第11話 待ち合わせと満員電車

「ちょっと早過ぎたか」


18時30分に集合のはずだが、18時15分に集合場所に着いてしまう。駅には仕事帰りのサラリーマンや学生などで混んでいる。


5分ほどスマホを使って時間をつぶした。

するとスマホが震えた。涼風からのメールだ。


(つむぎ)

『只今駅に着きました!』


(みなと)

僕も着いてるぞ。改札口の横にいる


(つむぎ)

りょーかい


1分もしないうちに涼風は波原をを見つけて駆け寄ってくる。


波原は涼風の格好に目をやる。いつもの学校での雰囲気とは違い、ストリート系で可愛いとカッコいいが混ざっている。


黒色のスカートに赤と黒の縞模様の服、その上から少し大きめの黒色の上着と白色の靴。


「めっちゃ雰囲気変わるね」

「まぁ、こう言うファッションはあまりしないからね見たのは波原が初めてだよ」


『初めて』と言うワードに少しドキッとしながら取り繕う。


「それじゃあ向かいますか」

「おお〜でアニメショップは何処に?」

「ここから駅で3駅」

「それじゃあ早速出発〜!」


改札にカードをかざして改札を通る。ホームに上がり電車に乗り込む。中は帰宅ラッシュという事でとても混んでいた。涼風と波原は扉近くになんとか入る事が出来た。


しかし問題がある。涼風と波原の位置がとても近いのだ。足と足は軽く触れ合っているし顔もすぐ先にある。波原は照れるのを隠すにも隠しきれない。


「ごめん、こんなに人が多いとは思ってなかった」

「まぁ、仕方ないよそれより大丈夫?場所変わろうか?」

「いや、大丈夫」


涼風の方は壁とくっついているだけなのでまだ楽なのだが、波原は後ろから押される。前に行こうとしても涼風とぶつかってしまう。だから後3駅吊り革一本が波原を支えている。


次の駅に到着したがここは余り使われない駅なので体勢が変わることはなかった。しかし次の駅は繁華街が近く乗り降りが激しい。一瞬楽になった気がしてもすぐに人が乗り込んで来る。さっきより体勢がしんどくなる。


電車が出発すると同時に電車が揺れる。その影響で後ろから強く押されて波原は体勢を崩してしまう。


その影響で波原は遂に吊り革で支えられなくなり、体制が崩れる。吊り革を持っていた手は涼風の顔の横に移動する。さっきより涼風と波原の距離が短くなる。言う所の『壁ドン』の体勢になってしまう。


「ごめん、大丈夫?すぐに戻るから」


波原は顔を赤く染めながら何とかして元の体勢に戻ろうとする。


「私は大丈夫だよ。でもこっちの大勢の方が楽でしょ?このままにしておきなよ」

「え?でも」

「こっちの方が波原の恥ずかしがっている姿がよく見えるね」


不意打ちの言葉に波原は顔が更に顔が赤くなる。涼風の顔を見ると涼風も顔が赤くなっている。


「涼風だってめっちゃ恥ずかしがってんじゃねーか」


やられてばかりは嫌なので恥ずかしいのは承知の上で言葉を返す。

すると涼風は少し右下に視線をやりながら


「だって、男の子とこんな近くになるの初めてだもん」


思っていない方向からのカウンターをくらい、両者頭から湯気がでる。


アナウンスが流れ、時期に目的地の駅が近い事を確認する。


「もうすぐ、目的地だね」

「そ、そうだな」


沈黙が流れ、目的地の駅にゆっくりと停車する。


波原の後ろの方の人が徐々に降りていく。ここら辺で1番大きい駅の為、電車の中はほとんどの人がいなくなる。


体勢を元に戻し、ゆっくりと電車を後にする。


外の涼しい風に触れ、体から熱が抜けていくのを感じる。


涼風の方を見ると大きく深呼吸をしている。終わるとこっちにクルッと振り返る。


「それじゃあ、アニメショップへ行こう」


いつもの涼風に戻っていた。それに安心し、波原は涼風の方へゆっくりと歩いて行った。

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