第22話 自宅訪問(4)

「塩少々ってどのくらい?」


卵をボールの中に入れ、白身と黄身が混ざり合うように丁寧に混ぜている涼風が質問している。


「そうだな〜、小さじの4分の1ぐらいかな」

「え・・・、さっき私、小さじ2杯ぐらい入れてた」

「味が濃い原因それじゃん」


卵を混ぜ終わり、塩を小さじの4ぶんの1ほど入れる。


「よし、後は牛乳を小さじ1杯いれて完成!波原も出来た?」


卵の下準備が終わり、涼風は波原の方を見る。


「うん。ケチャップライス完成した。後は任せたよ」


波原は刻んだ鶏肉、玉ねぎなどの具材を入れてケチャップライスを完成させる。


「オッケー、たまごで包むのは私に任せて!」


フライパンに油を入れ、準備した卵を投入する。半熟になったらケチャップライスを入れて綺麗に包む。それを2回繰り返し、2人分のオムライスを完成させる。


「やっぱ、卵で包むのうますぎない?」

「そう?褒めても何も出てこないよ」


涼風はオムライスの上にケチャップでニコちゃんマークを書いた。

波原と涼風エプロンを脱ぎ、食卓へオムライスを運ぶ。


「出来た〜!」

「今回は美味しいはず!」


向かい合って座り、手を合わせる。


「「いただきます!」」


オムライスを切り分け、同じタイミングで口の中へ運ぶ。


「美味しい〜!こんな味食べた事ない!」

「今回は隠し味を入れてあるからな」

「なんと!それでその隠し味とは?」

「醤油。これで旨味が更に広がるんだ」


涼風は口がふにゃふにゃと溶けてとても美味しそうに食べている。


「やばいこの味癖になりそう」

「そう言ってくれたら嬉しいよ」


涼風はパクパクとオムライスを食べていく。


「それにしてもやっぱり卵の焼き加減は完璧だよ。フワトロで美味しい」

「そう!エヘヘ〜。嬉しいな」


波原が褒めると涼風は頬をポリポリとかいた。

中々の出来前だった為2人はオムライスをすぐに完食してしまう。


「おかわり〜!」

「残念ながらもうお米がない」

「だよね〜」


涼風は少し残念そうにする。それだけオムライスが美味しかったんだろう。


「オムライスは無理だけど卵焼きぐらいなら作ろうか」

「本当に?」

「いいよ。キッチンとエプロン借りるな」

「ありがとう!昼休みに貰ったお弁当美味しかったんだよね〜!」


波原はエプロンき着る。もちろんハートの刺繍がない方を。


「え〜?ハートの刺繍の方を着なよ〜」

「いや、やめとく」


卵をかき混ぜて長方形型のフライパンに流し込んで卵焼きを作る。卵焼きはすぐに完成して食卓を運ぶ。


「完成したよ」

「見ただけで分かるよ。これはフワフワだ〜」


涼風は卵焼きを口へ運ぶ


「この前のお昼休みに貰った卵焼きと違って出来立てだからフワフワだ。とても美味しい」

「それはよかった。これは隠し味でマヨネーズを入れてみた。これでフワフワになりやすくなってるんだ」

「へ〜、私も今度やってみるね」


卵焼きを食べ終わったところで片付けに入る。


「波原はお客さんなんだから座っときな〜」

「こっちこそ招待して貰った側なんだから皿洗いするよ」


どっちがするか論争が始まり、結局2人で皿洗いをする事になった。


「なんかバイトみたいだね」

「バイトで余裕ある時は基本溜まった皿洗いだもんね」

「そういえば、料理できるのにこの前のお弁当冷凍食品ばっかだったんだ?」


皿を洗っている涼風の手が止まる。


「ね、寝坊した・・・」


おもってもいない答えに波原は小さく笑う。


「涼風も寝坊するんだ」

「うるさいな〜。私も完璧じゃないんだ」


涼風は肘で波原を小突くいた。

皿洗いはすぐに終わる。時計を見たら20時だったので波原はそろそろ帰る事にした。


「明日も学校だし、そろそろ帰るよ」

「うん。それじゃあまた明日。卵焼きにオムライス美味しかったよ」

「こちらこそありがとう。また明日」


静かに扉を閉めて波原は帰路についた。

涼風は自室に入りベットにダイブする。


「やっちゃった〜〜。恥ずかしすぎる〜‼︎」


枕に頭を埋めて、ぐるぐる回転する。


「人前で涙流したのいつぶりだろう?あ〜恥ずかしい」


深呼吸をして落ち着き、ベットに座る。


「それにしても波原優しかったな〜。何で優しくて、一緒にいて楽しいのに友達いないんだろう?」


足をバタバタさせて、さっき食べた料理を思い出す。


「本当に美味しかった。これが胃を掴まれるってやつかな?まぁ、女の私が掴まれているけど」


涼風はどうやって波原の手料理を食べるか真剣に考えた。


「とりあえずまた昼休みにつまみに行こうかな」


ベットから立ち上がり、リビングへ戻る。

机の上にはコントローラーが2つ並んで置かれている。


「波原ゲーム上手すぎでしょ。本当にゲーム好きなんだな〜。よし!今度こそ勝つ為に練習だ!」


ゲームを起動させてランクマッチへ入る。今度こそ波原に勝つ為に。


しかし今は5月の中旬。学生の天敵、テストが目の前まで迫ってきている。

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