ゲーム世界に現実のステータスが反映されるので、現実世界のダンジョンで必死にレベルアップして最強ゲーマーになります。―冒険者兼探索者で二つの世界を謳歌する―
第25話『ダンジョンセンターって本当に便利だ』
第25話『ダンジョンセンターって本当に便利だ』
「今日はいろいろと助かったよ」
「俺も楽しませてもらったからいいよ」
俺達は探索者チュートリアルを終え、ダンジョンセンターにて休息をとっていた。
もう夜の時間帯になってしまっていて、周りにもチラホラと人が行き交うのを横目に、休憩スペースの一角にある丸テーブルに腰を下ろしている。
「ダンジョンセンターって、本当に便利だ」
「探索者になった特典としてある程度が無料で提供されるって、節約になるよね~」
本当に最低限ではあるが、食事や風呂、申請を行えば数日程度の宿泊も可能。
三食つきのホテルとして使用している人も中には居るとか居ないとか。
「鈴城って晩飯はどうするんだ?」
「ん~。暁くんがここで食べていくなら、私もそうする」
「えぇ……」
そんなことを急に言われても困る。
俺はできることならここで安く済ませたい。
しかし、家ではこの数倍も上手い料理が待っているだろうに、俺の節約術に付き合わせてしまうのは避けたいところ。
俺の心情を知ってか知らずか、鈴城は話を切り出してくれた。
「せっかくだし、今日はここで済ませようかな。もうお腹ペコペコで家まで我慢できそうにないし」
「そうと決まれば、早速注文しにいくか」
というわけで料理をもってきたんだが……。
「鈴城って、案外沢山食べるんだな」
「え、そうかな?」
だってさ、そんな細身な体をしていて、ラーメンに丼もの、サラダにデザートって……。
俺が最強に空腹な時ぐらいしか頼まないって、その量は。
「ささっ、食べよう」
「そうだな」
「いただきます」
鈴城は礼儀正しく、両手をしっかりと合わせ一礼。
頭を上げてから料理に視線を落としながら箸を右手に持つ。
「まずはこの香ばしい醤油の匂いがするラーメンからっ」
目をキラキラと輝かせ、ラーメンに「ふぅふぅふぅ」と息を吹きかけている。
さすがの俺もそれを見せられては我慢ができない。
それに他人の食事しているところをまじまじと見たいという変態願望もないしな。
「ここのソースカツ丼もボリューミーで美味いぞ」
俺達が「はふはふ」言いながら食べている料理は、無料ではない。
無料のやつは定食風で、ケチをつけるわけではないがこれらと比べると質素だ。
それでもバランスのよいラインナップにはなっているから、1人暮らしの人間にはありがたい話でしかない。
「そういえば、本当にモンスターの討伐数に応じてお給金が出るんだね」
「最初は俺も驚いたよ。いくら授業でやっているからといって、自動計算+クエスト報酬でお金がもらえるっていうのは、あまりにもできすぎているよな」
「でもそれができるのが、上限解放されたアシスタントAIの実力ってことなんだよね」
今日の給料は5000円。
いつもだと疲労感を残してシャワーを浴びているところだが、今日は鈴城と一緒に戦ったこともあって体が軽い。
2人が別々で討伐したモンスターもカウントしてくれるっていうのは、本当にできすぎている。
だが、時間は1人でやる時よりかかってしまったが。
それは鈴城が初心者なんだし仕方がない。
「暁くんって、これをずっとやってるんだよね」
「まあそうだな」
「今日は終わるまで5時間ぐらいかかっちゃったけど、1人の時だとどれぐらいで終わるの?」
「その日の気分にもよるな。補助具を使用する時は、大体1時間30分ぐらい。気楽にいきたいときは2時間30ぐらいってところか。まあ討伐するモンスターでかなり前後するが」
「うわあ凄いねそれ」
鈴城は初めて箸を付ける親子丼に「熱っ」と言って水が入ったグラスを口に運んでいる。
「普通にバイトをするよりはいい時給だが、給料が上がるにつれて危険度も増す」
「たしかに、なるほど」
あおさの味噌汁を口に運び、体に染み渡っていくのを感じる。
「そういえば、探索者協会ってどうやってお金を稼いでいるの? ゲームみたいにドロップ品とかがあったりするわけじゃないよね?」
「その疑問は至極真っ当だな。俺も最初は疑問に思っていたんだが、階層ボスのエリアにある宝石とか、俺達が戦っていた下の階層にある安全地帯にある資源が金の源らしい」
「ほえ~。なるほど。その資源を調達するためには探索者に強くなってもらわないといけない。だからこうして食事やいろいろなものを提供したり、アシスタントAIの制限解除だったり補助具の装備が義務付けられたりするわけだね」
「なんとも言えない話ではあるんだが、悪用をされたくはないからそう簡単にレベルは上げさせない。しかし、しっかりと強くなってほしい。ってな感じなのがな」
鈴城は、家出は絶対にそんな食べ方をしないだろ、という感じに目線をほとんどこちらに食べ物を口に運んでいる。
「なんだかお膳立てされてる感はあるよね」
「まあこちらとしては、リスクよりもリターンが大きくて助かってはいるんだが」
「つまり探索者というのはただの名目だけで、私達は国? に雇われている傭兵って感じなんだね」
「オブラートに包まないで言うならそういうことになるな」
鈴城は「ふぅーん」と、あまり嫌気を表に出しておらず。
俺だって、探索者だろうと傭兵だろうと「だからどうした」という気持ちしか出てこない。
死亡保険的なものはないが、ダンジョン内で負った怪我であれば例外なく無償で治療を受けられる。
しかもそれが国の最先端技術を優先的に受けられるというのだから、もはや文句は出てこない。
「ちなみになんだけど、鈴城は1週間にどれぐらいの頻度でダンジョンに潜るつもりなんだ?」
「そこら辺はまだ決めてないかな。慣れ始めても、週に2か3だと思う」
「それぐらいが妥当だな」
「ゲームもやりたいからね」
あ、そういえばそうだった。
「俺が言うのは違うかもしれないが、無理はせず、バランスよくだな」
「ふふっ、そうだね」
鈴城は、「それを暁くんが言うんだね」と言いたげな表情で少しだけ微笑んだ。
わかっているよ、言われなくなって。
「ごちそうさまでした」
「ごめん。もうちょっとで食べ終わるから」
「急がなくていいよ。ちょっとだけ考えたいことがあるし」
鈴城が急いでスープまで飲み干そうとしているのに引きつつも、少しだけ姿勢を崩して天井に視線を向ける。
ゲーム中毒者と揶揄されてもおかしくはない俺が、今はダンジョンに来ている割合の方が多い。
そんな非現実な日常に少しだけ笑えてしまう。
これが悪いことではないし、他人からすればだからどうしたって話ではあるが。
……そうだな。
だったら、現実世界でレベル上げもいいが……ゲームも楽しむとするか。
今日はまだまだ時間に余裕があるし。
「ごちそうさまでした」
「わーお」
「どうかした?」
「い、いやなんでもない」
鈴城は礼儀正しく両手を合わせて頭を下げた。
それ自体は素晴らしいことでなんらおかしい点はない。
でもさ、ほら。
上から下まで視線を動かして、普通の体型……っていうのはよくわからないが、男の俺からしたらか細い女子が親子丼と醤油ラーメンのセットを完食したんだよ?
少なくとも、俺が食べるとしたらもっと時間がかかっているし、なんならスープまでは飲み干せないかもしれない。
一食分しか対面していないからなんともいえないが、そんなに食べてその体系って、一体全体どうなっちゃってるのよ。
という疑問をつい抱いていしまった。
「じゃあ、片付けて帰るか」
「うんっ」
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