第二話 グロストレンジャー

 零

「ヘタレ君。私は、私は、貴方に興味あるのです。いえ、厳密に言うと貴方方が映している世界に対して興味があるのです」

 グロは此方の返答等気にする事無く次の言葉を紡ぐ。紡がれた言葉は止まる事なく崩れるように溢れ出している。

「私は、異形から嫌われているのです。いえ、厳密に言えば排除されていると思うのです。とても悲しい事だと思うのです。それは。ですから、私は、見たいのです。貴方が見ているモノを、貴方が感じている世界を、見たいと思っているのです。ですから、協力してくださいね。スイ君」

爛々と輝く漆黒の目は興奮を訴え、紡がれた言葉は相手の事を想定して等いない自分勝手なモノ。此方を理解したいと言うその漆黒の目は幾度も見た不純では無く限りなく純粋なモノ。その純粋なモノは見た事が無かった。ニコリと興奮を湛えた目が眩しく映る。その眩しく映るモノ事態に僕は眉を顰める。歩みよろうとするその態度が、理解しようと此方を知ろうとするその姿勢全てが、僕には。


「気持ち悪い」


 否定する言葉が口から意図して音となる。苦く笑う事等せずにはっきりとした嫌悪を湛え、僕は更に言葉を重ねる。

「気持ちが悪いな、その姿勢、態度。とても悪いけれども、僕は君の期待に答えるほど出来た人では無いんだ。だから、関わらないでくれないか」

徹底的に拒絶する。煙先生は此方に歩みよる行動や啓蒙する事はしなかった。唯、僕という対象に対して行動を起こし反応を楽しんでいるだけであった。それは良いモノでは無かったけれども結果的に見れば僕には一切関係の無いモノとなる。だけど、このグロは違う。僕というどうしようも無い存在に積極的に関わろうとしたのである。僕の理想は人との交流を極力断ち切った生活である。それが脅かされそうとなれば誰だって抵抗するだろう。理想に対して努力を重ね行動に移す。それは普通の事なのである。だから、今この瞬間、僕はグロを拒絶する。

「悪いけれども、嫌なんだ。貴殿に協力するのは。だから、他を当たってくれないか?」

嫌悪を浮かべた表情から柔やかに笑う顔を作る。苦く笑った笑みでは無く、人当たりが良く見えるような笑みを浮かべる。浮かべた表情とは真逆の言葉を此方は先程の言葉に重ねて紡ぐ。此以上無い程の拒絶を態度に、言葉にして示して見せた。過去で此処まで僕が人を拒絶した記憶は無いし此からも無いのだろう。それ程までに、奇異な存在に出会ったと言える。僕が拒絶を示した相手は変らず爛々と輝く漆黒の目で興奮を湛えていた。

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