第8話 ビデオ通話

初めてのバイトは恙無く終了した。店長、黒咲先輩、涼風に挨拶をして僕は急ぎ足で家を目指した。


今日は金曜日、明日明後日と学校は休みな為金曜日の夜はテンションが高くなってしまう。机に座りゲームに洒落込みたいところだが、まずは母の夜ご飯を作らなければならない。


冷蔵庫の中を確認しする。せっかくラーメン屋でバイトを始めたのでラーメンを作ろうと思ったが、1番重要の麺がない。なのでチャーハンを作ることにした。


自前のエプロンを付けて具材の準備をしていると、家で使っているタブレット端末が震えた。確認すると『紅音』から

メッセージが届いていた。


(紅音)

バイトお疲れ〜紅音で〜す。紬ちゃんから教 えてもらいました〜


文面が黒咲先輩の話方と一緒で容易に話してる姿が想像できる。


(みなと)

黒咲先輩お疲れ様です。なんか用ですか?


(紅音)

土曜日のバイトの話なんだけど〜

シフト入れそう?


(みなと)

まぁ、入れますけど何時間ぐらいですか?


(紅音)

土曜日12時頃〜17時ぐらい入れる?


(みなと)

わかりました。けど夜大変じゃないですか?


(紅音)

それが大丈夫なんだよ〜

夜は最強の助っ人が入るから


(みなと)

助っ人?


(紅音)

そっか、まだ湊くんは会った事ないもんね〜

入れ違いでシフト入るから帰る時にでも

会えるよ〜


(みなと)

その人、どんな人ですか?


聞いて見ると、既読は付いているが返信が返ってこない。すると急にタブレットが震え出した。黒崎先輩からの電話だ。


「もしも〜し、こちら紅音で〜す」


すぐにスピーカーモードにする。


「黒崎先輩急にどうしたんですか?」

「いや〜、文字打つのがめんどくさくなってさ」

「黒崎先輩らしいですね」


すると、タブレットの画面が切り替わり、ビデオ通話モードになる。


「やっほ〜。見えてる?」

「急にビデオ通話なんてしないでくださいよ」

「いや〜普段友達と話す時ビデオ通話だからさ〜癖でつい」


控えめに笑っている黒崎先輩がタブレットに写っている。風呂上がりの様で髪は少し濡れていて、いつでも寝れる様にパジャマ姿。正直こう言う女性の姿を初めてみた為、ドギマギしてしまう。黒崎先輩は気にしないのだろうか?


「で、その最強助っ人てどんな人なんですか?」

「確かね〜、私と違う大学なんだけど3年生だったはず、丸メガネつけてて身長も高いね。それであれは恐らくイケメンの部類に入ってる」

「なんか、至れり尽くせりですね」

「だよね〜、私にもあの身長を分けて欲しい」


そのまま15分バイトの事などについて話していた。時計に目をやると『10時45分』と表示されている。


「先輩、僕母の夜ご飯作らないと行けないのでそろそろ電話切っても大丈夫ですか?」

「そう言えば、湊くんエプロンつけてる〜。お母さんの夜ご飯まで作ってあげるなんてえらいね〜。それじゃあまた明日」

「お疲れ様で〜す」


電話を切り、一息つく。今の気持ちを一言で表すのならとても緊張した。大学生の先輩とビデオ通話、更に相手はパジャマ。なんで堂々とそんな事ができるのだろうか。僕の中で黒咲先輩は実は陽キャなんじゃないかという説がどんどん濃厚になっていく。


「湊〜、ただいま〜。母の帰還です!」

「お帰りお母さん。今から作るから先風呂にでも入っといて」

「あら、なら先お風呂入っているね〜」


荷物を置いた母はお風呂に向かった。

僕は服の袖を捲り、冷蔵庫から取り出した具材を使ってチャーハンを作る始めた。


そして、僕の頭の中は今はこの事しか考えてなかった。


『あ〜ゲームしたい』

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