第21話

 真夜中の学校の研究室。


 本来は誰もいないはずだが、四人の女子生徒が椅子を並べ何事かを話し合っていた。


 これだけを聞けば、微笑ましい光景だろが集まった四人の女学生の雰囲気は黒く澱んでおり異質であり、狂気的であった。


「それで、犯人は特定できたの?」

「それが分かってるなら、お前たちを呼び出したりはしないし真っ先に殺してる」


 ミアの問いに淡々と答えるのは大きな隈を作っているエリーである。


「それに見つからないから私は.............こんなものを作った」

「やっと出来たんですね。どれだけ待たせるのかと思いましたよ」

「へぇ.............完成したんだ。その薬」

「やっとこれでロア君は今よりも楽になれるんだね」


 エリーが出した薬とは、特定の機関の過去の記憶を消す薬だった。彼女はここ数週間それを作るために毎日ほとんど眠らずにそれを作ることに専念していた。


「ロア君には確認は取ったんですか?」

「うん。ロアはこう言ってた。『正直に言えば忘れたいよ。あの時、僕は死んでしまいたいって思っていたから』って」


 その言葉を聞いた三人は死んでしまうのではないかというほど顔を青ざめ口々にここにはいないロアへの謝罪を始めた。自分たちが犯してしまった数々のロアへの虐めというには辛すぎる所業を反省しながら。


「でも、これでロアを助けられる。私がロアを救ってあげるの」


 エリーはそう口にして身を捩り、恍惚とした笑みを浮かべる。想像するのは過去のロアとの甘い記憶。そして、ロアが喜んでくれる顔だった。天才、神童と呼ばれる彼女のIQは著しく下がり、頭はお花畑になっていた。


 そんなエリーを見て元に戻った三人は、エリーへと嫉妬と侮蔑を含んだ視線を向け話を元に戻す。


「その薬は副反応はないの?」

「ないとは言い切れないが、ほぼゼロに近い。散々試したから」

「何よそれ。絶対にないものを作りなさいよ」

「そんなの無理。絶対なんてどの分野の世界でもあり得ない。だから、可能な限りゼロにする」


 彼女は試験薬を粛清対象者、又は犯罪者などに飲ませ、何度も試行錯誤した結果できたのがこの薬だった。そのため、試験薬を飲んだ者は意識が飛んでしまったり、記憶をすべて失ってしまったり、廃人になってしまった者もいる。


 その薬で消す記憶といえば勿論彼女達がロアを虐めていた時の記憶である。


「これで、ロア君のことを救える。そして.............」

「私たちをあんなことにした奴をやっと会えるのね」

「あぁ...........この時をどれだけ待ち望んでいたことか」


 この薬をロアが飲むことによってあの期間の記憶が無くなり一番困るのはこの騒動を起こした奴である。であれば、そいつは絶対に尻尾を出すと彼女たちは踏んでいた。


 ただ昔の甘いロアとの思い出に胸を馳せて四人は気味の悪い笑みを浮かべて、笑い声を漏らした。

 


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