第12話 決着
ようやく俺の覚悟が決まる。
「——行くぞ」
誰に告げるでもなく、小さく呟いた。
その瞬間、今度は俺から盗賊たちに肉薄する。
初めて先手を奪われて、4人の男たちはわずかな動揺を見せた。
内側に入ったことで下手に大振りはできなくなる。仲間に当たる危険性があるから。
その躊躇を逆手に、咄嗟にナイフを向けた小柄な男の腕を掴む。
「小回りの利くお前は邪魔だ」
こちら側へ男を引っ張り、問答無用で首を斬る。
声を出す暇すらなく、男のひとりが絶命した。
くるくると回ってから生首が地面に落ちる。
「こ、コイツ——!?」
仲間の死による不安と恐怖が、さらに男たちの体に重石を付けた。
反応の遅れたもうひとりの男へ迫る。辛うじてカトラスを振ろうとするが、時すでに遅し。
目の前まで迫れば剣のリーチは邪魔になる。それに、斬るより突くほうが速い。
正確に俺の剣の切っ先が男の喉元を捉え、
「——かはっ」
空気を吐く音が聞こえた。
男がもうひとり、剣を振り上げた体勢で絶命する。
あっという間に二人死亡。
もともと身体能力はこちらのほうが上だ。相手になるのは斧使いの男だけ。
残りの盗賊を殺すのに、苦労は必要なかった。まさに単なる作業のようなもの。
——そうだ。コイツらは人間じゃない。魔物と一緒だ。魔物を殺すのに、最初から躊躇いはいらない。
動き出した斧使いの攻撃を避けながら、その脇腹をくぐり抜ける。
「先にお前を殺す」
雑魚が相手でも定石は崩さない。もう油断しない。
足手まといから殺して、安全に斧使いを仕留める。
残された男は、俺の接近に恐怖の色を浮かべた。叫びながらも剣を振りまわし、撃退を試みたが……。
当然、そんな無意味な攻撃は当たらない。
最初の小柄な男と同じように首を狩って終わった。
これで、先ほどと同じ一対一だ。
振り返ると、怯えた様子の男の顔が見える。
「て、てめぇ……! 急に変わりやがって、なんなんだ!? この化け物が!!」
内側に生まれた恐怖心をかき消すように男が走る。
迷いのこもった斧が振り下ろされるが、それを正面から俺は受け止める。
互いの筋力が拮抗し、半ばで斧の勢いが止まった。男が驚愕の声をあげる。
「なっ——!? お、俺の一撃を……こんなガキが!?」
「お前も終わりだよ。自らの行いを反省して逝け」
剣身を滑らせて体ごと前に出す。
背後では男の斧が地面を砕き、前方では俺の剣が男の首を捉えた。
最後に、「死にたくない」という表情を浮かべたまま、男の首が宙を舞う。
胴体が力なく倒れ、遅れて首が地面に落ちる。
転がったそれを見下ろしながら、俺は低い声で言った。
「俺が化け物なら……お前らは悪魔だよ」
こうして盗賊たちとの戦闘が終わる。
『レベルアップしました』
「……は?」
一息つく暇すらなく、目の前に例のウインドウが現れた。
表示された文字を見て、俺はぱちぱちと瞬きを繰り返す。
——レベルアップ? 魔物を倒していないのに?
まさか人間を殺すことでも経験値を得られるとは思っていなかった。
それとも、悪人だから経験値を獲得できたのか?
そんな疑問にシステムが答えてくれるはずもなく、続けて新たな文字が表示される。
『初めての人間との戦闘を達成。悪人の討伐を確認。特別報酬が与えられます』
『ステータスオール+10』
「なんだか入手経路が気に食わない報酬だな……。まあ、貰えるものはなんでも貰っておくか」
ステータス画面を開いて、自分の能力値が上昇してることを確認する。
———————————————————————
名前:ネファリアス・テラ・アリウム
性別:男性
年齢:15歳
ギフト:【システム】
Lv:20
HP:2200
MP:970
STR:40
VIT:30
AGI:30
INT:21
LUK:21
スキル:【硬化Lv5】【治癒Lv5】
ステータスポイント:20
スキルポイント:42
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これまで通りちゃんとレベルとステータスが上昇していた。
ここ一週間はレベル上げできなかったから正直助かる。
「けど……お父様の言ってた盗賊って本当にコイツらのことなのか? それにしては……」
数が少なすぎる。
いくら【ギフト】持ちがいるからって、たった4人に護衛を含む父が負けるとは思えない。
……そう言えば、男たちは食料調達に来たといってた。それはつまり、食料調達を任されたということ?
ならば父が言ってた盗賊は他にもいる?
4人だけでここまで逃げ延びられる可能性も低い。他にも仲間がいると考えたほうがいいだろう。
釈然としない気持ちが残った。
しかし、そろそろ帰らないと家を抜け出していたことがマリーにバレる。
最後に男たちの持ち物だけ回収して、死体は放置。魔物に遭遇しないよう踵を返して帰路に着く。
——直前。
背後から足音が聞こえた。
呻くような低い声が聞こえた。
本能が警鐘を鳴らし、即座に振り返る。
すると、30メートルほど先に……前世で見たことのある怪物が立っていた。
——【マンティコア】。
人の顔を持つ、四足歩行の大型の魔物だ。
俺をあざ笑うかのように下卑た笑みを浮かべている。
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