第20話 自宅訪問(2)

「涼風、ここに1人で住んでるの?」

「そうだけど、どうかした?」


見上げると10階ほどのマンションが見える。1階は施錠されていて、ここに住んでいる人しか入れない。


涼風はエントランスで鍵を刺して、自動ドアを開ける。


「私の家は8階だよ」


エレベーターで8階まで上がる。家の前に到着し、ドアを開ける。


「お邪魔しま〜す」

「いらっしゃい、私の家へ」


玄関はには可愛らしいうさぎの置物と時計が置いてある。靴を揃えてリビングへ入る。


「好きな所に座りな〜」


涼風は吹き抜けのキッチンでお米の準備をして部屋に入っていった。波原は周りを見渡しながら2人用のソファーに座る。

リビングはシンプルな感じだった。白い食卓に、白い椅子が4つ。今、波原が座っているソファーの前にテーブルとその奥に中々大きいテレビが置かれている。


「これで一人暮らしなんて、涼風何者だ」


少ししたら、涼風が自室と思われる部屋からでてくる。


「お米炊けるまでゲームしよう!波原ゲーム好きでしょ!」


涼風の手元にはテレビゲーム機がある。テレビに接続して起動させる。


「何のゲームするの?」

「これしかないでしょ!」


色々なタイトルのキャラクターが戦う有名な格闘ゲームを始めた。


「なるほど、それで最高ランクは?」


このゲームにはランクシステムがあり、1キャラがごとにランクが適用される。『ブロンズ』『シルバー』『ゴールド』『ゴールド』『プラチナ』『ダイヤモンド』『レジェンド』の6個のランクがあり、ブロンズ〜ダイヤモンドには『1〜3』の段階がある。


「フフン、プラチナ3だよ驚いた?」


思っていた以上に高いランクに波原は驚く。


「あれ〜、もしかして負けてる?」


涼風は煽ってくるが、波原が焦る事はない。スマホを取り出し、とある画面を見せる。


「な、な、な、レジェンドだと・・・」

「まぁ、そう言う事」


涼風は澄ました表情をする波原を見る。すぐにテレビ画面を操作してキャラクター選択画面にする。

そして、自然な流れで波原が座っているソファーの隣に座る。座る時に涼風の髪がなびいて、いい匂いがする。


「ボコボコにしてやる」

「やれるものならやってみろ」


なるべく隣を意識せずに、テレビを見る。


波原は女性の剣士を選択して、涼風は同じタイトルの女性魔法使いを選択した。


戦いが始まった。波原は余裕で勝てると思っていたが、涼風は思った以上に上手で『プラチナ3』とは思えなかった。しかし、実力差はあり波原が勝った。


「3本先取だし!まだある」


2戦目が始まった。


「この!ふん!」


落ち着いていた1戦目とは違い、2戦目は行動1つ1つに力が籠っていた。体は少し揺れて、髪がなびく。その髪が波原の腕に触れて、視界に入る。何よりいい匂いが波原の集中を削ぐ。


「あれれ〜?コンボミスが多いよ〜」

「うるさい!誰のせいだよ」


結果は波原の勝利だったが、結構追い詰められた。


「ん〜〜‼︎惜しい〜!」

「あぶなっ」

「最高ランクどうした〜?危ないよ〜」

「いや、涼風の髪が腕に当たったり、いい匂いしたりしたんだよ!あ・・・」


波原はつい、思っていた事を全て口に出してしまう。涼風はニヤニヤしながら波原の顔を覗く。


「ふ〜ん。私の髪いい匂いするんだ〜」


涼風はコントローラーを太ももに置いて、髪を波原に向ける。


「家帰ってシャワー入ったからかな?もう一度匂ってみる?」


ここで嗅いでしまうのは良くない気がする。波原は何とか理性を保つ。


「いや、大丈夫」

「そう?いつでも匂っていいからね」

「涼風って僕とおる時だけなんか平気に恥ずかしい事言うな」

「そう?そんなつもりはないんだけど」


3戦目は波原が集中モードに入り圧勝した


「あ〜〜‼︎負けた〜」

「ふぅ〜」


涼風は悔しい顔を浮かべる。


「ずるいずるい〜!なんか縛り付けて〜」

「それじゃあ、2番手のキャラでやるか」

「因みにランクは?」

「ダイアモンド2」


自慢げに言う波原を見て涼風は顔が膨れる。


「ゲームしすぎ!」


涼風は先程より善戦したが、結果的には波原の勝利で終わる。


「結局1勝も出来なかった」


ちょうど良いタイミングで炊飯器が鳴る。お米が炊けたようだ。


「まぁ、本番はこれからだよ!」


コントローラーを置いて、キッチンへ向かう。

キッチンに引っ掛けてある水色のエプロンを付けて手に付けていたゴムで髪を結ぶ。


「波原はそこに座っていて私の手料理を振る舞ってあげる」

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