第14話 ハンバーグ

お目当ての店に着く。店員に案内されて店奥の4人席に着席する。


店内にはハンバーグを焼くジューシーな音が聞こえ、食欲を刺激する。


ラミネートされたメニュー表を見る。しかしメニュー表は1枚の為、向かいに座っている涼風は見る事が出来ない。


「先、見ていいよ」


波原はメニュー表を涼風に渡そうとするが拒否される。


「それじゃあ波原が見えないじゃん」


そう言いながら、席を立ち上がり波原の席の隣に座る。


「何してるの?」

「何って一緒にメニュー見ようかなって」


椅子を寄せ、メニューを見る。肩は数センチで触れ合いそうな距離にある。波原は涼風の距離感に疑問を感じつつメニューに目を通す。


全部国産牛を使用しており、ノーマルハンバーグからチーズインハンバーグ。大きさと、ソースもも選べてとても美味しそうだ。


「私は王道のノーマルハンバーグかな」

「それじゃあ僕はチーズインハンバーグ」


店員さんに注文して、席を立ち上がる。


「それじゃあ、サラダバー行こう!」


サラダバーゾーンに2人で向かい、取り皿とトングを取る。


コーンやレタス、輪切りきゅうりにポテトサラダなどがある。どれも美味しそうな為、波原はついつい沢山の種類を取ってしまう。


「そんなにとって大丈夫?」

「多分・・・大丈夫!そういう涼風こそ結構とってるじゃん」

「サラダは別腹!」

「何そのスイーツ別腹論的なやつ」


席に戻り少ししたらまずご飯が届いた。小さな釜にはいっており、写真映えしそうだ。


「本格的〜。更にこの白ごはんが食べ放題だなんて」

「米一粒一粒が輝いている。絶対うまいぞ」


釜炊きご飯を見てると次にメインのハンバーグが届いた。ファミレスのハンバーグなどと比べると小さいが、お箸で少し突くだけで肉汁が見える。


「めっちゃ美味しそ〜」

「高級ハンバーグ初めて食べる」


2人で手を合わせた後、お箸でハンバーグを一口サイズに分ける。中から肉汁があふれだしてくる。波原の場合は肉汁と共にチーズも顔を出す。特性ソースをかけて口へ運ぶ。ハンバーグは噛む前に溶けていくほど柔らかく、ソースとマッチングして今までにない革新的な味が口に充満する。


余りの美味しさに一口目を食べ終わるまで2人は無言のままだった。


「何これやばい!」

「こんな美味しいハンバーグ初めて食べた。このレベルのハンバーグ作りたい」


波原もハンバーグはたまに作るがここまで完璧に作れた事はない。


「流石にこのレベルって難しいんじゃない?」

「多分無理だけど、柔らかさぐらいは真似したい」

「試食は任せて!」


涼風は胸を叩いて自慢げに言う。


「食べたいだけだろ!まぁ、仮にその時が来たらお願いするよ」

「任されました」


そのまま食べていたら涼風が波原のハンバーグをじっとみつけてくる。


「どうした?」

「ねぇ?一口ちょうだい」

「それぐらいなら言えよ」


波原はハンバーグを新しく切り分けて涼風の皿に乗せる。


「ありがとう」


そう言って口に運ぶ。口の中でハンバーグと中のチーズ、ソースが絡み合い、今までに感じたことのない旨みが口の中に広がる。


「美味し〜」


涼風全体から幸福感が溢れて、満面の笑みだ。


ーねぇ、あれって涼風さん?

ーえ?でも学校と雰囲気違うくない?


チラッとカウンター席の方を見ると涼風や波原と同じ高校の制服を来た女子高生2人組がいる。

涼風もそれに気づいたらみたいだ。


「祈凛達のクラスの女子だね」


小さい声で波原に言う。


「なるほど、それって結構まずくない?」


まだ涼風本人とはバレてはいないものこのままだとバレるのも時間の問題だ。更に男と一緒にいるって事も問題だ。そして正体がほぼぼっちの波原とバレたら、学校の男子に何されるか分からないし涼風にも迷惑がかかる。


「ここは一芝居するしかないか。波原、私に合わせて」

「わ、わかった」


食い気味に承諾するがこれからする事は波原の想像を超えているものだった。

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