第20話 待ってて、あとちょっとだから
エリーと話をしてから数日が経ち、相変わらずの学校生活を送っていた。鬱々として、暗い雰囲気が学校を支配している。こうなってしまう前は、活気溢れるとまではいかないものの華々しい雰囲気であったはずなのに。
教師陣もこのことを理解しているはずだが、あの事を見て見ぬふりをしていたさらに加担していたとなれば、改善をすることも難しい。僕がただの平民であれば退学なり、その他の処置を施すことができたかもしれないが彼女たちの庇護下にいるため容易に手出しをすることができない。
「どうしたの、ロア?何か嫌なことでもあった?」
「大丈夫だよ。何でもない」
「そう?何かあったらすぐに言ってね。私が何でもしてあげるからね」
「お姉ちゃんにも頼ってね、ロア君。私がなぁーんでもしてあげるから」
僕の顔が険しくなっていたのに気づいたのか彼女たちはじぃっと僕の目を見て様子を窺う。ニコニコとした笑みを向けながら。本当になんでもしてしまうのではないかとこちらが錯覚してしまうほどの笑みだ。
飲まれてしまいそうになる。
今になって思えば彼女たちに嫌われる以前からこのような兆候がなくはなかったのだ。それがあの期間を通し今になったことでそれが開花し、苛烈になり、熱烈になってしまっただけ。誰が悪いわけでもない。強いて言うのならばこうしてしまった中心にいる僕が悪い。
「本当に何でもないから。心配しないで。それよりももう少しでお昼休みが終わるから、戻らないと」
「そうだね。じゃあ、一緒に行こうね。立てる?」
「大丈夫だよ」
リリアとミアが僕のことを支えながら教室に戻る。一人で歩くことぐらいなんてことないんだけれど、それでも彼女たちは心配なようだ。贖罪の意味も兼ねているのかもしれない。
僕がクラスへと戻ると弛緩していた空気が一気に緊張へと変わる。あの惨劇を見ていたのだから仕方がないと言えばそうなのだが、悲しい。
自席へと戻り、午後の授業が程なくしてスタートし鬱々とした空気の中、授業が終わっていき帰る時間となる。
帰り支度をしていると、目に隈を作りながら教室へとエリーが入ってきた。
あの話し合いからあまりあっていなかった為、心配していた。何やら研究室で熱心に何かをしていた為邪魔するのもどうかと思いそのままにしていた。
「ロア」
「どうしたの、エリー」
「疲れたから、ぎゅってしてくれない?」
「う、うん分かったよ」
不安そうにこちらへと視線を向けてくるエリーを断れるはずもなく僕は彼女のことを抱きしめた。以前はこうして疲れた彼女のことを抱きしめていたななんて少しだけ思い出に浸りながら。
彼女のことを抱きしめていると、目の前から強烈な視線を複数感じたためそちらへと視線を向けると、アリア、リリア、ミアが怒りを目に溜めながらエリーへと視線を送っていた。
何と言ったらいいのか分からないが、状況的に見てかなり不味いことを悟ったのでエリーを抱きしめていた手を離した。
「.............仕方ない。今日はこれで我慢する」
「ごめんね」
エリーも察してくれたのか、本当に致し方なさそうな感じで名残惜しく僕のもとを離れてこちらへと視線を向けた。
「ロア。待ってて。あとちょっとだから」
「....?」
「私がロアを守ってあげる。助けてあげるね」
「....?ありがとう?」
エリーが何を言っているのか分からず仕舞いだったが、彼女はそう言葉を発して教室から出て行った。
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