第66話 勇者と団長の用事

『レベルアップしました』

『ダンジョンクリアボーナスを与えます』

『ソロクリアボーナスを与えます』

『装備:死神のイヤリング』

『スキル:呪いLv7』




 体力をすべて失って、ボロボロの肉体を崩壊させるボス。


 それを見下ろすと、タイミングよくレベルアップ通知などが届いた。


「死神のイヤリングに、スキル……〝呪い〟?」


 なんだこのスキルは。前世のゲーム時代には見たこともないスキルだ。


 ……いや待てよ。字面から察するに、なんとなくどういうスキルかは解る。


 一応、ステータス画面からスキルの詳細を確認してみた。


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【スキル:呪い】

付与系のスキル。攻撃に状態異常〝呪い〟を付与し、対象にさまざまな弱体化を与える。

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「ふーん」


 やっぱりデバフスキルか。


 詳しいデバフの内容は、ステータスの低下や五感の弱体化。他にも継続ダメージに、HPやMPの上限低下。治癒能力の低下などなど。


 通常の状態異常よりかなり厄介だ。


 しかも俺の記憶が正しければ、たしか呪いは、状態異常のカテゴリーの中でもっとも強力。


 それだけに持ってるモンスターはほとんどいない。


 かなり貴重なスキルだ。


「……なんか、どんどん俺、敵キャラクターみたいになってないか? このまま闇堕ちとか嫌だぞ」


 明らかにこのスキルは敵が持つスキルだ。味方で使っていたものはいない。


 本来はストーリーを捻じ曲げてでもハッピーエンドを目指そうとしている俺が、こんな悪役みたいなスキルを授かるとは……。


 相手が死神だったからしょうがない、と思っておこう。


 逆に装備の〝死神のイヤリング〟は、これなんと〝呪いの無効化〟と〝不死の加護〟なるスキルが付いていた。


 これまでステータスが上がるだけのものかと思っていたが、このイヤリングは他の装備よりも強力に見える。


 困っていた呪いへの耐性はもちろん、不死の加護もメチャクチャ強力だ。


 前者はわかりやすいが、後者は、『一日に一度だけ、HPが0になったら復活する』というもの。


 ただしHPは1。復活早々にやられるケースも考えると、これはあくまで保険だな。


 それでも復活方法ができてかなり安心する。


「まあ、最終的には最高の結果だな。この先も装備の質が増えるならバッチコイだ。スキルもステータスも上げて、必ず勇者と一緒に魔王を倒す」


 その上で生き残れれば、確実なハッピーエンドが待っている。


 その理想への道が、今日、ハッキリと見えたような気がした。


 グッと拳を握り締め、装備やステータスを確認し終えると、ボスが復活しない内にさっさと地上を目指して帰還する。






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名前:ネファリアス・テラ・アリウム

性別:男性

年齢:15歳

ギフト:システム

Lv:54

HP:6750

MP:3100

STR:120

VIT:80

AGI:100

INT:51

LUK:51

スキル:【硬化Lv10】【治癒Lv10】

【状態異常耐性Lv10】【危険察知Lv6】

【剣撃Lv10】【火属性魔法Lv5】

【呪いLv7】

ステータスポイント:12

スキルポイント:25

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武器:【亡霊の剣】

頭:【魔法の耳飾り】

頭:【死神のイヤリング】

腕:

手:

胴体:

背中:【闇のマント】

足:【人狼の脛当】

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 ダンジョンを出て地上に戻る。


 先ほどまで薄暗い墓地みたいな雰囲気のダンジョンにいたからか、地上に出ると、肩の荷が一気に下りたような気がする。


 グッと背筋を伸ばし、サアァァァッ、と吹き抜ける風を感じながら王都へと向かった。


 正門をくぐり、まっすぐに自分が泊まっている宿を目指す。




 次はどんなダンジョンに挑もうかと考えていると、ふいに、俺の足が止まる。


 視線が吸い込まれるように前方の女性を捉え、「なぜこんな所に?」という疑問が生まれる。


 首をこてん、と倒して怪訝な表情を浮かべると、それに気付いた二人の男女が、手を振ってこちらに歩み寄る。




 片や、人類の希望と称される勇者イルゼと。


 片や、王国最強と称される第三騎士団の団長エリカだ。


 二人が俺のもとへやってくる。


「イルゼに、団長……? なんで俺が泊まってる宿の前にいるんですか」


 ちょっとだけ嫌な予感がする。


 しかし、団長エリカも勇者イルゼも表情は明るかった。とても犯罪者を前にしているとは思えない。


 どうやらミラの件ではないらしい?




「やあ、こんにちはネファリアスくん。今日はネファリアスくんに話があってここまで来たんだ」


「話?」


 俺の疑問に答えてくれたのは、金髪碧眼の勇者イルゼ。


 その隣に並ぶ団長エリカが、彼の言葉にこくりと頷いて言った。


「ええ。勇者様とわたしたち二人が、ね」

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