第5‐2話 初めてのプレゼント その2

 結局、私も夕も買う物が決まらなかった。

お金の問題よりも、品物の問題でお互い初めてのプレゼントなので

思い出に残る物が欲しいと思ったが、高ければいい訳でもないのでお互い悩んだ。


「プレゼントってこんなに難しかったのね」

「そうだね~、プレゼントって意外と難しいよね~」


お昼に入ったハンバーガ店でご飯を食べながらお互い考えるが、やはり思いつかない


「思い出に残るっていざ言われると、どんなものかわからないわ」

「わたしはなんでもいいんだけどね~」

「何でもいいって意外と難しいのよ。夕は何か欲しいものあるの?」

「ん~、あるけど、ちょっといいにくいかも~」


言いにくい物って何だろう?

もしかして高い物で、中学生が買うような物じゃないのかな?


「気にしなくていいわよ、言ってちょうだい」

「えーとね、下着が欲しいんだ~」

「え、いまなんて?」


私は意外な物だったから思わずききかえしていしまったが


「だから、ブラとショーツが欲しんだ~」


っと、夕は答えたが、まさかブラとショーツが欲しいなんて思わなかった。


「えーと、それはどういうことなの?」

「ちょっと驚くよね~。別にプレゼントで欲しい訳じゃないけど~、」


夕が言うには、急に胸が大きくなったから、ブラジャーを買い替えてるそうだ。


「今のサイズのブラは高いからそうそう買えないんだ~。お金はお母さんから貰ってるけど、買えても月1つなんだよね~」


そうか、急に大きくなると買い替えないといけないから、お金もかかるよね。


「それじゃ、私が買ってあげる」

「え~、別にいいよ~」

「お金はあるから大丈夫。それに、初めてのプレゼントが下着って思い出に残るし」

「ん~、温海ちゃんがそう言うなら~買ってもらおうかな~。わたしも温海ちゃんにプレゼントしてあげる~」

「わ、わたしはいいって・・・」

「え~、温海ちゃんは自分の好みの下着をプレゼントして、わたしに選ばせないのはずるいよ~」


いや、一言もわたしの好みの下着をプレゼントするって言ってないって。

それに、夕のサイズをみると、私のサイズは恥ずかしいし…。


「もしかして、小さいこと気にしてる~?」

「そ、そんな事ないわ」


本音はかなり気にしてるけどね…。


「それじゃ~、わたしが新しい下着を買ってあげるね~」

「う、うん、ありがとう…」


 なんか、勢いで下着を買ってあげるって言っちゃたけど、なし崩しい私の下着も夕が買う事になった。

中3女子が下着を贈り合うのってどうなの?

大人の女性でも送り合う事ってないと思うし…。

でも、思い出に残る物には変わりないし、他に思いつかないし、夕が買ってくれるならいいか…。

私は半ばあきらめて、夕と下着を買う事にした。


「ところで、温海ちゃん、今日はツインテールなんだ~」

「髪が伸びてきたから、ちょっとイメチェンでツインテールにしてみたいわ」

「うん、似合ってるよ~。まさにツンデレお嬢様って感じ~」

「今時、ツリ目でツインテールのツンデレなんて古いわ」

「だからこそいいんだよ~」


夕も私の部屋にある、お兄ちゃん達が買った漫画やラノベを読んでてるせいか

ちょっと古めのキャラ設定が気に入ってるみたい。


 以前から「温海ちゃんはちょっと前のツンデレキャラだね~」なんて言ってたけど

これじゃ本当にちょっと前のツンデレキャラだよね。

でも、実はあえてツインテールにして、キャラを作ってみたのは内緒。


「べ、別に狙ってやってる訳じゃないわ、たまたま私が本当にお嬢様なだけだし」


 これこそ古いテンプレみたいなツンデレを出すけど、これってツンデレなのかな?


「これじゃ、本当にちょっと前のツンデレキャラだよ~」


夕が笑いながらこういうってるから、いいみたい。


「夕も今日は何時もより大人ぽいけど、私は可愛い夕が好きよ」

「あ、ありがとね」


あれ、なんか夕が珍しく照れてるけど、目線を逸らしてるからこれは本当に照れてるわ。

それに、何気なく言ったけど、実は結構恥ずかしい事言ったのかな?

自分で言っておいて、自分で恥ずかしくなってどうするのよ。


「食べ終わったなら、そろそろ店へ行くわよ。18時には夕の家につかないといけないでしょ」

「うん、そうだね~。遅くなると電車も混むし~」


時間はもう14時近くなっているけど、帰る時間は1時間半程度見ないといけないからのんびりできないかな。

それに、混んでる電車はわたしも夕も困るから、出来るだけ早く帰りたい。


ハンバーガ店を出ると、下着専門店が近くにあるのでそこに入った。

そこはいろんな下着メーカーの品があるけど、夕は指定のメーカーがあるそうだ。


「え~と、このメーカーの下着を使ってるんだ~」


私は地元のショッピングモールやファストファッションのお店で安いのを買ってるけど

ちょっと値札を見たら…ブラだけで1万円ってなに?

しかも、下だけでも4600円するって何なの!?

つまり、上下で1万5000円もするものを付けてるって事!?


「ねえ、夕、普段からこんな高いの付けてるの?」

「まさか~普段はこんな高いの付けてないよ~」

「そうだよね」


普段はって言ったけど、普段じゃない時に着けるるって事?

もしかして、今日の下着もこんな高いのを着けてるって事なの?


「今日つけてるのは…」

「のは?」


わたしは思わず唾を飲むけど


「動き回るから、普段着けてるのだよ~」


そ、そうだね、こんな高いの着けてないよね。


「でも、温海ちゃん所に行くと、時々高いつけてる時もあるよ~」


え、そうなの?こんな高い下着着けてうちに来てるの?

知らなかったけど、夕ってやっぱり大人…。


「でも、こんな高いの買えないよね?」

「大丈夫、交通費やご飯代とか抜いても買えるよ」

「それじゃ、選ぶからお願い~。あと、サイズもちゃんと測ってもらうね~」


 夕は店員さんを呼ぶと、ちゃんとサイズを測ってもらった。

ただ、夕は高校生って言ってたけど、あと半年で高校生ではあるけどいいのかな?

でも、夕の場合、高校生って言ってもわからないか。


「アンダー70㎝、トップ90㎝ですから、Eカップですね」


 フィッティングルームの前で待っていると、夕のサイズが聞こえたけど…数字で聞くと本当に大きいな。

しかも、1年前までわたしとあまり変わらないサイズだったって言うし…。

急激に大きくなることはあるけど、何をして何を食べたらここまで大きくなるのかな。


「あの、お連れの方もサイズをお測りしますよ?」

「お願いします…」


 私のサイズも測るけど、アンダー61㎝、トップ72cmのAカップ。

ただ、これでもトップが1年前より1㎝大きくなってるわ。

というか、私のトップは夕のアンダーより2㎝大きいだけって思うとなんか複雑。


お互い、ほしい下着を選んでお会計をするけど、夕に買ってあげたのは上下で1万5000円する紫の上下セットを買ってあげたけど、この値段だと周った店のアクセサリーと値段が同じで、大人っぽい気がするけどこの際だから気にしないようにしよう。

夕も上下のセットを買ってくれたけど、私のは上下で4000円だから、2セット買ってくれたが、夕もお金は結構持って来たらしい。


「なんか、わたしの方が高い物貰って悪いかな~」

「別にいいわ。この方が思い出に残るし、夕の買ってきた下着なら学校に着けて行けそうだし」

「そうか~、普段からを身につけてるって思えばいいんだね~」

「夕が買った下着であって、夕を身につけてる訳じゃないからね」

「それはわかってるよ~ふふふ」


夕がふふふと笑うけど、何時もにこやかな夕がこんな風に笑うのは初めてかも。

もしかして、本当に喜んでる時の笑いたかな。


「わたしのは~ここぞって言う時に着けるからね~。早くその日が来ればいいけどね~」


ここぞっという日がどんな日かわからないけど、来るのは当分先かも。

それまでに夕のサイズが変わりませんように…。


 買い物を終えると、15時ほどなので帰るのにはちょうどいい時間かな。

駅へ向かい、すぐに来た電車に乗って帰路につく。


「夜は家族でお誕生日のお祝いをするの~?」

「両親は帰ってこれないと思うから、お姉ちゃんと2人で祝うわ」

「だったら、わたしも言ってもいいかな~」

「わたしはいいけど、夕はどうなの?」

「親に夕ちゃんの所に行くかもって言ってあるけど、電車を降りたらもう一度連絡して聞いてみるよ~」

「そうなんだ」


18時に帰るって言ってたけど、私の所に行くつもりでもあったんだ。

夕の家は実は門限がある訳じゃないけど、暗くなると恐いからって理由で早くかえってるとか。

夕が言うには「暗くなったらお化けが出るから~」って言ってたけど、夕ってお化けを信じてるんだ。

ただ、今日は私の誕生日を祝いたいから、今日は暗くなってもいいから私の家に行きたって言ってくれて、私としてはとてもうれしいな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る