第29話 公園にて

昼の日差しがアスファルトを照らしている中、公園のベンチに座って涼風を待つ。


額から垂れた一粒の汗を拭い、スマホで時間を確認する。集合時間まで後、5分と言ったところだ。


「お待たせ〜!!」


公園の入り口から走って駆け寄ってくる涼風の姿が見える。片手にはビニール袋がぶら下がっている。


「全然待ってないよ。それで用事って?」

「テストの自信を聞きたくてね。あ、飲み物あげるよ!今日は暑いね〜。」


ビニール袋からジュースを取り出して渡す。


「あ、お金渡すよ」


財布を取り出した瞬間涼風は取り出している手を掴まれる。


「大丈夫、テスト頑張った記念だよ」

「でも、涼風も頑張ったじゃん。自分の分は自分でだすよ」

「・・・それもそうか!ならお互いのを買い合ったって事で!」


100円玉を2枚涼風に渡す。


「ありがとね〜」


受け取った涼風はお金を財布に入れる。

涼風は波原の隣にスカートに折れ目がつかないように丁寧に座る。


「それじゃあ、乾杯しよう!」

「ペットボトルで?これでするのは初めてかも」

「それは私も〜!」


コーラとコーラをぶつける。鈍い、なんとも言えない音がする。


「「かんぱ〜い!!」」


涼風の元気なテンションになんとか着いていこうとするが、厳しい。


「どう?テストの自信は?」


コーラを一口飲んだ涼風が聞いてくる。


「多分赤点はない・・・けど言い切れない」

「私が教えた教科で赤点とったら許さないからな〜」

「わかってるよ!それで赤点とったら土下座案件」

「見てみたいけど見ない事を祈るよ」


波原もコーラを飲む。日照りで暑かった体にコーラが染み渡る。お陰で少し涼しくなる。


「涼風はどう?テストいけた?」

「恐らく全て75点以上かな」


衝撃の発言に波原は驚く。ただでさえ難しいテストを全て75点以上発言をできる自信。涼風がどれだけ勉強、努力をしてたかが伺える。


「すごっ!毎日の勉強が身を結んでるね」


波原の急な褒めに涼風は少し照れて、それを隠すかのように波原を小突く。


「もう〜、照れるじゃん!このこの〜」


涼風が落ち着くと、呟くように話す。


「波原に命令何しようかな〜」

「おい、まだ勝ったかは分からないでしょ!」

「もしかしたら波原にも勝機があるかもしれないけど、望み薄いよ〜」


その後、今後の話に移る。黒咲先輩のライブについて話すことになった。


「とりあえず明後日のライブだけど、何時集合にする?てかバイト入ってる・・・」

「それは私も〜。明後日は少し早く帰らせてもらおうかな。今日のバイトで2人で土下座しよう!」

「わかった」


その後もいろいろ話して結局1時間ぐらい経ってしまい、飲み物の中は空になる。時間も12時になり、太陽は2人の真上に昇る。


「そろそろ解散する?」

「そうだね〜。それじゃあ今日もバイトでね〜」


公園を2人並んで出る。


「送っていこか?」

「どうしようかな〜」

「そこ悩むとこ?」

「えへへ、大丈夫だよ!暑いから波原も帰りな」

「了解それじゃあまたバイトで」

「うん!それじゃあ」


2人はそれぞれ帰路についた。蒸し暑い日差しが夏の始まりと梅雨の訪れを感じさせる。


1学期前半、ぼっちだった波原にとっては濃い日々になった。今までした事のない経験を沢山して、波原の青春は少し色付いた。

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