第89話 リベンジマッチ

 翌朝。


 部屋の中で目を覚ますと、不思議と気分がよかった。


 昨日エリカとたくさん話したおかげだろうか?


 妙に覚悟が決まっているというか、自然体で朝を迎えることができた。


「…………今日ならいけるかな」


 ベッドから降りる。


 新しい服に袖を通すと、顔を洗って訓練場へ向かった。


 他の騎士たちと一緒に木剣を振る。たまに同僚たちと刃を交えて体を温めていく。


 十分に訓練を積むと、そこで仲間たちとはお別れだ。


 昼食を食べて一時間。


 胃の中の食べ物がやや消化されたところで、人のいない外を目指す。


 今日は事前に外出許可をエリカに貰っていた。


 どんどん王都から離れていく。


 王都の近くで問題を起こすと、犯人が俺だと特定される可能性があるからだ。


 ではこれから俺はなにをするのか。




 ——リベンジである。




 前にアリウム男爵領で戦って勝てなかったあの悪魔ともう一度戦う。


 そのために王都から離れた森の中で足を止める。


「ここまで離れれば十分だろ……」


 きょろきょろと周りを見渡すと、生き物の気配自体がほとんどなかった。


 深呼吸を一回、システムに未だ刻まれる悪魔の召喚権を行使した。


 前方に魔法陣が現れる。


 バチバチと雷が怪しく光り、一体の悪魔が姿を見せた。


 前と寸分たがわぬ外見だ。よかった。これなら遠慮なくその横っ面を殴れる。


「覚悟しろよこの野郎。今度こそお前に勝つ……!」


 指を鳴らし、やる気まんまんの状態で剣を抜いた。


 同時に悪魔が顔を上げる。


 戦闘が始まった————。






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名前:ネファリアス・テラ・アリウム

性別:男性

年齢:15歳

ギフト:システム

Lv:57

HP:6900

MP:3190

STR:120

VIT:100

AGI:100

INT:51

LUK:51

スキル:【硬化Lv10】【治癒Lv10】

【状態異常耐性Lv10】【危険察知Lv6】

【剣撃Lv10】【火属性魔法Lv5】

【呪いLv7】【悪魔の手Lv10】

ステータスポイント:1

スキルポイント:34

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武器:【星屑の剣】

頭:【魔法の耳飾り】

頭:【死神のイヤリング】

腕:

手:

胴体:

背中:【闇のマント】

足:【人狼の脛当】

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 前に獲得した召喚権を使って悪魔を呼び出した。


 一度目の戦闘では一方的にボコボコにされたが、レベルもステータスも装備もスキルも伸ばし、増やしたいまなら勝てると思う。


 そう思って同時に俺と悪魔は地面を蹴った。


 戦闘が始まる。


 まずは素手の悪魔が拳を振るう。前は避けることすらまともにできなかった攻撃が、いまはよく見えた。


 かわした途端に、逆にこちらも拳を突き出す。


「おらぁっ!!」


 バキッ! という鈍い音がした。


 凄まじい衝撃を受けて悪魔が吹っ飛ぶ。


 俺の拳は悪魔の左頬を捉えた。木々をなぎ倒して後方に倒れる。


「どうだこの野郎。前のお返しだ」


 あースッキリする。気分爽快だ。


 殴られた悪魔はすぐに立ち上がって反撃を始めた。


 が、発動するはずだったスキルが消滅する。


 渦巻く漆黒……前に出したあの重力スキルかな?


 吸引力を発揮する前になぜか霧散した。


 それを見て俺はニヤリと笑う。


「おーおー、便利だなぁ……——〝呪い〟っていうのは」


 先ほど殴った拍子に呪いを付与しておいた。


 呪いの効果はいろいろあるが、その中でも特に厄介なのが


 一定時間スキルがまったく使えなくなるのだ。


 自分の体がおかしいことに気付いた悪魔が機械的に動く。スキルが使えないなら物理攻撃と言わんばかりに、再び俺の懐へ迫った。


 悪魔の拳と俺の剣がぶつかり合う。黒と銀色の軌跡が中空を彩る。


 力はそれなりに拮抗していた。ステータスをかなり伸ばしたのにありえないほど相手も強い。


 星屑の剣がなかったら危なかったな……。


 相手の拳をかわして、回転蹴りを繰り出す。悪魔の腹部にヒットしてボキボキと骨を砕いた。


 地面をバウンドして吹き飛ぶ悪魔を追って俺は走る。


 複数の火属性魔法を撃ち込みながら追い討ちをかけると、悪魔の体がわずかに黒いオーラを帯びた。


 ——スキルか?


 もう呪いの効果が切れたのかと思ったが、構わず進む。


 剣を構えて全力の一撃を放った。


「————〝剣撃〟」


 悪魔の拳と俺の剣がぶつかる。


 凄まじい衝撃を起こして悪魔がさらに後ろへ吹き飛んだ。スキルを使えばこちらのほうがステータスは上回る。


 このまま呪いとスキルを合わせてゴリ押ししていけば勝てるな。


 制限時間を気にしながらもさらに前へ進んだ。


 悪魔も立ち上がる。


 骨が折れて腕が切れているのに元気な奴だな。


———————————————————————

あとがき。


明日の木曜日、新作出すかもしれません!

今度は異世界ファンタジーです!

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