第12話 初めてのアニメショップ
19時頃、お目当てのアニメショップに辿り着いた。
ここの周辺はカードショップや大小様々なゲームセンター、美味しい料理店などが沢山並んでいて昼間は中々人通りが多い。しかし時間が遅い為人通りは昼間と比べるとまばらだ。
「おお〜、これが噂の。お!ガチャガチャがいっぱいだ〜」
涼風はアニメショップの入ったビルを見る。店前には何十台とガチャガチャが並んでいてここだけで財布の小銭を使い切りそうになる。1、2階がアニメショップで3階は中古ショップ、4階はカードショップで5階は書店。こう言うのが好きな人にとっては大喜びの場所だろう。
「こんな所でお金を使う訳には行かない。さっさと中に入るぞ」
そう言いながら波原は財布を取り出しガチャガチャの方へ吸い寄せられている。
「待って待って、言動と行動が一致してないよ」
涼風に袖を引っ張られて、足を止める。
「危ない危ない、本能に逆らえなかった」
「男の子ってガチャガチャ好きだよね〜。まぁ女の子もよく回すけど」
「へぇ〜、女の子もそう言うの好きなんだ?」
「最近はアイドルのキーホルダーとかもガチャガチャになるみたいでクラスの子がめっちゃ回したって聞いたよ」
「なるほど、最近はそう言うのもガチャガチャになるんだ」
ガチャガチャの新しい風潮に関心しながら、アニメショップへ入っていく。中に入ると人気アニメのOPテーマが店全体に流れていて至る所にに等身大パネルが置いてある。モニターにはアニメの予告PVが流れている。
「うわ〜圧巻だね〜」
「まぁ、その内慣れるよ」
「因みに波原は初めてここにきた時はいつ?」
「2年前ぐらいかな」
「2年前って中2じゃん!よく1人で来たね」
「おい、なぜ1人って決めつける!」
「だって波原が友達と何かしてる所見た事ないし」
波原は心に刺さる言葉を受け、心に大きいダメージを受ける。
「余計なお世話だ」
「まぁ、けど今はと・も・だ・ちの私がいるから安心してよ。」
そう言いながら頭をゆっくりと撫でる。波原は男の子だが、身長が男子高校生の平均より少し低い。更に涼風は女の子中では身長は高い方なので身長差は余りない。その為に糸も容易く頭を撫でてしまう。
先ほどの電車の中で見せた様子は嘘だったかのような年上の雰囲気に心臓の鼓動が早くなってしまう。
「やめて、周りの目線が痛い」
この時間帯でも少なからず人はいて周りの目線が自分の体に突き刺さる。これで体も心もボロボロだ。
「ありゃま、目立ち過ぎたか」
「誰のせいだ!早くラノベゾーン行くぞ」
波原は頭に乗ったままの綺麗で少し細めの手をどけて、ラノベゾーンへ足を動かす。その後を涼風は軽く笑いながら追いかけた。
「これはまた、圧巻だね」
自分の身長以上の高さの本棚の中に色々なラノベが詰め込まれている。ジャンルごとに分かれていてマイナーのジャンルからラブコメや異世界転生などの王道まで様々だ。
「そう言えば涼風が探してたラノベってなんだ?」
「ラブコメなんだけど、面白くてついつい全巻買ってしまったんだ。それで最新刊が最近出てね、特典にリーフレットがついているんだ」
涼風は本棚を指でなぞりながら目当ての本を探し始めた。そしてとある本の前で指が止まった。
「あったあった!これ」
本棚から本を取り出し、波原の方へ見せる。その本は波原も知っている人気ラノベだった。
「あ〜、それ面白いよな。最新刊出てたんだ」
「うーん、でもリーフレットが付いてないね。売り切れちゃったかな」
基本的に本の裏表紙に挟まっているものだが、見当たらない。
「リーフレット付きのその本欲しいか?」
「え?あるなら欲しいけど・・・」
「なら1つ約束だ。今から行く店の奥は行っては行けないし、見てもいけない。わかった?」
「は、はい」
初めて聞く、波原の真剣な言葉に涼風も真剣になってしまう。
「因みに理由を聞いても?」
「色々とまずいから」
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