第18話 3人でお昼ご飯
翌日、4時間目の授業が入り昼休みになる。
昨日の天音祈凛のメチャクチャの提案で波原は急遽、「学年1可愛い」天音祈凛と「クラス1可愛い」涼風紬と昼食を共にする事になった。
クラスのドアが開いて早々に天音祈凛が教室に入ってくる。
「つむぎん!お昼食べよう!」
「祈凛、来るの早ない?」
「お腹空いたんだもん?それでなみひゃ・・・」
波原の名前を出そうとした天音祈凛の口を涼風が手で抑える。涼風の行動は正しく波原は助かった。仮にここで波原の名前が出て、昼ごはんを共にする事が分かったら
「ちょっと何するのつむぎん!」
「ごめん、何となく」
涼風は笑って誤魔化す。そして天音祈凛に小声で言う。
「波原くんは先に集合場所に行ってるから私達も早く行こう」
当然授業が終わって数分しか経っていない為、波原も教室にいる。しかし人の影になっていて天音祈凛からは見えない。
「そっかそれじゃあ行こう!」
天音祈凛は涼風の手を引っ張って教室を後にした。そして波原には1つ問題が起きた。
「僕も早く行かないと」
波原は先に集合場所に向かってる事になっている為彼女達より先に着いておかないといけない。すぐに教室を出て集合場所へ向かった。
波原は何とか彼女達より先に集合場所の『学園の森』に到着した。息を整えてベンチに座り、机に弁当を置く。少しして天音祈凛、涼風が到着した。
「波原くん!お待たせ〜!」
「いえ、そんなに待ってないですよ」
波原の向かいのベンチに天音祈凛が座り、斜めに涼風が座る。
「こんにちは波原くん」
「こんにちは涼風さん」
いつもとは違う堅苦しい挨拶を交え、昼食の時間がスタートした。
波原はここで1つ疑問を持った。昨日2人は食券を購入していた。だから昼食は食堂のはずだ。しかし今日は2人とも机に弁当を広げている。答えは天音祈凛の口からすぐに聞くことができた。
「昨日波原くん弁当だったから私達も弁当にしてみました〜。どう?私の弁当美味しそうでしょ」
丁寧に一つ一つ盛り付けられており、色とりどりの具材が入っている。バランスも考えられていた。
「自慢げに言ってるけどそれお母さんが作ったでしょ。祈凛あなた料理出来ないのに」
「ちょ、何でバラすの?」
「嘘はいけないよ」
仲良く2人で話していて波原は空気になりかけていた。しかしそれは涼風が許してくれない。
「波原くんはそれ自分で作っているのですか?」
「お母さん料理苦手だから家の料理は基本僕がしてます」
「波原くんすご〜!料理できる男の子はモテるよ!」
「残念ながら、そう言うのは縁のない話なんで」
確かに料理のできる男の子は多少モテるかもしれないが波原みたいな陰キャの場合は当てはまらないのかもしれない。
波原は次に涼風の弁当を見る。唐揚げやミートボール、春巻きなどの料理が入っている。一見普通の弁当だが、1つ疑問を持った。どれも冷凍食品に見えるのだ。朝から唐揚げを揚げる時間はないし、一人暮らしで唐揚げを作るのは考えにくい。ここで聞いてもいいのだが、よくない気がしたので、別の機会に聞く事にした。
「なんかつむぎんのお弁当、小学生の男の子のお弁当みたい」
「私の好きな食べ物を詰め込んだらこうなった」
手を合わせて各々の弁当を食べ始めた。少ししたら天音祈凛の視線が波原の弁当を見ている事に気づく?
「天音さん弁当になんか付いてます?」
「いや〜、波原くんの卵焼き美味しそうだな〜と思って」
「食べますか?」
「いいの!」
立ち上がって波原を見る。目が輝いてとても嬉しそうだ。美少女の真っ直ぐな視線に波原はつい視線を逸らす。
涼風からはジト目の冷たい視線が飛んでくる。
波原は弁当の箱を天音祈凛の方へ向ける。
「好きな卵焼きをどうぞ」
「それじゃあ真ん中の卵焼きを貰おうかな〜」
天音祈凛はお箸で真ん中の卵焼きを取り、食べる。
「う〜ん!美味しい〜!」
とても美味しそうに卵焼きを食べる。作った波原にとって嬉しい限りだ。
すると斜めからお箸がもう1つの卵焼きを取る。涼風だ。
「私も貰っていいですか?」
「もう貰ってしまってますけど」
涼風は許可云々の前に口に卵焼きを入れた。
「しっかり味付けしてあって美味しいですね」
「あ、ありがとうございます」
「お礼に春巻きをどうぞ」
涼風が弁当の箱を向けてくる。波原は春巻きを取り、口へ運んだ。やはり予想通りこの春巻きは冷凍食品だった。
「うん。とても美味しいです」
「それはよかったです」
すると次は正面の天音祈凛が弁当の箱を波原の方へ向ける。
「私のもなんかあげるよ〜何食べたい?」
弁当の中には生姜焼き、卵焼き、サラダ、が入っている。
「それじゃあ僕も卵焼きを貰おうかな」
卵焼きを貰い口へ運ぶ。波原が作った卵焼きより甘くて柔らかい。卵焼きには硬い派と柔らかい派がある。波原は硬い派だ。
「柔らかい卵焼きも美味しい。そしていい味付けですね」
「それはよかった〜」
そのまま昼休みは終わりを迎えた。誰かに見つからないか不安だったが、見つかることはなかった。
「僕、自販機寄って行くから先帰ってて下さい」
「オッケー、波原くんまた一緒に食べようね〜」
「では波原さん、授業に遅れないようにしてくださいね」
別れて僕は自販機に向かった。お金を入れて何買おうかなと思っていたら、後ろから来た人にコーラを買われてしまう。
「あの〜何してるの?」
「可愛い祈凛に鼻の下伸ばしてる波原が気に入らなかったから」
「いやいや、伸ばしてないから」
少し不機嫌な涼風はキャップを外してコーラを飲む。
「てか何でここにいるの?一緒に戻らなかったの?」
「トイレ行くって抜けてきた。波原に1発言ってやらないと思って」
キャップを閉めてコーラで波原の首を突く。
「あの〜、冷たいです」
「知ってるよ」
無言の圧で突いてくる涼風のコーラを掴む。そしたらコーラを離す。
「まぁ、このぐらいにしといてあげる」
そのまま教室の方へ戻って行く
「あの〜、このコーラは・・・」
「一口ありがとう美味しかったよ。あ!」
涼風は波原に近づいてきて耳元で囁く。
「間接キスだね。あ!でも2回目だから大丈夫だよね」
そう言って教室の方へ小走りしていった。
波原の顔は涼風にはバレてないがトマトのように赤くなっている。
「不意打ちだな〜」
波原は赤くなったほっぺにコーラを当てた。冷たさは余り感じなかった。
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