第63話 嘆きの王

「ぐうぅっっ!?」


 背中に火の球が直撃する。


 凄まじい衝撃と熱量に吹き飛ばされ、ぷすぷすと延焼ダメージを受けた。


 地面を転がりながらなんとか立ち上がると、周りを三体の巨人が囲んでいる。


「ハァ、ハァ、ハァ……クソッ。まだ全滅しないのかよ、コイツら」


 戦闘を始めてどれくらいの時間が経ったのか。


 もはや時間の感覚など忘れた。必死に拳を振るい、足を動かして走り続けた。


 その甲斐もあって、半数ほどのモンスターを葬り去ったはずなのに、依然、俺の前にはモンスターが視界を遮る。


 まさか、俺がモンスターを倒すより、復活する速度のほうが早いとか言わないよな?


 こちとら敵の攻撃を利用して戦っているというのに、それでは永遠に勝てやしない。


 脳裏に響くレベルアップ報告も無視して後ろへ飛んだ。


 先ほどまで立っていた場所に、巨人の一撃が打ち込まれる。


 状況は悪い。最悪と言えるほどのものではないが、それに近い。


 相手はほぼほぼ無尽蔵に湧いてくる上、こちらの体力もMPにも限界はある。


 精神的な疲労も無視できない。


 あとおよそ一時間か二時間。それ以上の戦闘は不可能だろう。


 地面を蹴って巨人へ肉薄。魔法使いの魔法を巨人にぶつけながらぶん殴って、脳内で最短の作戦を練りあげる。


 場合によっては撤退も視野に入れつつ、残り三十分間、俺はひたすらに拳を振るい続けた。




 ▼




 魔法使いのモンスターの首を刎ねる。


「ちょこまかと逃げやがって……」


 首が地面に落ちると、すぐにモンスターの動きは止まった。


 体感時間では一日くらい過ごしたような気がする。


 だが、実際にはまだダンジョンに入って数時間しか経っていない。


 それでもありえないほどの疲労を感じて、俺は地面に寝転がった。


 大の字だ。いま襲われたら確実に殺される自信がある。それでも、なんとか残り三十分で——、


「全員、倒したぞぉ……!」


 全てのモンスターを殲滅した。


 本当にギリギリだった。途中、討伐効率を上げるために、魔法攻撃を受けながらも攻撃した。


 おかげで回復しきれていない部分は未だに痛い。皮膚は焼けたし、思い切り殴られて骨は折れた。


 治癒スキルのおかげで重症は完治してるが、軽傷は残したまま。


 MPを温存したまま最後に剣を抜いて倒れたから、現在、そのままである。


「クソー……ゲームの頃はそこまで厄介なダンジョンじゃなかったはずなのに、現実になるとここまでダルいとは思わなかった」


 少し難易度を変えただけで、すでに序盤でボロボロなんだが?


 体力がわずかに回復したので、上体だけでも起こす。


 現在のステータスを確認すると、レベルが少しだけ上がっていた。


———————————————————————

名前:ネファリアス・テラ・アリウム

性別:男性

年齢:15歳

ギフト:システム

Lv:53

HP:6700

MP:3070

STR:120

VIT:80

AGI:100

INT:51

LUK:51

スキル:【硬化Lv10】【治癒Lv10】

【状態異常耐性Lv10】【危険察知Lv6】

【剣撃Lv5】

ステータスポイント:9

スキルポイント:62

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「ふはっ。あれだけ倒してたった三かよ」


 やっぱり節目である50を越えてから、要求される経験値の量が跳ね上がった。


 50以下だったら5以上は上がっていただろう。


 死ぬ気でモンスターを倒したまくったというのに、これでは微妙に報われない。


「……ま、いいか。着実に強くなっているなら」


 ステータス画面を閉じてひと息つく。


 予想以上に経験値の要求量は多いが、それでも強くなっているなら俺が剣を振るう理由になる。


 グッと拳を強く握りしめて、歩けるようになってから立ち上がる。


 このあと、大量に落ちてる素材を回収しないといけない。


 それもまた重労働だ。いくら〝インベントリ〟があってもめんどくさい。


 ぽりぽりと後頭部をかきながら、それでもお金のために魔石を拾う。


 急いで魔石を拾っても、それだけで三十分以上の時間が経過した。


 すべてのやるべき事が終わる頃には、遠くでモンスターの声が聞こえる。


 恐らくモンスターたちが復活したのだろう。


 下手に音を立てて再び戦闘にでもなれば、もはや逃げるしかない。


 あとはボスモンスターを見つけるべく、なるべくモンスターの目を避けながら奥へと進んだ。


 当然、何体かのモンスターと鉢合わせになりそうになったが、このダンジョン内部は死角が多い。


 ダンジョンのすべてのモンスターが復活したわけではないので、一度も見つかることなく最奥まで辿り着くことができた。




 ややひらけた場所に、ポツーンとひとつの塊が。


 これまでのモンスターと同じように、人間よりだいぶデカい、髑髏の死神がそこにはいた。


 このダンジョンのボス、————〝嘆きの王〟


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あとがき。


昨日と同じく!

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