第1話

どれだけ時間が過ぎただろう。


目が見えない。耳も聞こえない…気がする。


けたたましいサイレンの音も僕の記憶から遠ざかっていく。


「僕は何者?」


声にもならない声が響く。


一つわかったことがある。出口はもうすぐだと。


輝く未来がそこに待っていることを願って。


「目を瞑りなさい」


僕の脳内に反響する美しい声。


どこから聞こえてきたのか知らないけど、誰が言ったのか知らないけど。


抗ってもいいかな、目を瞑らなかったらどうなるんだろう。


それ以前に目が開かない、開けようとしてるのに力が入らない。どんどん閉じてきてる気がする。 


「世界が僕を忘れて…」



近寄ってくる鴉、曇天の空。一面の芝生、空飛ぶ妖精⁉︎


妖精…というより空飛ぶ人間の方が正しい。


ガイドというわけでもなさそう。こんなに小さいのになんでここにいるんだろう? 迷子?


「ボクのことをそんな目で見るな!」


急に叫ぶなよ。久しぶりにびっくりした。ってか見た目女児で5歳ぐらいなのに一人称「ボク」って可愛過ぎだろ。


急な展開に驚く僕と、急に失礼なことを言ってくる「ボク」。


「僕は今ここにいるから。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る