第1話 驚愕した!(sideマサヨシ)
俺の名前は
身長が高い以外はこれと言った特徴のないしがない中学生だった。
特に運動ができるわけでも勉強ができるわけでもなかった俺は顔の薄さもあって異性にモテるようなこともなく、かといってこれといった問題を起こすでもない平凡な人生を歩んでいたのだった。
転機が訪れたのはいつの頃だったか、人並みに漫画やドラマを楽しんでいた俺は中学生らしい共感性を発揮し、当然の帰結として影響を受けた。
少年漫画曰く、自分を変えるには自分が努力するしかないのだという。
少女漫画曰く、モテる男とはグイグイと自分の好意をアピールするのだという。
恋愛ドラマ曰く、顔は薄めで特徴が無い方がメイクが映えるのだという。
俺は異性にモテたかった。
それまでの薄い人生に決別すべくそれまでの自分を知る人々から離れる決心をした俺は猛勉強をし、親を説得して独り暮らしの許可を取り、地元から離れた義満学園高等部への編入資格を勝ち取るとそれからは周りに知られぬようひたすらにメイクの勉強とスタイルを良くするために筋トレを始めた。
半年ほどでル〇ン三世も真っ青な変装…もといメイク技術を身に着けた俺は花が舞うかと見紛う程のイケメン高校生神代正義として新たな人生を歩む権利を手にしたのだった!
───ここまでは良かった。
イケメン高校生、それも成績上位者として推薦入試での編入を成し遂げた俺は当たりの前で編入先の義満学園で注目の的になったのだが、見栄えは微笑むだけで女子がキャーキャー言いだす程の物を手に入れ内心気分は良かったが内面はこれまで通りのしがない普通のモテない男なのだ。
何を話していいか分からない。モテるために恋愛ドラマや恋愛漫画を読みこんだが、そもそも経験が絶対的に足りていなかったのだ。
周りにもてはやされニコニコ笑って見せる裏で、イケメンに相応しい行動が出来ているか不安に駆られる俺の目に入ったのは自分を中心とする輪から離れた位置で所在なさげにしていた一人の女の子だった。
彼女は俺と同じ編入組で、他に知り合いもいない様子だった。
そこで一刻も早く、一度輪の中心から逃れたかった俺は行動に出た。
───冷静に考えたらかなり突飛な行動だったと思う。
「なあ!そこの彼女!俺と一緒にお茶しないか!」
勢いに任せて放った放言で辺りは静まり返ったが、彼女も固まって動かなくなってしまった。
尚更慌てた俺は彼女の手を引いて逃げるようにカフェへと向かったのだった。
カフェにたどり着いた自分はまずは挨拶をしたものの囲まれていたころからは冷静さを取り戻したとは言え冷静ではなかった。
少女漫画の格好いいイケメンの真似をしてコミュニケーションをするのでやっとだった。
しかし、そんなコミュニケーションが通じる!彼女は何を言っても嬉しそうにうんうんと応じるのだ、次第に調子に乗ってくる。
「君みたいな子だと落ち着いて話せるなぁ、ねぇ俺たち付き合っちゃう?」
度の過ぎた、調子に乗った発言だと思った。
ハッとしたころには遅かった。彼女は嬉しそうにしつつもはっきりとした声で返答したのだ。
「はい、貴方のような方とならよろこんで」と。
俺は責任を取らねばならない。
きっと彼女は俺の事を身も心も素晴らしいイケメンだと思って応じたのだろう。
期待させた分の責任を、俺は果たさねばならないのだ。
少女漫画のスパダリ様みたいな彼に愛された私は なつうめ @notname3334
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