第28話 テスト終わり
静かな教室で各々シャーペンを動かす。時には書き止まり、時には一斉に書き出す。規則性のないリズムが教室に響きわたる。
チャイムが鳴り一斉に書くのをやめて答案用紙が回収される。
クラスは歓喜で満ち溢れる。これで1学期、中間テストが終わった。
周りの友達とテストの解答を言い合ったりしているが波原は話す友達もいなく、1人で机の上にある筆記用具を片付ける。
終礼が終わり、一直線に帰ろうと教室を出た所で珍しくスマホが震える。取り出すと涼風からのメッセージだった。
(つむぎ)
午前11時、いつもの公園にて待つ。
(みなと)
理由を聞いても?
(つむぎ)
ひ・み・つ
(みなと)
・・・とりあえず了解
いつもの公園とは恐らくバイト帰りに涼風と別れる公園だろう。急な呼び出しだが用事もないので、すぐに向かう事にした。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
涼風は波原にメッセージを送り終わると、スマホをカバンにしまう。そして教室の扉が開き、
天音と水瀬が入ってくる。
「つむぎん!テストお疲れどう?手応えのほどは?」
「基本的に解けたかな。偶にある、入試問題レベルの問題は流石に解けなかったよ」
「何それ⁉︎私にとっては全部入試問題に見えたよ!」
助けを求める子羊の様に涼風に助けを求めるが、テストが終わった今どうする事も出来ない。
「大丈夫。まだ私たちには期末テストがある。そこで取り返せばいい」
水瀬杏も口を開く。言い方的に水瀬杏もテストの自信がないようだ。
「そうそう!それじゃあ今から中間テストお疲れ様でした会を開催しまーす」
水瀬の意見に賛同したと思うと、唐突にお疲れ様でした会の開催が宣言された。
「開催場所は近くのカラオケ。今ならなんとフリータイム3割引き。紬、行くでしょ」
魅力的な提案だが、涼風には先に用事があった。
「ごめん、私用事あるから行けない。明日なら行けるからそれで埋め合わせってことで・・・」
「そっか〜。用事なら仕方ないね〜」
「もしかして彼氏でも出来た?」
水瀬杏の急な質問に涼風は少し反応する。別に彼氏って訳ではないが、今から会うのは男の子の為、ドキッとしてしまう。
「別にそんなじゃないよ」
「そう?最近の紬、楽しそうに見えるけど」
「え!もしかしてつむぎん、本当に彼氏が⁉︎」
「だから違うって」
まだ続きそうな気がした涼風はカバンを肩にかけて、逃げるように教室を出る。
「明日なんか美味しいもの食べよう。お疲れ〜」
「明日、絶対だからね〜」
教室を出ていった涼風の背中を天音祈凛と水瀬杏は見守った。
「あやしい・・・」
水瀬杏は顎に当てて、呟いた。
「杏?どうしたの〜」
「紬、何か隠してそう。やっぱ男か」
水瀬杏の言葉に天音祈凛は対抗心を燃やす。
「つむぎんに男?その前に私を通してもらおう!」
「あんたは紬の何だよ」
「親友だよ!」
ハッキリと言いきった。中々恥ずかしい言葉だが堂々と言えるのは凄い。
「それは私も。・・・私達も帰ろっか」
「そうだね。お腹空いたし、軽く何か食べに行く?」
「・・・いや、明日の為に取っておこう」
「そうだね!3人で食べよう!」
「それで、全てを聞き出そう」
水瀬が少し怖い笑顔を見せる。
「杏、笑顔が怖いよ〜」
「気のせい、気のせい」
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