?」


朔夜ともう1人女の子の声が聞こえてくる。彼女の名前は『朝宮あさみやひより』。波原の幼馴染で空井咲夜の彼女だ。朔夜、朝宮、波原は幼馴染で小学生からの仲だ。


「久しぶり朝宮、テストを終えた僕は最強だぞ」

「へ〜、最近ランクをサボっていたみなちゃん、私たちについて来れるかな〜」

「サボリじゃなくてテストだよ!」

「それでテストは出来たか?」

「何とか赤点は無さそう」


その言葉に2人は驚く声を出す


「湊が赤点なし!?」

「みなちゃんが赤点なし!?」

「結構失礼だからね」


ツッコミを入れるが質問は止まらない。

まず、朔夜の質問が来る。


「カンニングした?」

「してないしてない」


次に、朝宮の質問が来る。


「お金積んだんじゃない?」

「積んでない積んでない」


咲夜と朝宮はいったん落ち着く。どうしても波原が赤点なしが信じられないようだ。


「それじゃあ、どうやって乗り越えた?」

「友達に教えてもらった」


波原の発言に先ほどより大きな驚きがイヤホンを通じて聞こえてくる。


「湊に友達!?」

「みなちゃんに友達!?」


咲夜と朝宮はびっくりして動揺している。波原に新たな友達ができるのがそれほど意外だったようだ。


「みなちゃん、イマジナリーフレンドなら先に言いなよ」

「レンタル友達使うぐらいなら俺が勉強教えてやるぞ」

「ガチで失礼だぞ」


2人から深呼吸が聞こえてくる。ゲームが開始し、キャラクター選択画面に移動する。


「とりあえず、友達できてよかったな」

「私、とっても嬉しいよ」


ゲームが始まった。最初は2人を引っ張る成績だったが、3試合目以降はいつもの調子に戻り、ポイントを盛る事ができた。バイトの時間が近づいてきたので、終了する事にする。


「そろそろバイトあるからやめるわ」


数秒の沈黙が訪れる。


「「バイト!?」」

「そうだけど」

「大丈夫?なんか雑用全部押し付けられてない?」

「闇バイトじゃないよな?」

「普通のバイトだよ」


安心したのか、声がいつも通りに戻る。しかし友達とバイトの話になったら必ずする話がある。


「みなちゃん、どこでバイトしてるの〜」

「今度、ひーちゃんと一緒に行くからな」


咲夜は彼女の『朝宮ひより』を『ひーちゃん』と呼ぶ、仲つむまじくて何よりだ。


「・・・・・・教えたくない」


朝宮と咲夜は昔からの友達だし、最初はバイト先を教えようと思っていた。しかし、言わない事にした。その時の波原の頭には涼風の顔が浮かんでいた。教えたら少なから涼風との関係がバレてしまう。波原はまだこの関係は2人だけのものにしたいと言う独占欲みたいなものがあった。


「いいじゃん!私たちの仲でしょ!」

「絶対笑いにくるだけじゃん」

「いいから教えろよ〜」

「絶対教えない!」


意地の張り合いが始まり、バイトの時間が近いので強制的に逃げる事になった。


「今度こそ絶対教えて貰うからな!」

「絶対遊びに行くからね〜」

「絶対教えない!」


そう言って通話から退出する。急いでバイトの準備をして、バイト先に向かう。


バイト先に着くと、久しぶりに見る人がいた。


「颯城先輩、久しぶりです!平日なのにバイトなんですね」


声に気づいてこちらに振り返る。そして目を輝かせて波原を見る。


「湊!ありがとう。変わらず『颯城先輩』と呼んでくれて」

「颯城先輩は颯城先輩ですから」

「お前は最高の後輩だな!」


肩に腕を回してくる。しかし、波原はこう言う乗りは苦手な為少し苦笑いをする。しかし颯城先輩がいい人というのは良く伝わる。


「何で俺が今日バイトかだよな。今日は人が少なすぎるらしいから、呼び出された感じかな。マジで新しい人雇えばいいのにな。店長は今日いないから、俺がバイトリーダー」

「すごいですね。それじゃあ今日はお願いします。颯城バイトリーダー」


波原が名前を呼ぶと颯城先輩の顔に雷が流れるような気がした。


「颯城・・・バイトリーダー・・・だと」

「何か、不味かったですか?」

「いや、むしろいい!是非呼んでくれ!」


波原は何かデジャブを感じつつ、颯城先輩は幸せそうな顔をした。

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