第3話 スレイヤー育成学校

「スレイヤー育成学校」それはスレイヤーを目指す者たちが通う学校。一般的には中学校を卒業後、実技試験を合格した者が入学する事ができるが、中には途中から入ってくる者もいる。そんなスレイヤー育成学校の学生寮の前に2人の人影があった。

「ほんとに大丈夫なのか!?」かんたは女子学生寮を前にして怖気付いていた、当然だ。女子学生寮なんて男が入って良い楽園ところでは無い。

「バレなければ大丈夫…よ多分」自信なさげにみずきが言うとかんたは更に心配になってくる。だがここで進まなければ今までと変わらない。かんたは中学校を卒業した後、スレイヤー育成学校に入るつもりだった。しかし力が無いかんたは当然実技試験を落とされた。その時かんたはスレイヤー育成学校に入る気満々だったので、入れなかった時の住む場所を考えていなかった。それから野宿生活が始まり、毎日生きる事に精一杯。そんな生活をしながらかんたはスレイヤーランク最底辺の「E級スレイヤー」と言うなんとも不名誉な資格はなんとか取れた訳だが誰もE級スレイヤーなんかに災害獣討伐依頼なんて出す訳が無く何もする事がなく公園で寝ている時に目の前に災害獣が現れ、東雲みずきと出会った。思い返して見ると、かんたは東雲みずきに出会ってから灰色だった世界に光が指した。こんな所で終わる訳には行けない!

なんてまるで最終回に差し掛かった主人公の様な思考を巡らせていると、「さっきからブツブツ何言ってんのよ」そう言い、みずきがかんたを現実に引き戻した。

「なんでもないなんでもない!」頭の中で一人語りをする人間だとは思われたくは無かったので、かんたはそう誤魔化し、

「とりあえずみずきの部屋まで行こう」そう言った。

「そうね。でもここからの道のりは大変よ...」みずきは少し心配そうに言った。


2人は女子学生寮の入り口の前にいた。「ここが1番の関門なのよ。」みずきはそう言うと女子学生寮に目をやった。かんたも同じ様に目をやると、そこには警備員が1人立っていた。

恐らく不審者が侵入するのを防ぐ為だろう。「どうする?」かんたはみずきにそう聞くと、みずきは言いずらそうにかんたにこう言った。「かんた、悪いけど少し痛いわよ」

この時みずきは強行突破しようとしていた。いつもならもっと良い策を出せたんだろうがこの時みずきは今日起きた事に頭を使い過ぎていた為、もう頭は回らなかったのだ。

「へ?」かんたは言葉の意味が理解出来なかったが、そんなかんたに構わず、みずきはかんたの手を掴んだ。

かんたはバチバチとみずきの身体から青い稲妻が出ているのが分かり、「ちょっと待っ」そう言おうとした時にはもう遅かった。みずきは自身の能力である「青き稲妻ブルーインパルス」を身体に纏わせ、稲妻の如きスピードで女子学生寮の入り口に入った。「いででで!?」

かんたは全身が感電する感覚に包まれ、意識が飛びそうだったが、なんとか持ちこたえていると、「着いたわよ」2人は部屋の中に入っていた。

「なんとか着いたわね…かんた大丈夫?って大丈夫じゃ無さそうね...」みずきは安堵しながらビリビリに感電したかんたを見てそう言った。「死ぬかと思った...」というかよく死ななかったなと思い(これも神様の力なのか?)と今日神社で起きた現象の事を思い返した。

 

部屋に何とか入れた2人はお互いの事を知る為に質問を投げ合っていた。「ていうか、みずきってスレイヤー育成学校の学生なんだろ?今日みたいな平日の昼間から街中を歩き回ってても良かったのか?」かんたはみずきがスレイヤー育成学校の生徒だと知った時から聞きたかった質問をした。

「歩き回っていたなんて言い方しないでよね!それじゃ私が学校をサボっていたみたいじゃない!」と言うと「え?サボりじゃ無かったのか?」かんたはストレートにそう言った。

「私は自分ではあまり言いたくないけどA級スレイヤーエリートよ?私みたいな生徒達の中でも特に優秀な生徒は2年生になったら実践訓練として学校に行かずに1人のスレイヤーとして災害獣と戦う事を許されているの」

みずきはこう言い、「そうだったんだな。それはサボりなんて言って済まなかったな」かんたの誤解を解いた。

「それにしてもみずきって2年生だったんだな。俺と同い年って訳だ」さっきしていた会話から途切らせる事無くかんたがそう聞くと、「かんたって2年生なのね、じゃあ今ならまだ間に合うんじゃない?」みずきはかんたに良かったじゃないと言わんばかりにかんたに言った。「何に間に合うんだ?」かんたがそう聞くと、「スレイヤー武道会よ」と、みずきがスレイヤー育成学校に通っている者たちが戦い、共に高め合う大会であるスレイヤー武道会の名前を出した。それに対してかんたは「なにかの冗談だろ?俺はスレイヤー育成学校にも入って無いんだぞ?」と言った。この時かんたが言った事はあながち間違っていなかった。スレイヤー武道会はスレイヤー育成学校に通っている者たちのみが出場が許されている大会だ。それに出ることなどまず出来ない。しかしその事を十分理解した上でみずきは言っていたのだ。

だからみずきは冗談はやめろと言うようなかんたに対して

「だったらスレイヤー育成学校に入ればいいのよ」と言い、それに続けて「少人数だけど途中からスレイヤー育成学校に入ってくる人達はいるわ。だから明日はまず学長に話を付けに行くわよ」そう言った。かんたはまた1つ、試練が始まるなと思った。

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