第2話 「推し活」ミステリーが、増えてしまった。やってはならないことがおこなわれたら、もう、異世界夏祭りにいくしかなくなっていたらしい。

 「オタク的に推しって、どうです?」

 「どうも、こうも」

 「ああ、どうにも」

 「こうにも」

 「オタク的な愛も、難しいですよねえ。マツダイラさん?」

 「何を言っているんだよ、オオクマ君?」

 「自分は、じいじやばあばの写真がプリントされた抱き枕を、寝るときとかに、キュッと、抱きしめたりするのが好きですね!」

 「それ、マジで?それが、オオクマ君の推し活なの?」

 「冗談ですよ、マツダイラさん?」

 「ああ、びっくりした」

 「推し、ねえ」

 「推し」

 「良い推しを見つけるのは、意外に、難しいものなのかもしれませんね?」

 「そうだ、オオクマ君?」

 「はい」

 「俺って、新卒で、シューショクできなかった世代だろう?」

 「…」

 「だから、俺は、新卒推しかな?」

 「…」

 「俺は、新卒を手に入れたい!」

 彼のこの願いが、後々、とんでもないことになる。

 なぜかそのとき、八百屋の店長、カシワバらの顔が思い出された。ちょびひげサングラスの、おじさんだ。

 オオクマは、ネクタイを、しめ直す。

 「もう、仕事に戻らなければな。で、マツダイラさん?」

 「何?」

 「今日は、何を、運ぶんですか?」

 「ああ。今日は、これをお願いしよう」

 「今日は、一段と、大きい箱ですねえ」

 「ああ…。エッチな推しが、入れられているからね」

 「…え、エロいんですか?」

 「秘密だよ、オオクマ君?頼んだよ」

 「は、はい…」

 推し活仲間の、愛だ。

 「オオクマ君?絶対に、この箱の中を、見てはダメだぞ?」

 「う…」

 「客のつめた物を勝手にのぞくのは、ダメだぞ?社会人として!」

 「そうなんですか?」

 「そうなんですかって…。こら」

 オオクマには、彼に、それ以上質問することはできなかった。

 ブルルルル…。

 トラックが、中央配送センターというところに向けて、出発。

 「だめだ、どうしよう。見たい!」

 真面目に働かなければならないと思うたびに、オオクマには、ドキドキが止められなくなっていた。

 「見るなと言われれば言われるほど、見たくなる!」

 がまんのできない、オオクマは、やってはならないことを、やってしまう。

 ついつい、客の段ボール箱を開けてしまったのだ。

 「こ、これは…!」

 それ以来、マツダイラとオオクマは、連絡をとりあえなくなった。

 なぜ、オオクマは、八百屋に、やってこなくなってしまったのか?ミステリーが、増えた。

 「オオクマ君は、どこだ?」

 彼は、オオクマの住んでいたアパートに、向かう。

 管理人には、この世でたった 1人の身内だとかなんだとか上手いことを言って、オオクマの部屋を、開けてもらうことができた。

 そこで、彼が見たものは…?

 「…!」

 開いた口がふさがらないとは、このこと?

 オオクマが使っていたと見られる布団の枕には、高齢者の写真が、プリントされていたのだ。

 「自分は、じいじやばあばの写真がプリントされた抱き枕を、寝るときとかに、キュッと、抱きしめたりするのが好きですね!」

 それ…。

 本当だったらしい。

 「夏限定の依頼」

 実は、荷物の運び先は、ここ!

 「異世界夏祭り」

 なぜ、そこに運ばなければならなかったのか?

 それはね…?





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