第90話 最強かもしれない

 剣を振る。


 銀閃が悪魔の体を斬り裂いた。


 ぱっくりと右肩から左脇腹までが切断され、生命力の高い悪魔も呻き声を漏らしてその場に倒れる。


 戦闘時間、およそ一時間。


 途中、ちょろちょろと逃げ始めた悪魔を追いながら戦ったせいで、微妙に時間がかかってしまった。


 それでも最終的には俺が勝った。


 大量の血を流して悪魔が息絶える。




『レベルアップしました』

『ソロ攻略報酬、ステータスオール30』

『〝禁忌の召喚権〟を獲得しました』

『スキル【悪魔の心臓】を獲得しました』

『スキル【剣撃】がスキル【天剣】に進化しました』




 目の前にいくつものメッセージが表記される。


 その中には突っ込みどころのあるものが含まれていた。


 まずは、最初に気になった〝禁忌の召喚権〟。


 字面から察するに、たったいま倒した悪魔より強い個体を呼べるやつかな?


 システムは俺により強い敵と戦えと言っている。


「禁忌……ね。最初の召喚権はただの召喚権だったのに、今度は明らかにヤバめの文字が混ざってる件について」


 これは恐らく、いまの俺が試したら瞬殺されかねない不安を感じる。


 安易に相手のレベルを確かめようとはしないほうがいいな。


 興味を次の疑問に移す。


「……で、その次は新たなスキルか」


 獲得したのは、明らかに強化系のスキルと思われる〝悪魔の心臓〟。


 スキル名をタップしてみると、説明ウインドウに切り替わる。


———————————————————————

【悪魔の心臓】

悪魔から奪い取った魔力を生み出す核。

現在は所有者の心臓と同期しており、尋常ならざる魔力を与える。

INT+50

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「ぶはっ!?」


 説明文を見て吹き出した。


 なんだこれ。ヤバすぎるだろ。INT+50!? レベル10以上あげて貰えるポイントを全部突っ込むより高い上昇率だ。


 ここにきて俺の欠点となっている魔力問題が一気に解決した。


 だいぶチートスキルじゃないか、これ。


 おまけにもうひとつ今回はスキルを獲得している。


 ……いや、厳密には進化した。


 俺が使っていた剣撃が、新たな上位スキルっぽいものに。


 お次もスキル名をクリックして説明ウインドウを開く。


———————————————————————

【天剣】

物理攻撃系最上位スキル。

魔力を込めるほどに威力が上昇する。

———————————————————————


「ほーん……なるほどね」


 説明文は悪魔の心臓に比べれば少なかった。


 それだけに、シンプルに強いことがわかる。


 なぜなら説明文の最初に、と書いてあるからだ。


 剣撃だけでもレベルマックスまで上げたらなかなか使えた。


 ステータスを伸ばしたとはいえ、あの悪魔にだって通用していたくらいだ。


 その上位版ともなれば、魔力を込めれば一撃で悪魔を倒せるくらいの効果を発揮するのでは?


 たいへん期待しか生まれないスキルだった。


「さすがに強敵を用意しただけあって、討伐報酬はかなり豪華だな。おかげでかなり強くなったぞ」


 恐らくこの時点で俺は、勇者や騎士団長のエリカより強くなったと思われる。


 試しにステータス画面を開いてみると、


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名前:ネファリアス・テラ・アリウム

性別:男性

年齢:15歳

ギフト:システム

Lv:62

HP:7150

MP:3240

STR:120

VIT:100

AGI:100

INT:51(+50)

LUK:51

スキル:【硬化Lv10】【治癒Lv10】

【状態異常耐性Lv10】【危険察知Lv6】

【天剣Lv10】【火属性魔法Lv5】

【呪いLv7】【闇の手Lv10】【悪魔の心臓Lv10】

ステータスポイント:16

スキルポイント:49

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「うはぁ! ステータスはそれほど高くはないが、スキルの差でエリカにも勝てるな。恐ろしいくらい強くなった」


 一時的とはいえ、この世界で一番強いと思われる勇者やエリカより強くなった。


 よほどのバケモノが誕生していないかぎり、現状は俺がこの世界で一番強い人間かもしれない。


「よしよし……! ノートリアスへ向かう前に強くなれてよかった。これでもしも悪魔が出てきても十分に対処ができるだろう」


 仮に相手が俺より強くても、勇者やエリカがいれば対処できる。


 特に勇者は、悪魔に対してかなり有効なスキルを持っているはずだ。


 ようやく少しだけ不安が消えた。


 中でも、このタイミングでINTが爆上がりしたのが大きい。


 この上昇がなかったら、下手するとまだ勇者たちより弱いまである。


 それくらい、INTを活かせるほどのスキルを獲得したってことだ。


 ついでに中途半端だった魔法攻撃スキルも上げておこう。


 これで準備万端だ。ゆっくりとやるべきことを終わらせて宿舎のほうに戻る。

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