第2話 SFな新卒夢冒険を叶えるために、いけ!今こそ、この謎のビルの上を目指さなければならない。ちょっと、めんどうくせえなあ。

 良い感じのSF会社、だったのに。

 何かが、変わっていた。

 「 4カイヨリ、 コンニチハ」

 何かを運んできたらしいAIロボットが、フロアに集まる社員たちの前で、楽しそうな声を上げた。

 「シンソツのクビデス」

 …マジで?

 こういうところが、変わっていると、いうんだ。

 SF的なこのビルの、はるか上の階にあるという神棚から、まわってきたらしい。

 「このフロアの上って、どうなっているんだろうな?ますます、気になる」

 新卒な友だちのものだという首からは、血が、まったく出ていなかった。

 時間が経過しすぎて、固まってしまったのか?

 「あら、あら。またですか?」

 彼の働く、 3階フロアーに、清掃服を着たおばちゃんがやってきた。

 手には、モップとバケツをかかえていた。

その姿を見れば、どう考えても、清掃関係の人にしか見えなかった。

 課長のおじさんが、立ち上がる。

 「社長、すみません!あの新卒は、言うことを、聞きませんので…。ですので、朝礼のあとで、社長室に、お連れしたわけなのですが」

 「ああ、そう。それが、あの子だったわけね」

 「お許しください、教祖様!」

 …教祖様?

 はじめは、社長って呼んでいなかったか?

 「しかし、教祖様!」

 「何?」

 「いくら何でも、殺しすぎでは?人材不足になりますよ?」

 「ごめん、ごめん。忘れていたのよ」

 何も知らない新卒たちは、アッとなっていた。

 「ごめんなさいねえ」

 「申しわけありません、教祖様!」

 「良いの、良いの。あなたか謝ることじゃあ、ないでしょう?」

 「はい、教祖様!」

 何がごめんなさいだというのかも、良く、わからないまま。

 少なくも、わかったことがある。

 「清掃のおばちゃんだと思っていた人は、実は、会社の社長?」

 そこだ。

 「しかも、実は、何かの教祖様?」

 SF的な時空は、厳しすぎた。

 新社会は、不安でいっぱい。

 「あのう…」

 「何かね、新卒君?」

 タワバ先輩以外の人に、聞いてみるしかなかった。

 たまたま、タワバ先輩は休みで、フロアにはいなかったし。

 「誰かをわざと不幸にしてから勧誘するっていう、宗教があるんだぜ?」

 タワバ先輩の言葉が、思い出された。

 が、ダメだ。

 「もう、良いんで…」

 「え、俺に、何か聞きたいんじゃ、なかったのかい?」

 「もう、良いんで…」

 「あ、そう」

 知らない人と話すのは、ハードルが高すぎた。

 新卒パワーは、つらいよ。

 「どうしよう?友だちも、タワバ先輩もいない…。こうなったら…」

 このビルのどこかにいるんじゃないかと思われる、その、謎の新興宗教の教祖様を頼るほか、なさそうだった。

 その教祖様が、社長と呼ばれた清掃のおばちゃんだということは、そのときは、忘れかけていた。

 「早く、いきたい!」

 いやらしい意味では、ありません。

 このビルディングの上の階を、目指せ!

 めんどうくせえなあだなんて思っていたら、ダメだ!

 いくぞ!

 SFな新卒夢冒険のラストは、どうなる?






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