第5話 怪異 蠱毒の少女


累累 カサネルイ

累(カサネ)家の次女双葉の一人娘として14年前に誕生したが……10年前に誘拐される


犯人は不明だが、容疑者として夫 耕史にストーカーしていた女性の存在が浮上するが……関係ないと頑なに情報開示を拒否された為、特定できず


事件発生当時、生まれ育った地元を離れていた事から突発的な犯行と計画的な犯行の二つの観点から捜査が進められたが……犯行から10年経過しても犯人から何の連絡もなく、捜査本部はすでに解散されている

しかし、先日匿名の通報から事態は急展開を迎え


累ちゃんと思われる少女を保護

〇〇病院に搬送




俺は資料を再度確認して、目の前で不安げに俺を見る少女と言うか……

その目にはなぜか包帯が巻かれていた

「ああ、この子、長い間暗室の様な所で監禁されていたと思うから……光の刺激を減らすために包帯を巻いて居たんだけど……私の事も含めて印象に残らなかったでしょ?」

ポニーテールを揺らしながら、お酒が回っているのか、ほんのりと顔を赤くした出島先生が

俺にそう話しかけると俺は驚愕した!


俺は先生の顔や少女の顔を正しく認識していた


それなのに


あの病院では……なぜか、気にならなかった

普通なら、相手の状態を注意深く観察するのが当たり前なのに……

あの時の俺は興味がなかった

マジで訳がわからん!

「確かに……異常なのに異常に気づかなかった」

その様子を見てビールを呑んだ先生は

「認識阻害がかかっている状態だったからと言ってもわからないでしょ?」

そう言いながら……いつの間にか俺が持っていた筈のコンビニ袋が、その手にあった

「おかわり、いただきます!」

そう言って、袋の中からビールを取り出す

傍若無人なふるまいだった


とりあえず、このアル中と思われる先生の事は放っておいて……


俺は改めて少女を……

「あら?そんなに女の子を見つめて……変態さん?」

「黙れアル中!」

茶化してくるアル中の言葉を一刀両断して、頭から観察していく


白い髪はとても長く腰まで伸びている

切り揃えられているにを見ると身だしなみは行われていた様だ

匂いも監禁されていたという割には気にならない

顔には細かい傷や……ん?目元には殴られた跡があった気がするが、それほど目立っていない……

そもそも、包帯がつけられているのに、なぜかそう思った


体は痩せているが、不健康というより、

あの襲われた時の速さから締まっている印象を受ける

女性らしさはまだ幼いせいか、食事の都合か平均以下

「私は平均以上と思うけどね」

出口先生がふざけながら、俺の視界の端で胸を寄せあげていたが……ぽさっ!

何かが落ちる音が聞こえる

「!!!!!!!!!!」

俺はそれを見なかったことにして……まな板を連想した

こんなコントを続けるより服装は病院で着ていた服装だが……血痕はない……

「一応、着替えてるよ!血の関しても相応しい所に持って行ってるから安心して欲しい!」

相応しいところって何処だよ……と思って先生の方を見ると……こちらに背を向けて服をたくし上げ……

「ちょっと待て!アル中!!人様がいる所で付け直すな!みっともない!」

「みっともないとはなにかね!私には死活問題なんだぞ!お姉さんぶろうと思ってこんなまな板!!

恥じゃないか!」

この酔っぱらいめ!逆ギレしやがった!

「君は刑事なんだろ?女性の裸の一度や2度見たことあるだろ?童貞じゃあるまいし!取り乱さないで変態!」

「ばっ!?馬鹿野郎!男がそう簡単に好きでもない奴を抱けるか!」

俺は先生の言葉に顔を赤くして怒鳴る

少しの沈黙が訪れ……俺は自分の失言に気づいて、手を頭に押し当てる

それと同時に……目の前の悪魔が嗤った

「へぇへぇ〜君はそんな男らしい見た目で、まだ女性も神秘を味わったことがないのか〜

それはすまなかったね!私の様な魅力的な女性の肌を見て、さぞ気が気じゃなかっただろう!

ここは一つ、お詫びとして胸でも揉んどくかい?」

などと言って胸を……一瞬ドキッとしたが……

突き出されたまな板を見て冷静になった

「すまねぇ……もう少し成長出来たら……考えさせてくれ……」

俺の失望した眼差しに次は先生が顔を赤くして

「!!!!!ばっバカにしたな!私だって!私だってな!!!!!」

と怒りを露わにしている先生をよそに

俺は累の方を見る!

あんな声を出したから、また怯えられると思ったが……

累は首を傾げて、不思議なものを見る様に俺と先生のやりとりを見ていた

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