第12話
「…ロア、まだやはり家の中にいた方が良いんじゃないか?そんなに急ぐことないだろう。彼女たちが頻繁に回復魔法を掛けてくれたおかげでほとんど治ったとはいえ、まだ完全には治った訳じゃないんだ。前にも言ったことがあるように私はロアが家にいて邪魔だ、迷惑だなんて思っていない」
「…大丈夫だよ、クロエ。心配のしすぎだよ」
クロエはしきりに心配そうにこちらを見つめてそう言ってくる。昨日から何度目だろうか?学校へと行く時間に近くなればなるほど僕にこういってくる回数が増えているような気がする。
心配してくれるのは嬉しいけれど、心配されすぎるのは逆に申し訳なくなってくる。昨日の夜なんて目に涙を浮かべていたからね。王子なんて呼ばれている程格好いいクロエを泣かせるのは後にも先にも僕だけかもしれない。
クロエに必死なお願いをされ、僕だって折れてしまおうかと思ったことは一度や二度じゃ無い。
「ほら、それにエリーに学校の授業について一通り教えてもらっているじゃないか。下手な講師よりよっぽどエリーに教えてもらっていたほうが良いだろうし。そうだな........あと一か月くらいはいかなくてもいいんじゃないか?」
「........それでもダメ」
多分、ここでクロエの要求にこたえてしまったらズルズルとずっとこのままいかなくなってしまうような気がするから。
「........はぁ、ロアは本当に強情だな。仕方がない。でも、何かあったらすぐに言う事。極力ロアと一緒にいることにはするけれどね」
「ありがとう、クロエ」
クロエが溜息を吐き、本当に仕方がなさそうにそう言って了承してくれた。
「それと、分かっていると思うけれど彼女たちが治ったからと言って、他の人が元に戻った限らないし、それに........」
「........うん、分かってる」
彼女たちがおかしくなってしまう前から僕の事を嫌っている、恨んでいる、羨んでいる人は一定数いた。成績優秀でそれもとんでもない美人の彼女たちとこんな平民である僕が親しくさせてもらっているのだ。男共や彼女たちに取り入ろうとしている貴族からの僕の事が妬ましいという視線は数え切れないほどあった。
それが、彼女たちがおかしくなってしまい僕を傷つけるようになってから、男共、そして貴族共は便乗するようにして僕の事を痛めつけた。
まぁ、でも一部だけで他の人たちはおかしくなってしまう前は僕に優しくしてくれてはいたけれど。
「それじゃあ、行くとするか」
「うん」
僕たちは制服に身を包み、屋敷を出て学校へと向かうことにした。
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