第14話 いやあぁああああ‼︎

 白塗りの荘厳な建物の中。


 ステンドグラスから差し込む日差しを見上げて、ひとりの少女が呟いた。


「……なるほど。とうとう世界は動き出すのですね。神がそれを望んでいる、と」


 祈るように両手を合わせる。


 膝を突き、頭を垂れた。


 後ろに並んだ何人もの聖職者たちが、同じように膝を折って祈りを捧げる。


 しばらくすると、少女が再び顔をあげた。


 そして、どこか哀しげに告げる。




「【神託】は下りました。これより話すことを国王陛下にお伝えください。世界が——混沌に包まれます」




 ▼




「いててて……。【治癒】スキルで傷は治せても、これだけ派手に暴れたあとだとさすがにな」


 ボロボロになった軽鎧を外して立ち上がる。


 胸当てがありえない凹み方をしていた。もう修理に出すとかいうレベルじゃない。


 それでいうと、【治癒】スキルで治しきれなかった片腕と片足がヤバすぎる。


 剣を杖代わりにしてやっと立てたくらいだ。他の魔物に来られたら死ぬんじゃないか、俺?


 自分の最悪な未来を想像して、慌てて【スキルリスト】を開いた。


 もうポイント云々とか言ってる場合じゃねぇ。


 急いで【治癒】スキルのレベルを上げることにした。


 大量のポイントをスキルレベルの強化に突っ込む。


———————————————————————

名前:ネファリアス・テラ・アリウム

性別:男性

年齢:15歳

ギフト:【システム】

Lv:27

HP:4400

MP:1990

STR:70

VIT:60

AGI:50

INT:41

LUK:41

スキル:【硬化Lv5】【治癒Lv10】

ステータスポイント:21

スキルポイント:23

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「よし。これならさすがに……」


 骨も治るかな?


 試しにスキルを発動してみた。


「……お? おぉおおおあぁああああ——!?」


 およそ人間の体が出していいとは思えない音が響く。次いで、これまでに体験したことのない激痛が俺を襲った。


 思わずその場に倒れて地面を転がる。


 あまりにもみっともない真似だが、それを1分ほど続けると……。


「——あ」


 折れたはずの腕と足が、動くようになっていた。


「ま、マジか……マジで治ったぞおい」


 治らなかったらポイントの無駄遣いになっていたとはいえ、実際に治るとそれはそれで怖い。


 だが、痛みを耐えただけあるな。すっかり全身のダメージがなくなった。


 服はボロボロで血まみれだけど。


 マリーに見られたら完治しててもなにがあったのか一発でバレるな……。


 帰る途中で衣服の購入も検討しつつ、ひとまず転がっているマンティコアの死体を【アイテムボックス】に収納した。


 剣を鞘におさめ、今度こそ俺は街に向かって歩き出す。


 まさか盗賊だけではなく、大型の魔物と戦うことになるとは思わなかった。


 レベルとステータスは格段に上がったが、ここ2週間以内に二度も死に掛けた。まったくもって笑えない話である。




 あー……もしもバレた時は、マリーと両親への言い訳をどうしよう。


 確実に長時間の説教コースが待っている。たぶん、なに言っても怒られる。


 早々に俺は諦めることにした。


 それに、まだやるべきことは残ってる。盗賊をすべて狩り終わらないかぎり、一息すらつけないのだ。


 それでも、今だけは……マンティコアに勝利したことを噛み締める。

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