第4話 初めてのアルバイト

「豚骨ラーメンと唐揚げ1人前ですね。それじゃあ失礼します」


黒咲先輩はお客さんから注文を受け取ると厨房の方へ戻ってくる。流石の黒咲先輩もお客さんの前では言葉使いが固くなっている。


「豚骨ラーメンと唐揚げだってさ〜」

「りょーかいです。波原くん、豚骨ラーメンいける?」

「頑張ります」


先ほど教えてもらった通りに豚骨ラーメンを作る。しかし1番の難所はやはり湯切りだった。

何とか湯切りを済ませ、盛り付けをし豚骨ラーメンを完成させる。


「涼風さん、豚骨ラーメンできました」

「お、中々上手じゃん!それじゃあ黒咲先輩に渡しといて〜後、この唐揚げも一緒にお願い」

「わかりました」


豚骨ラーメンと唐揚げをプレートの上に乗せ、黒崎先輩の所へ持っていく。


「黒崎先輩、豚骨ラーメンと唐揚げ持ってきました」

「オッケ〜。どう?これからもっと忙しくなるけどいけそう?」

「とりあえず頑張ります」

「そうだね。それじゃあファイト〜」


そう言いながら料理をお客さんに持って行く。

また厨房に戻り、次の注文に備えて麺を茹でる。


「どう初めてお客さんに料理を出した感想は?」

「上手にできたか心配です」

「大丈夫!なんせ私が教えたから!」


涼風紬が自信満々に言う。お陰で少し気持ちは楽になる。

時計を見るともう18時になっていた。


「お前ら、18時をすぎた!これからもっと忙しくなるぞ!」


店長の声が聞こえ、気持ちを入れ替える。

少ししたら仕事帰りのサラリーマン、学校帰りの学生などが来店してきた。


僕と涼風紬が通っている『星花高校』はここから離れた所にあるので友達や知り合いが来る事はなさそうだ。まぁ、僕に友達はいないのだが


「波原くん気合い入れていくよ!」

「お、おーー!」


ここからが本当に忙しかった。止まることのない注文を4人で捌く。ラーメンは店長も作っていた為何とかなったが、サイドメニューはとても大変そうだった。涼風紬は唐揚げを揚げつつ、餃子を焼いている。黒咲先輩がたまに手伝っているが注文と料理を出すので手一杯に見える。


黙々と閉店時間の22時までラーメンを作った。沢山ラーメンを作ったお陰でラーメンを作るのにはもう慣れることが出来た。


店長がドアにかかっている看板を裏返す。


「よし、今日の営業も終了だ!」

「疲れたよ〜」

「もう無理、溶けそう〜」


控え室に戻り、全員が椅子に座る。こんなに疲れたのは本当に久しぶりだった。


「休憩はいいが、早く帰れよ。もう22時なんだから」


「ちょっと休ませてよ」

「店長鬼畜過ぎ」


僕も流石に休憩したい。ずっと立っていたので足は棒になってる。伏せたらそのまま寝れそうだ。


「15分以内に帰れよ。怒られるの俺なんだからな」

「「は〜い」」


僕は先に更衣室に入って着替えた。ちょうど着替え終わると、店長が入ってきた。


「お、湊お疲れ!」

「店長、お疲れ様です」

「いきなりすまんな、こんなヘビーモードで」

「結構しんどかったです。しかしお陰でラーメンは完璧です」

「何でも実践でなれるのが1番の近道だからな!これからも頼むぞ」

「こちらこそよろしくお願いします」


更衣室を出るとさっきより溶けている黒咲先輩が机に伏せていた。


「お!おつかれ〜湊くん」

「おつかれ様です黒咲先輩」

「そういえば紬ちゃんから伝言預かってるよ。ちょっと待っててだってさ」

「わ、わかりました」

「それじゃあ私も着替えてくるよ」


立ち上がったと思えば、またゆっくりと椅子に座る。


「やばい、立ちくらみ」

「だ、大丈夫ですか?」

「うん、それじゃあ」


ゆっくりと黒咲先輩は女子更衣室に入っていった。


椅子に座って少し待っていると、女子更衣室の扉が開く。中からは、私服姿の涼風紬が出てきた。

少し大きめの水色のパーカーに黒っぽいデニムのズボン、そして帽子。全体的にボーイッシュなら雰囲気だ。


「ごめんまたせちゃったね」

「いや、大丈夫です」

「それじゃあ、帰り道少し一緒に歩かない?」

「え?」


アルバイトの話をすると思っていたので斜め上の予想もしない言葉に少しテンパった。


ここから涼風紬との新しい関係が始まる。

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