ゲーム世界に現実のステータスが反映されるので、現実世界のダンジョンで必死にレベルアップして最強ゲーマーになります。―冒険者兼探索者で二つの世界を謳歌する―
第29話『やっぱ楽しい、ゲーム楽しすぎるだろ』
第29話『やっぱ楽しい、ゲーム楽しすぎるだろ』
転送が終了し、ついさっき見ていた外へ。
レンジャーウルフとの戦いを終えても、尚も今熱は冷めていない。
どうせなら、またハンターウルフが出現するだろうし八つ当たりでもするか――。
「――ふう」
目論み通りに出現してくれたハンターウルフ達と辺りに居たウルフ系を一掃した。
だがもやはここまでくると、胸の高鳴りを感じない。
ならもう一度ダンジョンへ入れば――まあそうだよな。
振り返り、先ほどまであったダンジョンの入り口が今は見えなくなっていた。
ダンジョン攻略は、クエストを受けてからじゃないと場所を視認することすらできない、と。
「まだまだ暴れ足りないが……明日も学校があることだし、とりあえず報告に行くか」
あ、ならせっかくだし、貯まりに貯まったスキルポイントの割り振りでも考えながら歩くか。
月明かりに照らされる道を歩きつつ、空中をぽんぽんっと指で叩いてステータス欄を開く。
そこからもう一操作して技能カテゴリー一覧を展開。
【技能カテゴリー】
『近接系』
・斬撃0
・打撃0
・
・
・反撃0
・強化0
割り振りポイント31
「さて、どうしたものか」
そもそもどこまでの数値まで上げたら、どんなスキルを取得できるのかがわからない。
なら、1回だけ――。
斬撃だけにスキルポイント30まで割り振られるように、『+』の箇所を長押しする。
確定を押さずにしていると、スキル欄とは別のウィンドウが展開して、取得予定スキル一覧というものが出現した。
残念ながら名前までは表示されていないが、アイコンになっていて、剣に風邪を纏ってるっぽいやつとか剣が速く動いているっぽいものが並んでいる。
その数、5個。
「30で5個か。あまり多いとはいえないが、まあこの上限値を観たら納得できる」
30という数値は少なくない、と思っていたのだが――実際に割り振ってみると、ゲージの3割程度しか進んでいない。
そんでもって最大値が記載されていないことから、今後のアップデートでどんどん増えることが予想される。
しかも、1つの項目だけに割り振るだけではかなり戦闘の幅を狭めてしまうから、できれば他の項目にも振りたいところ。
だって、『回避系』『遠隔系』『防御系』『支援系』『魔法系』『回復系』『技巧系』『特殊系』といった様々なカテゴリーがあるのだから。
「んー、どうするかな」
たぶん、数値を割り振りもあって別の要素も関与し来る。
というのも、斬撃に10・払撃に10を振ると更なるスキルを取得できるということだ。
だからこそ悩む。
「斬撃に10・払撃に5で『スルウ』を取得できるのか」
ならまずはここまで割り振ってっと。
もう残り16しかないってのか。
今更ながらに思うのが、このゲームってレベルの上限って決まっているのか?
スキルを思い通りに取りたいっていうのなら、300ぐらいは必要だと思うが……それとも、カンスト自体はもう少し前に設定してあって、足りないポイントの中でやりくりをしてくれって話かもしれない。
……。
「ははっ」
面白いじゃないか。
戦闘面ではなにも文句が出ないというだけではなく、難易度的にもちょうどよくできている。
街並みや景色だってそうだ。
だというのに、こうしてプレイヤーには自分のプレイスタイルを決めさせる権利を与えてくれている。
しかも容易にしセットができないからこそ、慎重に悩みながらやらなければならない。
――せっかくだし、試してみるか。
『クゥ……?』
今となっては、たぶん一撃で葬ることができるであろうウルフ種――『キュウウルフ』と『ウルフ』1体ずつがこちらに気づいた。
抜刀。
「スキルは2つ。経験値はたぶん1だろうが、まあいいか」
2体は、前足を曲げて牙をむき出しに威嚇している。
「こちらから行くか」
駆け出す。
『グルル』
『グウッ』
互いに駆け出した。
「はっ」
スキル【スリッシュ】を発動。
変化を体感はできないが、跳び込んでくる白い毛並みのキュウウルフへ剣を一直線に突き刺す。
視界に入って、やっとのこと剣が緑色に光っているのがわかった。
『――』
その一撃によって1体は消滅。
『キュ!』
もう1体は完全に放置していたせいで、目前。
いつもならここで回避を選択するのだが――スキル【スルウ】を発動。
すると、剣が青く光ったかと思うと、灰色のウルフの体に吸い寄せられていき攻撃の軌道を逸らしてくれた。
そして空中。
完全に無防備な姿を晒しているところへ、通常攻撃を加え――消滅。
「なるほど、こりゃあいいな」
【スリッシュ】は、剣での攻撃時が強攻撃になるもの。
【スルウ】は、【パリィ】の下位スキルに当たるものだが、攻撃の軌道を逸らすもの。
どちらも初期スキルっぽい感じだが、使い勝手はいい感じだった。
そして最後に、使用したスキルのアイコンが灰色に染まっている。
視線を合わせると、【スキルリタイム】と浮かび上がってきた。
難しい話ではない。
スキルの再使用可能までにかかる時間という意味だろう。
現に、最後の攻撃にスリッシュを使用しようとしたが無理だった。
限られたスキルの中で、スキルをどう使用するかを考え、スキルを使わない間の立ち回りも意識する必要がある――と。
「最高だろ。最高過ぎるだろ。やっぱ楽しい、ゲーム楽しすぎるだろ」
現実から逃げ出すようにのめり込んでいるゲームだっていうのに、どこまでも現実的という皮肉マシマシではあるが、そこがまた面白さを、緊張感を醸し出している。
楽しい、楽しすぎる。
熱を冷ますつもりだったのに、ダメなだこりゃ。
「今日はまだ眠れそうにないな」
俺はそう呟き、次のモンスターを探しに夜の森を駆け出した。
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