第23話 ゲームと電話

「テスト1週間前だがら後ろの黒板にテスト範囲表と、日程はっておいたぞ」


教室の後ろの黒板を確認すると、テスト範囲表とテスト日程のプリントが貼られている。


教室にはざわめきが漂う。なんせ高校初めての定期テストの為、テストの傾向が分からない。

頭を抱える人、余裕そうな人、一周回って吹っ切れてる人、など様々だ。


終礼が終わり、波原は真っ直ぐ家に帰宅する。

家に帰るとすぐに机に座る。ただし勉強机ではない。


「今日はアプデ日だ!」


PCの電源を入れて、fpsゲームを起動する。

5対5で様々なキャラクターを使い、爆弾設置側と解除側に分かれて戦うゲームだ。


「新キャラに新マップそして新スキン!今回は気合い入ってんな〜」


テンションの高い波原は早速、新スキンを購入する。帰り道に買ったプリペイドカードはただの紙切れとなる。


フレンドがオンラインだった為、声をかけてみる事にした。通話ツールで連絡する。電話をかけるとすぐに応答する。


「湊、久しぶりだな。春休み以来か?」

「そうだな、久しぶり。朔夜」


中学生の頃の数少ない友達「空井朔夜そらいさくや」イケメン、頭がいい、優しい、完璧な性格。高校では進学校に通っていて、中学校の時から付き合っている彼女もいる。そしてゲームが好き。余りにも高スペックに羨ましい以外の言葉が見つからない。


「さてさてそれじゃあランクしよーぜ!」


早速ランクマッチに参加する。このゲームの1試合の時間は長い。数試合するだけで日は沈んでしまう。5試合目の途中、スマホが震える。確認すると涼風からの電話だった


「ごめん、ちょっとミュートする」

「オッケー」


マイクをミュートにして涼風からの電話にスピーカーモードにして出る。


「どうした?」

「波原勉強してるかなチェックの時間で〜す」

「もちろんしてる。テスト1週間前だぞ」

「だよね〜。それじゃあ、聞こえてくるキーボードを叩く音は何かな〜?」


電話しながらゲームをしている為、キーボードの打鍵音が電話越しの涼風に聞こえてしまっている。


「パソコンで勉強してるんだよ」

「へ〜」


見えてはないが、涼風の怪しむ視線が目に浮かぶ。


「テスト1週間前だがら、ちゃんと勉強しなよ〜」

「こんな時期にゲームする人なんている?あ!ミスった!」


使うスキルを間違えてしまい、敵に倒されてしまう。


「これはゲームしてるな〜」

「そうですけど!」


波原は吹っ切れて認めてしまう。


「ごめんやけど、後20分ぐらいで終わるから後でかけ直す」

「うん、それじゃあ電話楽しみにしとくよ」


電話をきり、ゲームに集中する。


「何かあった?」

「テスト1週間前だから、勉強してるか〜?って高校の友達が」

「なるほど。ってテスト1週間前⁉︎なんでゲームしてるの」

「アプデがあるのが悪い」


試合を終え今日の所はゲームを終了した。

リビングへ戻り、飲み物を取る。流石に勉強をしようと自室へ戻り勉強机へ向かう。


「勉強するか〜」


波原はゲームで連勝し気持ちよく終わる事ができた。浮かれたまま勉強を始めるがとある大事な事を忘れていた。


1時間後、波原ののスマホが震える。画面を見ると大切な事を忘れている事を思い出した。


「やばいやばいやばい」


波原は20分後に電話するって約束を思い出した。とりあえず電話に出る事にした。


「もしもし〜」

「・・・・・・」

「涼風さ〜ん」

「・・・・・・1時間20分」

「ウッ・・・」

「1時間20分待ったよ!」


見なくても涼風の頬が膨らんでいるのが想像出来る。


「本当にすみません!ゲーム連勝してそのまま勉強してました!」

「素直なのはよろしい。けど、待たせすぎ!」

「ずっと待ってたの?」

「お風呂入りたかったのに入れなかったの!」

「それは本当にごめん」

「まぁ、電話に出てくれてよかった。それで何のゲームやってたの?」


波原は先ほどプレイしていたゲームを説明した。


「あのゲームやってたの!そういえばキーボードの音聞こえてたし、まさかのゲーミングPC!?」

「そうだけど・・・」

「もしかして光るの?」

「光るよ」

「うわ〜、かっこいい!私も欲しいけど流石に高いからね〜」


このままゲームトークを30分ほど続けてしまった。もちろん勉強はこの間進んでいない。


「ねぇ、1つ勝負しない?」

「テストの合計点勝負。勝ったら相手になんでも1つ命令できる!」

「なんでも⁉︎」


オタクは『何でも』と言う言葉に敏感。そう、『何でも』は『何でも』だから。


「そう、なんでも。あ!良識の範囲内でね」

「流石にそうだよな」

「え〜?もしかして勝ったら私に不健全なお願いしようとしてた〜」

「するわけないだろ!俺が殺される」

「それじゃあ、頑張りたまえ。私は強いぞ」

「正直、勝てる気しない」

「なるべく努力はしなよ。それじゃあ勉強ファイト!」

「涼風も頑張って」


波原は電話を切る。勝てる見込みはあまりないがせめて1教科ぐらいは勝ちたいと言う気持ちが高くなる。波原は机に向かって再びペンを動かし始めた。

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