第2話 失敗したけど、少しだけ賢くなったよ。
放課後、リビングで一人テレビを観ている苺花。幼稚園の時に大好きだったアニメ「リズムリルム」であるる。
ピンポーン、ピポピポピポピポ 、ピンポーン!
鬱陶しいチャイムが鳴るが、苺花は微動だにせず。
ガチャリ……
玄関の開く音。そして、誰かの足音が苺花のいるリビングの方に近ずいてくる。
「ほら〜やっぱり居るじゃないか〜」
爽やかイケメン大学生「
「………」
ガン無視を決め込む苺花。
そんな苺花に慣れた様子の隆は、苺花が寝そべるソファに無理矢理スペースを作り、座り込んでくる。
「ほら〜今日は、木曜日だよ〜家庭教師の日だよ〜」
好感度抜群のとびっきりの笑顔を苺花に向ける。
「……チッ」
一瞬だけ隆を見て、大き目の舌打ちをする苺花。
「あ、あ〜今のはちょっと傷ついちゃったかな〜」
と、おどける隆。アニメはエンディングが流れている。隆はエンディング曲を口ずさむ。
「リズムに合わせて〜……」
そんな隆に冷たい視線を送り、エンディング曲がサビの途中に、プツンとテレビを切る苺花。立ち上がり自室に向かうと隆があとを追ってくる。
なんてことはない、これが毎週木曜日のルーティンである。
無言で机に向かう苺花に隆は。
「先週の続き、算数だね」
苺花は、両手をあげ背伸びして大きな欠伸を一発。
「はい、はい」
そう言って、算数の教科書を広げる。
苺花は勉強は嫌いだが、隆の事も、この木曜日の家庭教師の時間もイヤではなかった。学校でも、放課後も遊んでばかりの苺花が唯一、勉強する時間がここである。
隆は幼い頃、この近くに住んでいたが、両親の離婚で引っ越したそうだ。どうやらその時に、隆一と涼花に恩があるようで、大学生になりこの街に戻ったのをきっかけに苺花の家庭教師を無償で引き受けている。合鍵まで持たされてるあたり、隆一からは信頼されてるようだ。
「タカシ〜彼女できたか?」
勉強に飽きると苺花はこうやって隆に絡む。
「え!?僕の彼女は苺花ちゃんじゃないの?木曜日の恋人」
ニコッ!と擬音が付きそうな笑顔を向ける隆。
「ロリコン、キモ!」
憎まれ口を叩く苺花だが、内心はちょっと嬉しそう。
ふと、隆が窓の外を眺める。
「あの子は苺花ちゃんの友達?彼氏?」
「彼氏なんているか!」
と言いながら苺花も窓の外を確かめる。陸玖が苺花の家の前を行ったり来たりしていた。
あ!っと思った苺花。
「友達」
ボソッと答える。そんな苺花の様子を見て、隆は。
「もしかして、喧嘩でもした?」
ここぞとばかりに、年上アピールか。これでもかと言うくらい優しい口調で尋ねる。
「アイツが悪い ……苺花悪くない」
少し間を置いて苺花が答える。自分の事を名前で呼ぶ時は、甘えてる時であることを隆は心得ていた。
「どうしたの?」
隆お兄ちゃんに、いや、木曜日の恋人に何でも話してごらん。とでも言いたそうに隆が尋ねる。
「国語の時間に……」
苺花が話し始める。一言口に出すと、
「音読の時に、陸玖が読めない漢字で、止まってたから!苺花が教えてあげたの、なのに!苺花が教えた読み方も間違えちゃってて、アイツ文句言いやがってさ!西村もバカにしたように見てくるし!ムカつく〜」
どうやら西村とは先生のことらしい。
「で、苺花ちゃんは陸玖と西村どっちに怒ってるの?」
「どっちも!」
「そっか、それでどんな漢字が読めなかったの?」
苺花が止まる。恥ずかしそうに、口には出さずノートに書いた。
「音程」
隆が声に出して読む。と同時に苺花が何と間違えたのかわかって笑い出す隆。
「笑うな!うわぁー!」
隆に笑われ、恥ずかしいのか、隆を怒る苺花。鉛筆の先を隆に向ける。
「ちょっと待って!ちょっと……これって苺花ちゃん、もしかして、リズムって読んだでしょ?」
「え!凄!なんでわかった?」
「さっきのアニメのエンディングでしょ?」
エンディングの歌詞……
「そう!そうだよ!間違ってないよね!さっき確認したもん」
理解者が現れ、元気になる苺花。
「そうだね……うん。間違ってる!国語的に!」
隆に言われうなだれる苺花。
「よし!じゃあ今日は国語をしようか?その西村って先生を見返してやろう!」
「わかった……」
素直に従う苺花を可愛く思う隆だった。その時……
リーズム!リ〜〜ズム!
外から聞こえる。陸玖である。
「あの野郎!」
そう言って部屋から飛び出す苺花。
「今日はここまでね……」
苺花を見送り、もう今日は勉強には戻って来ないことを確信する隆。外で言い合う二人を見て。
「あの子もやるな〜。苺花ちゃんの呼び出し方を心得ている。妬けちゃうな〜」
とつぶやいた。そして、夕食の時、隆一に聞かせるネタが出来たことをちょっと喜ぶ隆だった。
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