ゲーム世界に現実のステータスが反映されるので、現実世界のダンジョンで必死にレベルアップして最強ゲーマーになります。―冒険者兼探索者で二つの世界を謳歌する―
第23話『ではまずチュートリアルから始めよう』
第23話『ではまずチュートリアルから始めよう』
「ではまずチュートリアルから始めよう」
と、こちらはいたって真面目に話をしているんだが、どうしてにやにやと笑われているんだ。
一応ここ、ダンジョンの中なんだが。
「とってもありがたいんだけど、ちょっと心配しすぎじゃない?」
鈴城は右の人差し指を頬にあて、ちょこっと首を傾げた。
「だってさ、鈴城には危険な思いをしてほしくないしさ」
「その気持ちはとっても嬉しいんだけど、私だって探索者の本試験を合格してたんだよ」
「そりゃあそうだが……」
命にかかわることではないが、俺はゲームで出会ったミヤビさんの顔がどうしてもチラついてしまう。
どうせゲームなんだから気にするな、と言われたらそれまでなんだが……だが、俺は一度でも初心者を見捨てた。
この事実だけは場所が違くても変わることはない。
「でも、その厚意はありがたく受け取るよ。私的には、暁くんの貴重な時間を奪っちゃうんじゃないかっていう心配が先に立つんだけど」
「それに関しては問題ない。ここ数日はゲームよりダンジョンを優先的にしているからな」
「え……じゃあやっぱり、あの暁くんがそこまでするってことは、金銭的に問題があるってことだよね……任せて、100回分の食事ぐらいならなんとかしてあげられるから」
「おい、あのってなんだよ。それに100回分って簡単に賄える量じゃないからね!」
ツッコミどころ満載な鈴城に、俺はついまくし立てるように言葉を並べてしまった。
というのに、当の本人は「そうなの?」なんて言いながら首を傾げている。
金銭感覚が一般人の俺とは全く違うからなのか、それともそれほど料理の腕に自信でもあるというのか。
どちらにしても、その無自覚系主人公みたいなノリはやめてくれ。
そうでないと俺がツッコミキャラみたいになってしまう。
「とある事情からそうしているだけだ。お金に余裕があるかと問われるとそうではないとしか答えられないが、まあそんな感じだ」
「わかった。でも、ご飯に困るようなことがあれば、いつでも私を頼ってくれていいからね」
「その時はそうさせてもらうよ」
自分の娘がどこの馬の骨ともわからない男にご飯を振舞っていると知られたら、その後が怖くて仕方がない。
できるだけそうならないようにしないとな。
「話が逸れてしまったが、本題に入ろう。実際にモンスターと戦ったことはあるか?」
「まだないよ」
「なら、対面してからが本番だ。モンスターって言われるぐらいには、あいつらの見た目っていうのは地上で生息している生物とは違ってくる。ここら辺一体のモンスターは地上の生物と似ているが、奥に――下層に向かえば向かうほど物語に出てくるような形態となってくる」
「やっぱり、そこら辺って授業でやった通りなんだね」
この感じから察するに、モンスターという存在自体に嫌悪感等を抱いているわけではなさそうだ。
実際のところはわからないが、そうでなきゃ探索者にはなろうと思はないか。
「武器の方は今日が初めて?」
「うん。先生は冗談交じりにこの件で人は斬れないって言ってたけど、本当なの?」
「うわーっ、もしかしてそれって無精髭を生やしていた人?」
「そうだよ。暁くんも実践授業はあの先生だったの?」
「まあな。にしても、あの先生のジョークは妙にリアルだからなにも笑えないんだよな」
「ふふっ、そうだね」
「んで、この光剣で人は確かに斬ることができない。試しに――ほら」
さすがに初見では信じきれなかったようで、細目で背けている。
だが光剣は俺の腕を切断することなく通過。
「ほら」
「な、なるほど……ちなみにだけど、熱かったりは……?」
「熱も感じない。だから――ほは」
「えぇええええええええ!?」
俺は光剣の光が出ているところを加え込む。
そして、首をぐるりと回したりして動く。
俺は見えていないが、鈴城には俺の頭から、首の後ろから、お腹から出てくるというショッキング映像が繰り広げられているだろう。
「うわあっ。わかったから、わかったからそういうのはやめてー!」
「おっと、おふざけはここまでにしてっと。鈴城も抜刀してみてくれ」
「う、うん」
「そして剣先を俺に向けてくれ」
「こう?」
鈴城は両手で剣を構えてくれた。
俺はそれを光剣で弾く。
「えっ」
「ここら辺は授業でやらないからな。実戦練習の時は木剣だったから違和感しかないと思うが、どんな状況であれ光剣同士は干渉し合う。しかし人は斬ることはできない」
「矛盾しているように思えるけど、人間同士が命の奪い合いができない。でも、もしもの悪行を前にしたらそれを阻止できるようにしてある。ということなんだね」
「お、おう。さすがの鈴城って感じで理解力が高すぎて助かる」
鈴城は「そうかな?」なんて、澄ました顔をしてやがる。
普通の人間は、たったこれだけのやり取りだけじゃそんな答えには行き着かないんだよ。
「ちなみに、アシスタントAIの使い方は大丈夫そうか?」
「ん~どうだろ。使ってみてからかな?」
「まあ俺の予想だけだが、鈴城なら使いこなせるさ」
「索敵モードと戦闘補助モードを基本に考えればいいんだよね?」
「そうだな。後は実践の中で掛け声をかけながら戦えばいいし、連携……は、俺も初めてだから互いに探りながら戦おう」
「だね」
「じゃあ行くか」
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