第61話 巨人狩り

 マリーたちから自分の武勇伝? を聞かされること二時間。


 たっぷりオレンジ色の空が、わずかに紺色を帯びるまで話し尽くされた。


 恥ずかしいやら、居た堪れないやら、複雑な気持ちで彼女たちと別れると、自室のベッドに飛び込んで転がる。


「俺は一体なにを聞かされていたんだ……」


 我ながら妹のブラコンっぷりには脱帽する。


 俺も相当なシスコンだし、マリーのことを話し始めたら二時間では済まない自信があるが、それにしたって本人が聞くのが一番恥ずかしい。


 ちなみにマリーは、自分の話をされても特に羞恥心など感じない。


 嬉しいと頬を赤らめることはあっても、「もういいから止めてください」とは言わない。


 むしろもっと続けろというタイプだ。すごく強い。


 逆に俺は恥ずかしいタイプなので、およそ二時間も二人の少女たちから褒め称えられると、顔が真っ赤になって熱が出る。


「明日はダンジョンに潜りたいっていうのに……早く寝るか」


 このまま起きていると何度も先ほどの光景が脳裏を過ぎる。冷静じゃいられない。


 必死に瞼を閉じて意識を落とそうとした。


 明日いく予定のダンジョンは、これまでのダンジョンの中でもかなり強い部類に入る。


 油断はできなかった。




 ▼




 翌日。準備を済ませて街を出る。


 まっすぐ前世の記憶を頼りにダンジョンを目指した。


 しばらく走っていると、目当てのダンジョンの前に到着する。


 壁のそばにできた洞窟型のダンジョンだ。


 ダンジョンとしてはわりとポピュラーな部類に入るが、この先には異世界のような光景が広がっている。


 ゲームと現実とでどれだけ変わっているのか。少しだけ踊る心を抑えながら、奥へ進んだ。


 一応、出ないとは思うがモンスターに警戒しながら歩くと、やがてひらけたエリアに到達する。


 不自然な光に照らされた街が見えた。


「やっぱりゲームの頃と変わらないな……ここがダンジョンか」


 人の気配を感じさせない、薄暗い街。


 先ほどまで荒く削られた洞窟内を通っていたはずなのに、急に街中に出るとはおかしなものだ。


 それでも混乱しないのは、今世でのネファリアスの記憶を持っているからか。はたまた前世の記憶があるからか。


 とにかく、ボスを探して歩き出す。


 するとすぐにモンスターを発見した。


 建物並みにデカい人型のモンスターだ。身の丈ほどの巨大な武器を担ぎ、ゆっくりと辺りを歩いている。


 形こそ人間のそれだが、明らかに外見はモンスターだった。


 ホラー映画で出てくるエイリアンみたいな顔面を見ながら、俺は腰に下げた鞘から剣を抜く。


 そしてそのまま地面を蹴ると、奇襲まがいに斬りつける。




 キイィィィン————!!


 モンスターの背中へ振り落とした刃が、甲高い音を立てて弾かれた。


「くっ!」


 後ろに倒れ、一回転してから地面に着地する。


 相手も俺の存在に気付き、大きな叫び声をあげて武器を構える。


「やっぱり武器による攻撃は効かないか」


 これもまたゲームどおりの設定だ。


 目の前のモンスターは、ごりっごりの近接戦闘型のモンスター。正面からぶつかっても倒すのは難しい。


 なぜならコイツには、〝斬撃耐性〟とかいう厄介な能力があるからだ。


 ダメージをゼロにするものではないが、剣を使ってもあまり効果はない。


 普通なら魔法で倒すのがセオリーだが……。


「こういう時は拳にかぎる、よなぁ?」


 剣を鞘に納めてからポキポキと手を鳴らす。


 俺のステータス的に、素手でぶん殴ったほうが火力が出る。


 ほとんど筋力ステータスしか振ってないからな。


「ちょっと痛いけど我慢してくれよ。俺も本当はこんなことしたくないんだ」


 そう言って再び地面を蹴る。


 こちらに剣を振り下ろすモンスターの攻撃を避けて、攻撃判定の広い腹部を狙う。


 ヒット。


 鈍い音を立ててめり込んだ俺の拳が、わずかにモンスターを後ろに飛ばす。


「よしよし。これならちゃんと殺せそうだ」


 痛みに呻くモンスターのもとへ走り出して、何度も何度もモンスターを殴る。


 なまじ武器によるダメージ補正がないから、少しだけ倒すのに時間がかかった。


 しかし、STRをバカみたいに上げていたおかげで、問題なく倒すことには成功する。


 ズシン、と最後に轟音を立ててモンスターが倒れた。


 武器を手放し、二度と動くことはない。


「いっちょあがりっと。……で」


 ちらりと背後を見る。


 モンスターとの戦闘に時間をかけたせいで、すでに他のモンスターが俺の前にあらわれていた。


 このダンジョンの特徴のひとつでもある。


 モンスター同士の行動範囲が広すぎて、戦闘をすると他のモンスターが普通に駆けつけてくるのだ。




 連戦上等。


 ふわりと浮かんだまま移動する、ローブをまとった魔術師風のモンスターを前に、今度は剣を抜いて対応する。


「第二ラウンドだな。とことんやろうか」











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名前:ネファリアス・テラ・アリウム

性別:男性

年齢:15歳

ギフト:システム

Lv:50

HP:6550

MP:2980

STR:120

VIT:80

AGI:100

INT:51

LUK:51

スキル:【硬化Lv10】【治癒Lv10】

【状態異常耐性Lv10】【危険察知Lv6】

【剣撃Lv5】【火属性魔法Lv5】

ステータスポイント:0

スキルポイント:53

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あとがき。


近況ノートを投稿しました。

よかったら目を通してもらえると嬉しいです!

内容は今後の活動に関してです!

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