第54話 久しぶりのダンジョン攻略
王都近隣にあるダンジョンのそばへとやって来た。
前世では、ゲームの主人公イルゼが攻略できるダンジョンだ。
獣型のモンスターが多く、ボスも狼男みたいな個体が待ち受けていた気がする。
「今回のボスからはなにが手に入るかな」
ポキポキと首や腰を鳴らして準備を済ませると、ゆっくりとダンジョン奥地へ続く階段を下りる。
これから挑む予定のダンジョンの内部構造は、頭に入っている。
出てくるモンスターの行動パターンなどはすべて覚えている、とは言えないが、少なくとも印象に残ったボスの動きは問題ない。
それで言うと、道中の雑魚なんて無視してもいい。
すでに俺のレベルは〝40〟を超えた。
いまさら雑魚をいくら倒しても、そこまで経験値は稼げないだろう。
ではなぜ、そんなダンジョンの中へ足を踏み入れたのか。
理由は単純だ。
今回は、経験値よりボスを倒した際に入手できる報酬が目当てである。
どういう理屈でそうなるのかは不明だが、俺の持つ〝ギフト〟、システムは、従来のギフトの性能をはるかに超えている。
だれがそんな恩恵を与えているのか、なぜ俺だけが特別なのか。
そんな細かい部分はどうでもいいが、少なくともどんなに攻略難易度の低いダンジョンを突破しても報酬は貰える。
報酬が貰えるのなら、時間的効率を考えて、踏破しようと考えるのは当然だろう?
アリウム男爵領にあるダンジョンのボス、デュラハンを倒すことで入手できる武器ですら、装備した途端にSTRを15も上げてくれるのだ。
今後どんな装備が入手できるのかわからない以上、ひたすらダンジョンを攻略して装備を集めるべきだと俺は思う。
「——ぐるるるっ」
「おーおー、やる気まんまんだな」
しばらくダンジョン内部を歩いていると、やたら醜い外見をした犬だか狼だか猫だかわからんモンスターが出てくる。
獣型のモンスターは、特殊な能力を持たない代わりに身体能力が高い。
高いと言っても、いまの俺なら余裕で倒せる程度の雑魚だが、ゲームだと少しだけ手こずったのを覚えている。
なんせ勇者イルゼは王都からのスタートだ。
アリウム男爵領と違って、さまざまなダンジョンが周りを囲んでいる。
ゲーム序盤だと、いくらダンジョンがあってもレベル上げは厳しかったが、リアルになるとなんと羨ましいことか。
こうして暇な時間は、ダンジョンでのレベリングに使えるのだから、都会はお得である。
「——があっ!」
そうこう考えている内に、我慢できなかったモンスターが俺の懐に突っ込んでくる。
スピードは速い。が、動きが単調すぎる。
自分よりステータスの高い相手にまっすぐタックルをかますなど、「避けて反撃してください」と言ってるようなものだ。
相手の声なき言葉に答えるように、牙を剥くモンスターの攻撃を半身になって避けると、剣を抜いて振り上げた。
抵抗を感じない。
デュラハンから獲得したドロップ品、〝亡霊の剣〟の切っ先が、モンスターの首元を捉えて切断する。
鈍い音を立てて地面に転がるモンスターは、やがて全身を煙のように散らしてどこかへ消えた。
落ちた魔石を拾い、〝インベントリ〟に入れてさらに先を目指す。
ダンジョンの真骨頂は、序盤の遭遇戦にこそある。
ゲームだとまばらに、一定の範囲内をただひたすら往復するだけの設定だったが、それがリアルになると——。
「——————!!」
「ま、来るよね」
遠くから、洞窟の壁を何度も反響しながら遠吠えが聞こえてくる。
リアルになったダンジョンは、一度でも戦闘を行うと、そこからワラワラとモンスターがあらわれる。
戦闘音を聞きつけてやってくるのだ。
その数は一匹や二匹ではない。五匹とか十匹とか普通に出てくる。
しかもその全員が、血眼になって俺を殺そうとしてくるのだから、このひりついた空気もまたたまらない。
最後に戦ったのは、貴族子息の邸宅を襲撃したとき。
その前は、さらに遡って王都に来る前の道中で、盗賊を殺したとき以来だ。
溜まりに溜まったフラストレーションを、すべて彼らにぶつけることにする。
「さて……悪いが、一気に攻略するぞ?」
▼
『レベルアップしました』
『レベルアップしました』
『ダンジョンクリアボーナスを与えます』
『ソロクリア報酬を与えます』
『装備:人狼の脛当』
『スキル:危険察知Lv6』
———————————————————————
名前:ネファリアス・テラ・アリウム
性別:男性
年齢:15歳
ギフト:システム
Lv:49
HP:6000
MP:2950
STR:100
VIT:70
AGI:100
INT:51
LUK:51
スキル:【硬化Lv10】【治癒Lv10】
【状態異常耐性Lv10】【危険察知Lv6】
ステータスポイント:27
スキルポイント:50
———————————————————————
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます