雨に堕ちて
狗まんま
第1話
5月の半ば。晴天が何日も続いた。
同じ職場で働く
いつも通り仕事を済ませ、俺が運転し2人で家へと帰る。
「ただいまぁ~!」
真由美は透き通った綺麗な声で誰もいない俺たちの家へ言う。
それに続いて俺も
「ただいま」
洗面台に行き仲良く手を洗う。この時間は俺たちの中ではとても大切なことだ。
仕事中の基本的に同じところにいるが2人きりになれるのははやり我が家だ。
すべての時間が大切。
「明日は土曜日だね~
日頃の労働から解放される喜びと2人でいれる喜びから真由美は元気よく言った。
「やっと1週間終わりか。今週も長かったな」
「でも蒼汰と一緒だから今週も乗り越えられたね!」
真由美がいつも俺にかけてくれる言葉だ。確かに俺も真由美には仕事の時も日常生活でさえ心の底から感謝している。
何気なく近くにあったリモコンを手に取りテレビをつける。
「なんか観たいのあるか?」
俺は特に観たい番組はなかったため真由美に問う。
真由美は5秒くらい悩んだのち。
「明日休みだからお出かけしよう!」
それは俺の質問への答えにはなってない気がするがまあそこはいい。
可愛いから許せる。
「そうだな~あ、そうだ。ここの山登ってみたかったんだよ」
俺は趣味である登山をすることを真由美に提案した。
「お~いいね~私も行きたかった!」
絶対嘘だろと思いつつも話を続ける。
「じゃあ天気は確認しないとな。えぇと土曜日は…よし晴れだな」
俺はテレビの天気予報で天気を確認しつぶやく。
「あ、でも日曜日は雨だ。やっぱり明日の内にいっちゃうか」
俺たちが登ろうとしている山はかなり初心者向けの山で片道1、2時間で山頂まで登れるようなところだ。
「じゃあそうと決まれば早くご飯食べて寝ないとね!」
「そうだな手伝うよ」
そのあとは真由美とご飯を食べ
「おやすみ~チュ」
「おやすみ真由美」
部屋の明かりの完全に消し真っ暗になった。
俺たちは10分もしないうちに夢の国へと誘われた。
ジリジリジリ。目覚ましが鳴っている。
いつもなら労働を促すその時計だが今日は耳触りがよくオーケストラのようだった。
朝ご飯を済ませ、準備は前日に済ませていた為俺たちは家を出て目的地の山へと向かった。
いつものように俺が運転。隣にはいつものように天使がいる。
30分ほど運転しただろうか。
目の前がぼんやりとしていてよく見えない。
ザーザーザー。とても激しく水が落ちる音で俺は目を覚ました。
瞼を開けて見えるのはいつもとは違う景色。
横たわったまま真横を向いてみる。そこにはパーテーション。
俺は状況を把握しきれないでいたが、すぐにお医者さんが俺の方へと近寄ってくる。
「目を覚ましたんですね!よかった…」
ほっとした様子だったが次には苦しそうに俺に問いかけてくる。
「まず自分の名前は言えますか?」
「ええもちろん。俺は
「あれほどのことがあったのに…覚えていてよかったです」
「あの何があったんですか?」
「え、覚えていないのですか?」
お医者さんが俺の問いに不思議と言わんばかりの口調で問い返してくる。
「あ、そうだ真由美は」
「成瀬さん…」
そこからお医者さんは俺にあった出来事をすべて話してくれた。
「昨日午前登山をするために車で出かけていた都内に住むカップルが大型トラックと強く衝突し、女性が死亡するという事故がありました。男性は重傷ながらも一命を取り留めたそうです」
アナウンサーの淡々とした声が病室一帯に響き渡る。
「でも蒼汰と一緒だから今週も乗り越えられたね!」
俺はお前と一緒じゃなくなってどうすればいい。
むせび泣きながら一人つぶやく。
今日はいっぱい雨が降ってるね真由美。
「先日交通事故にあったカップルの男性が夜中に病院の屋上から飛び降りたそうです。警察はほぼ自殺で間違いないとして捜査を進めています」
空っぽになった俺の病室にはもうアナウンサーの声すら響き渡らない。
「これで真由美とずっといっしょだ…」
大雨の後にはきっと晴れの日が来る。
誰か偉い人が言ってたっけな。
当たり前の幸せを享受することそれができたらどんなに良かっただろうか。
こうして俺は雨とともに屋上から
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どうもいぬまんまです。ここまで読んでいただきありがとうございました。
とてもシリアスで苦しかった人もいるでしょう。
私も書いていてとても苦しかったです(泣)
少しでも面白いもっと違う作品が読んでみたいと思った方は是非とも応援よろしくお願いします。モチベーションにつながります。
雨に堕ちて 狗まんま @inu_manma
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