第10話 最強の助っ人との遭遇
「波原と涼風今日はもう上がっていいぞー」
「お疲れ様です」
「お疲れ様で〜す」
今日のバイトも何とか乗り切り、バックヤードへ入る。昼のデスタイムを超えると客は少なくなり、落ち着いて仕事をすることができた。
湊はすぐに更衣室に入って服を着替えた。着替え終わり更衣室から出ると、そこには初めて会う人がいた。
恐らく180cmぐらいの身長、お洒落な丸眼鏡、
この人が恐らく黒咲先輩が言っていた最強の助っ人だろう。
目線と目線が合い、少しの無言が流れる。皮肉な事に今の湊は顔が少し上を向いている。
そして先に相手の方の口が開く。
「あんた、もしかして新しいバイトの子?」
「はい、波原湊って言います。よろしくお願いします」
「お〜、こんな地味なラーメン屋に働きにきてくれてありがとな。俺の名前は、
「よろしくお願いします颯城先輩」
湊が名前を呼んだ瞬間颯城先輩の顔が雷が流れた様な顔をする。
「颯城先輩だ、と」
「もしかして、何か不味かったですか?」
「いや!それでいい!是非、颯城先輩と呼んでくれ!」
「わ、分かりました」
颯城先輩が幸せそうにしている。
「いや〜ここの連中みんな生意気だから全然俺の事先輩なんて呼ばないからさ〜。俺はお前の様な良いやつを待ち望んでいた!湊、今度ジュース奢ってやる」
「ありがとうございます颯城先輩」
湊がまた名前を呼ぶと先ほどと同様嬉しそうにしている。身長が高くて大人っぽい雰囲気だったので真面目な人かなと思っていたが、中身は高校生みたいだ。
「それじゃあ僕はこれで上がりますんで失礼します」
「おう!後はこの先輩に任せな」
そう言って男子更衣室へ入っていった。
入ったのと同時に女子更衣室のドアが開く。
「ありゃ、まだいたんだ」
「ちょうど颯城先輩と会って挨拶してた所」
「あ、『あきーな』ね。あの人うるさいでしょ」
「まぁ、うるさいけど良い人そうだよ」
「良い人なのは確かなんだけど元気過ぎて話すの大変」
あの元気よさと声量で話していたら30分も持たないだろう。
「それじゃあ改めて、6時30に駅前集合でね
遅刻は厳禁だから!」
「わかってるよ」
返事を返して、涼風は店を後にした。
「僕も早く帰って準備しないと」
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涼風は少し早足で歩き家へ帰った。鍵を開けて家へ入る。一人暮らしの為家には誰もいない。
薄暗い廊下を歩きリビングの電気をつける。
「どんな服で行こうかな?」
クローゼットの前に立ち、色々な服を合わせてみる。しかしどれもピンと来なくて時間が過ぎる。10分ほど悩んだ結果、出かける服を決める。
「イメージチェンジでストリート系で行こう」
普段、祈凛とかと遊ぶ時はこんな服を着ていけないが波原との場合は別だ。彼は本当の私を知っている為偽る必要がない。黒色のショルダーバックに必要なものを入れる。
「髪型も変えてみようかな?」
洗面台の前に立ち、色々な髪型を試す。涼風そこでふと疑問に思った。
「波原ってどんな髪型が好きなんだろう?」
涼風はその時何故波原の事を気にしたのか分からなかった。しかし他の事実に気づいてしまう。
「これって実質波原とデート⁉︎何で気づかなかったんだ私!恥ずかし過ぎる〜」
目の前にある鏡の前のせいで涼風の顔は真っ赤に染まっている。深呼吸をして落ち着く。
「編み込みのハーフアップにしよ」
髪型を決めて早速セットにとりかかった。終わった頃にはもう6時を回っている。
「やば!もう行かないと」
涼風はカバンを肩からかけ、急いで家を出る。そして早足で駅へと向かった。
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