第6話 誕生日
地元の駅に着くと、夕は親に電話を掛ける。
話しを聞いてると、お母さんらしく、私の所に行くからご飯はいらないって言ってたので家に来るのは間違いない。
「温海ちゃんの家に行っていいけど、遅くても21時までには帰ってくるようにだって」
「わかったわ。では、行くわよ」
わたしは喜んでないように振舞うが、心の中では小躍りどころかダンスパーティーが繰り広げられるぐらい喜んでいる。
そのせいか、自然と足早になっていたが、それでも夕と歩く速度とあまり変わらないけど。
17時30分過に家に到着。
すでにお姉ちゃんが食事の用意をしているけど、伝えてないのに夕の分も用意していた。
「夕ちゃん、いらっしゃい。夕ちゃんの分も用意してあるわよ」
「成子さん、ありがとうございます」
「お姉ちゃん、夕が来る事が良くわかったね」
「温海ちゃんの事だから、夕ちゃんを誘うって思ってたわ」
流石、お姉ちゃん、私の事をわかっている。
「お姉ちゃん、ありがとう」
「温海がお礼なんて、珍しいわね」
「たまにはお礼を言わないとね」
たまにじゃなくて、頻繁にお礼は言ってるけど、これはお姉ちゃんの冗談。
冗談をいいながらお姉ちゃんも喜んでるが、このやり取りを見て夕は
「やっぱり、姉妹っていいな~」
と羨ましがっていた。
一人っ子の夕としては、こういうやり取りに憧れるらしい。
「夕は妹か弟が欲しいの?」
「ん-、妹が欲しいかも~」
夕は妹が欲しいのね。
「妹だと、お互いの服を交換したり、一緒にお風呂入ったりできるからね~」
「姉妹だからって、一緒にお風呂に入る訳じゃないわよ」
「え、そうなの~」
「小さい頃は入ってたけど、流石に今は入ってないわ」
「えー、温海ちゃんはお姉さんと一緒に入ってるイメージだったよ~」
夕は私にどんなイメージを抱いてたのかわかったが、私ってそんなイメージなのかな。
甘えん坊って言えば甘えん坊だけど、中学になってからはお風呂に一緒に入らなくなった。
ただ、時々、お姉ちゃんに無理一緒に入る事があるけど、これは夕には内緒。
2人でこんな話をしてると、お姉ちゃんが料理を運んできた。
お姉ちゃんが作ったのはローストチキン。
バイト先のレストランで習ったローストチキンなので、とってもおいしいのである。
「プロに教わったローストチキンだから、夕ちゃんも召し上がれ。あと、ケーキも店で出してるの物だからおいしいわよ」
「成子さん、ありがとうございます。温海ちゃんも誕生日おめでとう」
「ありがとう、夕羽」
夕と私はお姉ちゃんが作ってくれた料理をいただく。
お姉ちゃんのバイト先は地元だけじゃなく、遠くから食べに来るほどのレストラン。
なので、お姉ちゃんの料理はプロから教わった本格的な物が多く、とても美味しい。
今日もお姉ちゃんが料理を作ってくれるので、出来るだけ早く帰る予定であったけど
夕にお姉ちゃんの料理を食べさせてあげたいと思ってたけど、実現できてよかった。
「温海ちゃんはこんなおいしいお料理を食べられて、羨ましいな~」
「毎日これじゃないわよ。でも、お姉ちゃんの作る料理はどれもおいしいわ」
「あら、温海ちゃんが褒めてくれるなんてうれしいわ」
「いつもありがとうっていってるじゃないのよ」
「もちろん、わかってるわよ」
お姉ちゃんとのやり取りを見て夕は笑っているが、私とお姉ちゃんのやり取りが楽しいそうだ。
「ごちそうさまでした、おいしかったです」
「いえいえ、おそまつ様でした」
出された料理ともケーキも全部食べてお腹いっぱいだ。
ケーキは私の誕生日と言う事で、オーナーさんが作ってくれたそうだ。
「多いと思ったけど、美味しくて全部食べちゃった~」
「私もちょっと食べすぎちゃったかな」
お姉ちゃんの料理はおいしくてついつい食べ過ぎちゃう。
食事の後、今日あった事を話したけど下着を贈り合ったって言ったらお姉ちゃんは
「温海ちゃんって奥手なのに、下着を贈り合うなんて大胆ね」
って言われたけど、流れでこうなったと説明した。
ただ、お姉ちゃんと夕は下着で盛り上がったけど、同じバストサイズだから話があったようだ。
ただ、私は蚊帳の外だったけど・・・くっ。
時間を見ると、もうすぐ20時を過ぎていて、そろそろ夕は帰宅しないといけない。
「もうこんな時間だから帰らないと~」
「ちょっと遅かったかな?」
「21時までは帰らないといけないから、そろそろ行くね~」
「それじゃ、私が送って行くわ。いいよね、お姉ちゃん?」
「いいけど、帰りは1人でしょ?お姉ちゃんも一緒に行くわ」
「うん、わかった」
静かな町とはいえ、20時過ぎたら中学生の女の子1人は危ないと思うから、姉ちゃんと一緒の方が安心かな。
戸締りをして、夕を送って行く。
お姉ちゃんと夕は意外と話し合うようだけど、2人の性格は似てる所がある。
ただ、お姉ちゃんに夕がとられた感じがして、ちょっとむすっとする。
その様子をお姉ちゃんが気づいて
「あらあら、夕ちゃんを取られてたと思って妬いてるの?」
「ち、違うって・・・」
「焼きもち妬いてくれるなんて、照れちゃよ~」
そう言って、夕は手を組んできたが、胸が肘に当たってるけど、何この感触。
柔らかいけど、ちゃんと弾力があってすごい。
私は同性だから胸にあたっても合法だよね・・・って何考えてるんだ私。
ただ、夕は胸にあたってる事を気にしてないと言うか、もしかしてあててんのよってやつ?
いや、胸が大きいから偶然触れているだけだよねって思ってたら。
「ねえ、わたしのおっぱいどうかな?」
って聞いたけど、あててんのよの方だったが、聞いてくると思わず油断してたので
「弾力がすごい」
って言ってしまったが、夕は笑っているだけでこれはどう見たらいいのだろう。
気になるが、気づいたらもう夕の家に着いていた。
「もう着いちゃったね」
「そうだね・・・」
もう少し、夕と一緒に居たかったけど楽しいのと15分はあっという間だな。
「送ってくれてありがとね、温海さん。成子さんもありがとうございます」
「いえいえ、こちらも温海ちゃんと仲良くしてくれて、ありがとね」
そう言うと、お姉ちゃんは夕を抱きめし私に聞こえないように何か話してる。
「温海ちゃんはこんな子だけど、照れ隠しでああしてるだけで、本当は寂しがりやだからね」
「はい、わかっています」
「これからもよろしくね、夕ちゃん」
「はい」
何を話してるかわからないけど、きっと私の事だと思うのであえて何も聞かない。
「せっかくだから夕ちゃんのご両親に挨拶もしておこうかしら」
「そうですね、お待ちください」
夕の両親に挨拶と言うから緊張してしまったが、夕の母親は夕と同じくおっとりした方だった。
父親は夕の話を聞いてるとの違って、厳しそうな感じだったけど話すと優しい感じた。
そして、私に
「娘と一緒にいれてありがとうね」
って言われたけど、私も
「夕さんが仲良くなれて良かったです」
と答えた。
夕のご両親とお話をして、帰路に就く。
そういえば、友達・・・いえ、好きな人とすごせた誕生日は今回が初めてだったけど
好きな人と一緒に居るってとっても楽しいと言う事を、今日初めて私は知った。
お姉ちゃんも夕ちゃんと会えてよかったねって言ってけど、本当に夕に会えてよかったよ。
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