第57話 ダンジョンは止められない
王都の第三騎士団所属の団長、エリカ・クルス・フォーマルハウトと出会った翌日。
俺は着替えと準備を済ませるなり外へ出かけた。
これからエリスに会いに行く、——わけではなく、残り少ない時間を活かしたダンジョン攻略だ。
高難易度のダンジョンでなければ、一日に二箇所の攻略ができるものの、今日は一つに留めておく。
理由は単純だ。
夕方前に街に戻って、エリカから騎士団入団の話を聞くため。
俺がアリウム男爵家から出奔した場合、王都の、それも騎士団に所属できるのはかなり旨みがある。
まずエリカの第三騎士団っていうのが素晴らしい。
第三騎士団は、ゲーム本編において勇者と共に魔王復活までのあいだ、さまざまな調査や魔物の討伐を行う。
要するに、ヒロインのエリカだけじゃない。
勇者のそばにもいられるのだ。
ストーリーの進行が勇者を中心に回るなら、第三騎士団に所属していれば自ずと俺も、そのシナリオに巻き込まれる。
あとは前世の知識を使って他のヒロインやサブヒロイン、救える命を拾っていけばいい。
だからエリカの話に乗ろうと思っている。
無論、こちらからも条件は出すが、実力を見せれば十分に受け入れられるだろう。
エリカは優秀な人材を集めるのが趣味だ。
すでに彼女の足元にかかっている俺の力を見れば、嫌だなんだと首を左右に振ることはない……と思いたい。
若干不安になりながらも、俺は目的地であるダンジョンの前に到着する。
なるべく急いで、それでいて慎重に攻略を始めた。
▼
『レベルアップしました』
『ダンジョンクリアボーナスを与えます』
『ソロクリア報酬を与えます』
『装備:魔法の耳飾』
『スキル:火属性魔法Lv5』
———————————————————————
名前:ネファリアス・テラ・アリウム
性別:男性
年齢:15歳
ギフト:システム
Lv:51
HP:6100
MP:3010
STR:100
VIT:70
AGI:100
INT:51
LUK:51
スキル:【硬化Lv10】【治癒Lv10】
【状態異常耐性Lv10】【危険察知Lv6】
【剣撃Lv5】【火属性魔法Lv5】
ステータスポイント:33
スキルポイント:56
———————————————————————
「よし……なんとか無事に攻略できたな」
ダンジョンに潜ること数時間。
なかなかどうして悪くないタイムを刻むことができた。
ローブをまとい、杖を手にしていたはずの魔物が、徐々に霧のように消えていく姿を見ながら、ふう、と息を漏らす。
「けどレベルは一つだけか……地道だな」
道中の雑魚も優先的に倒してはみたが、それでもそこそこのダンジョンでは経験値の獲得量が低いと感じ始めた。
恐らくもう一つの上のランクに挑む頃合いだろう。
エリカとの話が終わったら、王都に滞在している最中に一度は挑みたいものだ。
獲得した装備をきっちりと身に付け、俺は早々にダンジョンから出る。
まっすぐに王都を目指し、第三騎士団の駐屯所に向かった。
▼
第三騎士団の駐屯所は、王宮のそばにある北の区域にあった。
あまり立ち入ることのない場所に、わずかな緊張を巡らせながらも進むと、やがて、広々とした施設が見えてくる。
入り口を監視する騎士二人に、
「すみません。エリカ・クルス・フォーマルハウト団長と話をしたいのですが」
と用件を伝えたところ、
「団長と……? 君はだれかな?」
と返されたので、ひとまず身分くらいは証明しておく。
懐から家紋の入った道具を取り出して見せた。
「これは……もしかして貴族様!? す、すみません、無礼な態度を」
「いえいえ。それよりエリカさんに俺の外見情報を教えて、訪ねてきたって言えば通じると思います」
「畏まりました。少々お待ちください」
入り口の正門を守っていた騎士の一人が、急いで駐屯所の中へ走る。
時間を無駄にしたくないと、冒険者風の格好のままで来たのがまずかったな。
たしかにこれじゃあ貴族には見えない。
しばらくすると騎士の一人が帰ってくる。
そばにはエリカの姿はなかった。
「お待たせしました。エリカ団長に窺ったところ、団長の部屋に通すように指示されたので、お手数ですが、そちらまで移動してもらってもよろしいでしょうか」
「わかりました。案内をお願いします」
よかった。
しっかりと彼女には伝わっているらしい。
再び歩き出した騎士の背中を追いかけ、駐屯所の中に入る。
きょろきょろともの珍しい光景を視界に捉えながら数分。
すぐに、エリカのいる団長の部屋の前に到着する。
ノックのあと、扉が開かれ入室した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます