第26話 2人で図書館

18時を過ぎて図書館の利用者は少なくなる。周りは暗くなり、図書館の中が際立って明るく感じる。


「波原は時間いける?」

「まだいける」

「私もまだいけるよ〜。それじゃあ勉強の続きしよっか」


一旦英語の勉強を終わり、暗記科目の日本史を勉強する事にした。大量の一問一答と向き合って覚えていく。


1時間ぐらい経ち、波原は人の名前、戦の名前、法の名前、年代などを覚えた。

波原はふと隣の涼風を見る。問題集と向き合っているが、珍しく事にシャーペンが動いていない。


しかし、よく見ると首がカクカクと上下に動いていて、目は閉じている。寝てしまったようだ。


波原は起こすか、そのままにしておくか悩んだ。しかし、答えを出す前に涼風の意識が覚醒した。


「あ、ヤバ。いつの間にか寝てた・・・」


涼風がボサッと呟いた。


「あ、起きた」

「うん、おはよう波原・・・」


そして涼風は寝た所が図書館で隣に波原がいる事を自覚する。


「私の寝顔見た?」


疑う視線で波原を見る。


「見てない見てない!今気づいたばっかり」


図書館の中だが少し大きな声が出てしまう。


「なら、いいけど・・・」


涼風が眠くなってしまうのも分かる。6時間の授業を終えた後、図書館での勉強。実際波原も何回か睡魔に襲われた。


「結構勉強したし、今日はこの辺で終わっとく?僕はまだ出来るけど」

「いや私はまだやるよ。けど場所変えたいかな。その・・・お腹空いて・・・ファミレスとか行かない?」


時刻は19時過ぎ、2人とも昼ごはん以降何も食べずに勉強していた為、お腹が空いている。


「いいよ。僕もお腹空いたし」

「それじゃあ、ファミレス行こっか」


荷物を片付けて図書館を後にする。そして大通りにあるファミレスへ入店する。


「何頼む?」

「ドリンクバーとポテト」

「え?食べ盛りの男子高校生がそれだけ?」

「ちょっと金欠で・・・」


主な原因はこの前のゲームのアプデで追加された新スキンを買った為なのだが。


「ごめんね無理させて」


注文をして2人でドリンクバーを取りに行く。ドリンクバーには、人気ジュースからコーヒーまでかね備えている。


「何飲もうかな〜」


涼風はドリンクを一つ一つ見ながら悩んでいる。


「波原は何飲むの?」

「久しぶりにメロンソーダ飲もうかな」


波原はボタンを押してコップにメロンソーダを注ぐ。シュワーと音を立ててコップが緑色に染まる。


「それじゃあ私も、メロンソーダ飲もうかな」


涼風もメロンソーダをコップに注ぎ、テーブルへ戻る。


「どう?テストいけそう?」


メロンソーダを一口飲み、涼風が質問してくる。


「お陰様で何とかなりそう。本当に感謝してる」

「そう。役に立てて嬉しいよ」


涼風は少し笑みを浮かべる。


「涼風はどうなの?」

「とりあえず問題集も解き終わったし覚える事は覚えたからまぁいけるかな」


涼風は毎日真面目に授業を受けているし、毎日予習復習もしているのだろう。


「勝てる自信がない」

「まぁまぁ、最後まで諦めないで〜」


涼風は余裕の笑みを浮かべる。

そんな事を言っていると、料理が届く。波原が頼んだポテトと涼風が頼んだビザがテーブルに置かれる。


「波原〜、私のピザ少しつまんでいいよ」

「いや、それは悪いよ」

「一緒に食べようと思って頼んだんだよ」


不意な言葉が波原に刺さる。自分の為に分けやすいピザを頼んでくれたと思うと申し訳なくなる。けど嬉しく感じた。


「それじゃあ貰うよ。それと僕のポテトも食べていいよ」

「いいの?」

「もちろん。僕も貰うんだし」

「ありがとう!それじゃあピザ切るのやってもらっていい?私苦手で〜」

「いいよ。ピザ作った時やるし」

「ピ、ピザを作る⁉︎」


涼風は驚く。波原は時間があれば色々な料理を作る。昔から色々な料理を作ったおかげで今ではピザや餃子なども作れる。

波原はピザカッターでピザを慣れた手つきで8等分に綺麗に分ける。


「お、流石だね〜。ありがとう」


涼風はピザを口へ運ぶ。


「うん、出来立てで美味しい。波原も食べなよ」

「それじゃあ、いただきます」


波原もピザを口へ運んだ。


「ん、おいしい。これで1000円以下か」


生地もしっかりしていて乗っている具材もしっかりと美味しい。チーズもしっかりと伸びる。

あっという間に手に取ったピザが無くなる。


「ポテトも貰うね〜」


ポテトを手に取り、マヨネーズを付ける。


「涼風はマヨネーズ派なんだ」

「ケチャップも好きだよ」


波原はケチャップをつけてポテトを食べる。


「波原はケチャップ派なんだ!」

「マヨネーズも好きだよ」


似た発言を繰り返す。

ポテトを何個か食べた所で涼風が聞いてくる。


「ねぇ、私にあ〜んしてくれない?」


突然の発言に波原は喉を詰まらす。しかし無理もない。急に「あ〜んして」なんて言うとは誰も思わない。


「自分で何言ったか分かってる?」

「うん。私、あ〜んされた事ないんだよね〜」


平然と言っているがとんでもない事を言っている事に涼風は気づいているのだろうか。

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