第17話 告白現場
四時間の授業を終えて昼休み。波原は校内で静かに昼ごはんを食べる所を探す。
今日は『学園の森』と言う所で食べる。昔はそれなりに綺麗に整備された所だったみたいだが、今はベンチと机があるただの校舎裏だ。
1人静かに朝から作った弁当を机に開ける。今日の弁当はハンバーグと卵焼き、ミートボールと言った波原の好きな食べ物の詰め合わせだ。
「いただきます」
小さな声で言う。好きなミートボールを1つ口に入れたところで、静寂は終わる。
「天音さん急に呼び出してごめん」
「大丈夫ですよ中野先輩。それで何の用事ですか?」
僕はベンチと机を盾にして身を隠す。奥には『学年1可愛い女の子』と呼ばれている天音祈凛と背も高いイケメンな先輩がいる。
人気のない所に呼び出しで用事となれば理由は1つだ。
「天音さん好きです。付き合ってください」
先輩が天音祈凛に告白をした。このような状況に遭遇するのは稀な為、波原も緊張する。
そして気づくと波原の隣には涼風がいる。
「祈凛、告白されてるね〜」
「うわっ!びっくりした」
「学校で喋るのは初めてだね。あ!卵焼きもらうね〜」
弁当の中の卵焼きを1つ摘むと一口で口へ運ぶ。
「うん、美味しい」
「何さらっと食べてんだよ」
「ちょっと待って祈凛が答え出すから」
顔の向きを正面に変えられ奥の2人を再び見る。
「告白はとても嬉しいんですけどすみません」
「そうか、まぁいきなり告白したらそうだよなぁ〜」
先輩は振られてしまったようだ。聞いた感じ先輩の一目惚れ見たいな感じなので仕方ないかもしれない。
「流石に振るか〜」
「まぁ、仕方ないでしょ」
他人だから客観的に見れるが当の本人になったらとても辛いと思う。
中野先輩はそのまま『学園の森』を後にした。
「あ!私、食堂で食券買って来てって言われてるんだった。それじゃあバイバイ」
「何やってるのつむぎん」
逃げようとした涼風を一声で止める。涼風はわざとらしい咳をして、学校での涼風に戻る。
「祈凛なんで振ったの?」
「流石に今日初めて知り合った先輩と付き合うのはないよ〜」
美人2人が波原の周りに集まり急に空気が変わり波原は空気になる。しかし天音祈凛はそれでもしっかりと聞いてくる。
「それでなんでここに波原くんがいるの?」
「え、あ、その僕ここで弁当食べてました。て言うか何で俺の名前を」
「同じ学年の人の名前ぐらい覚えているよ〜」
急に凄い発言が飛び出し、驚きを隠せない。
「凄すぎですね」
「そう?もっと褒めていいよ!」
「波原さん。祈凛を褒め過ぎたら調子乗りますよ」
涼風は基本天音祈凛以外には敬語を使う。涼風に敬語を使われてるのは波原にとって新鮮に感じた。
「友達の姿見えないけど波原くんもしかして1人で食べてるの?」
天音祈凛の純粋な質問が波原の痛いところを刺す。
「まぁ、はい。僕友達いないので」
波原は惨めで虚しくなる。
「そっか〜・・・あ!今日は無理だけどさ明日は私とつむぎんが一緒に食べてあげる」
「「へ?」」
急な提案に波原と涼風はビックリする。
「あの祈凛、波原くんに迷惑だから・・・」
「え?波原くん。私達と食べるの嫌?」
その聞き方はずるい。なんせとても断りにくい。
「いやじゃ・・・ないけど」
「だよね!つむぎんは?」
「私もいいけど・・・」
日本人は周りに流されやすい、自分の意思を持つ事が大事と聞いた事があるが見事に流されてしまった。
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